覚悟の秋
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第二章
「今日も暑いね」
「まだね」
「九月、暦では秋だけれど」
「まだ夏ね」
「そうだね、気温は三十度普通に越えてるし」
「暑いわ」
私もこう言う。
「秋っていってもね」
「まだ夏だよ」
「これから涼しくなるのよ」
「彼岸からね」
暑さ寒さも彼岸までという言葉がある、私は子供の頃本当かしらと思っていたけれど大体その通りだった。
「そうなるから」
「じゃあまずは」
「そう、涼しくなるのを待ちましょう」
「そしてだね」
「その時にね」
私はその時、大体十月の中頃に合わせて準備をすることにした。そしてだった。
九月は最初は確かに暑かったけれど十日位からだった。
少しずつ、暑い日も交えて涼しくなっていった。そして。
彼岸になるともう秋だった、そこから山が紅くなってきて銀杏は金色になった。
その金色の銀杏の並木を二人で歩きながら私は彼に言った。
「今度のお休みの時だけれど」
「ああ、土日の」
「あなたもお休みよね」
「二日続けてね」
「そうよね」
前に聞いたことをあらためて確認した。
「私もよ」
「じゃあその日は」
「一泊だけれど」
「旅行だね」
「箱根の旅館にね」
そこにとだ、私は彼に言った。
「行きましょう」
「秋の箱根だね」
「いいわね、それじゃあ」
「行こうね」
「山に温泉もね」
そのどちらもとだ、私はまた言った。
「楽しみましょう、そしてね」
「九月のはじめに言ってた」
「そのことがあるから」
「何かわからないけれど」
「別にさよならとかは言わないから」
彼の右手を自分の左手で持ったうえでこのことは断った。
「安心してね」
「それじゃあね、それにしても」
「今度はどうしたの?」
「いや、この前まで奇麗な黄緑だったのに」
彼は銀杏の葉を見ながら言った、実際にこの前までは黄緑だった。それが今では金色になっていて並木道を彩っている。
「秋の色になったね」
「そうよね」
「山もね」
「紅くなってきていて」
「本当に秋だね」
「そうよね」
「そしてその秋だから」
彼から言った、ここでは。
「今度の日曜ね」
「箱根だね」
「そこでね」
こう彼に言った、二人で銀杏の道を歩きながら。銀杏の葉はまだ落ちてはいなかった。それはまだこれからだった。
そしてその土日、土曜の朝にだ。私達は待ち合わせてから彼の運転する車で箱根に行った、そこで温泉にお料理を楽しんで。
まずは土曜日を二人で過ごした、温泉は噂通りだった。
夜も二人で過ごした、それから。
日曜も温泉に食事を楽しんだ、そうして午前はゆっくりと過ごして。
昼食の後で二人で箱根の中を歩いた、山は緑と紅もあって。
何処までも貫く山々を見ながらだ、彼は私に聞いてきた。
「それで」
「ええ、今からね」
「その時が来たんだね」
「そうよ」
こう彼に返した、私もその箱根の山を見ながら。
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