トリコロール

「そうしたファッションしてみたら？」
「青の上着と白のブラウス、赤のタイね」
「それやってみたらいいじゃない」
「じゃあやってみるわね」
「ええ、そうしたらいいわ」
「青は奇麗なね」
　明日香は綾に服の色を具体的に話した。
「コバルトブルーで赤もはっきりとした赤よ」
「オランダ国旗のそれみたいな」
「フランスね」
　そこは訂正させた明日香だった。
「フランス国旗の赤よ」
「ついでに言うと青も」
「それで白もね」
　残るこの色もというのだ。
「純白で」
「三色共それで」
「その配色だから」
「よさそうね、じゃあね」
「うん、実際に着てみるわね」
　明日香は綾に答えてだ、まずは。
　持っている白のブラウスを着てだ、母に事情を話すと都合のいいことに母がその色の上着を持っていた。
「ブレザーでいいわね」
「あっ、お母さん持ってるの」
「コバルトブルーでしょ、色は」
「そう、奇麗なね」
「お母さん青い服好きだったから」
　かつてはというのだ。
「持ってるのよ」
「そうだったの」
「そう、それでね」
「じゃあそのブレザーを」
「若い時に買った服だから」
　若い時にというのだ。
「もうお母さん着ないから」
「それじゃあ」
「あげるわ」
　母は娘に笑顔で話した。
「そのブレザーね」
「いいの？」
「だって着ない服を持っていてもクローゼットを埋めるだけだから」
「それでなの」
「あげるわ、大事に着てね」
「それじゃあ」
「それで後はよね」
「タイよ」
　明日香は母に自分から話した。
「赤いタイよ」
「それ付けるのね」
「それは自分で買うわ」
「アスコットタイね」
「ネクタイよりもね」
　タイといっても色々な種類がある、明日香がここで考えているのはこの種類のタイだったのだ。このことを考えていたのだ。
「そちらよ」
「そう、それじゃあね」
「そちらは自分で買うから」
「お小遣いでそうするのね」
「ええ、そうするわ」
　実際にと話してだ、そのうえで。
　明日香はタイは自分で買った、そうして三色の組み合わせを実際に着て綾と一緒に街に出ることにした。待ち合わせの場所でだった。
　綾にそ格好を見せるとだ、綾は明日香にこう言った。
「いいじゃない」
「似合ってる？」
「ええ、よくね」
「ブラウスはこれで」
　その純白のフリルヒラヒラのブラウスを見せての言葉だ。
　次にだ、明日香は綾にコバルトブルーのブレザーを見せて話した。
「お母さんから貰ったブレザーなのよ」
「青の」
「運よくお母さんが持っててね」
「貰ったのね」
「ええ」
　実際にとだ、また綾に答えた。ひらひらとした動きで皺していく。
「本当に運がよかったわ」
「それでなのね」
「後はタイはね」
　奇麗な赤一色のアスコットタイを指差した、そのうでそれの説明もした。