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IS ーインフィニット・ストラトスー 〜英雄束ねし者〜

作者:龍牙
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15話『授業風景2』

「やった、織斑君と同じ班!」

 一夏の班、

「やったー、秋八さまの班!」

「やったね!」

 秋八の班、

「うー、セシリアか……。さっきボロ負けしてたし……」

「はぁ……ちょっとね」

 セシリアの班、

「凰さん、よろしくね。あとで織斑君達の話し聞かせてよ」

「中学の頃の話とか!」

 鈴の班

「デュノアくん、分からない事があったらなんでも聞いてね! ちなみに私はフリーよ」

「私も!」

 シャルルの班、

「…………」

 ラウラの班、

「やったー、四季君の班になれた!」

「お母さん、生んでくれてありがとう!」

 四季の班。

 以上がそれぞれの班になった生徒達の反応である。

 なお、
 普通に喜んでいる女子に苦笑を浮べている一夏、
 爽やかな笑みを浮かべて手を振っている秋八、
 がっかりと言う反応の他の生徒に涙目のセシリア、
 それなりに楽しい感じになっている鈴の班、
 アピールする他の生徒に笑顔を浮べながらも自分の状況に戸惑っている様子のシャルル、
 むすーとした表情を浮べているラウラとその雰囲気に推されて無言の班員達
 ……そして、自分と同じ班になった事に喜んでいる女子に対して『オレ、恋人居るんだけど』と言う意思を表に出さず苦笑を浮べている四季。
 と言うのが専用機持ち達のリアクションであった。

「ええっとー、いいですかーみなさんっ! これから訓練機を一斑一機取りに来てください! 種類は『打鉄』と『リヴァイブ』です、好きな方を班で決めてください! あっ、数は限りが有るので早い者勝ちですよ!」

 『打鉄』……日本の純国産ISの第二世代量産機、安定した性能で初心者にも扱いやすいガード型の機体である。なお、DEM社製の量産型νガンダムは現在IS学園にはまだ配備されていない……と言うよりも購入の予約だけしか受けていない為にIS学園では使用できない。四季の特例に対する交換条件で日本政府とIS学園には優先的に販売される事になっているが、それでも学園への納入予定の数が揃うのは臨海学校前後になるだろう。

 なお、説明をする際にISスーツを着た真耶の体の一部分に一夏と秋八の視線が自然と向かうが、不機嫌そうな鈴と箒に足を踏まれていた。四季に至ってはなるべく見ないようにしている。……寧ろ、四季は《飛槍突斬!!!》ガハァ!? 《詩乃一筋なだけだ。 by.四季》

 機体の好みで言うと打鉄よりもラファール・リヴァイブの方がスペック的に好みなので、其方で良いかと聞いて了承を貰ってラファールを借りてきた。製造元のデュノア社には色々と警戒する所が多いが、それでも現行の量産機では比較的ヴレイブや量産型νに近いので扱いやすい。

(まあ、複合兵装の『マーキュリー・レヴ』を装備すれば関係ないか)

 Hi-νガンダム・ヴレイブ以前のもう一機の“ヴレイブ”であるνガンダム・ヴレイブ使用時に愛用していたメインウェポン『マーキュリー・レヴ』の事を思い出す。剣術こそ使えないが、様々な武器になるマーキュリー・レヴはやはり四季にとって扱いやすい武装になる。
 どの機体にするか決まったのか他の班も遅れて受け取りに行っている中、真耶が授業を進めている。

「各班長は訓練機の装備を手伝ってあげてくださいっ! 全員にやってもらうので設定でフィッティングとパーソナライズは切ってあります! とりあえず午前中は動かすところまでやってくださいねー!」

「それじゃあ、出席番号順に装着から始めようか。一番目は?」

「はいはいはーい!」

 :元気の良い声が聞こえた瞬間、ショートヘアの生徒が現れた。この授業は二クラス合同の授業だが、彼女は一組のクラスメイトなので顔は良く覚えている。

「一年一組、出席番号一番、『相川 清香』! ハンドボール部です! ハンドボール部です! 趣味はスポーツ観戦とジョギングです! あっ、私はフリーだよ」

 そう言って差し出された右手を握り返すと彼女は両手で四季の手をがっしりと握って、そうアピールされるが、その辺はスルーする。

「分からないトコ、教えてね!」

「ああ、相川さん、ISに何回かは乗ったよね?」

「あ、うん。授業でだけど」

「じゃあ、問題ないな。それじゃあ、ISの装着から始めようか」

「はーい!」

 そうして、ラファール・リヴァイブのコックピットに乗り装着する相川。装着、起動は問題なく進んでいくのだが、

(……一応、恋人いるんだけどな……オレ)

 学園では秘密にしているとは言え、装着の手助けをする四季を見てキャーキャーと騒いでいる女子に対して、内心で苦笑しつつ、彼女の起動の様子を見ている。
 無事起動したラファールを使って彼女は少しぎこちないものの無事歩行を続けるとハンガーに戻る。

「良し、あとはそのままラックにあわせて足を下して。後ろも下もハイパーセンサーがあれば視認出来る」

「前を向いたまま後ろが見えるって何か不思議ね。鏡と違ってそのままなのが、かえって違和感?」

「……そう言う物かな? オレのは全身装甲(フルスキン)だからよく分からないんだよな」

 全身装甲による前方の視界もバイザー、若しくは頭部装甲越しの為、DEM社製のISだとそう言う感覚がない為によく分からない。まあ、四季としては専用機で有る事もあり、普通のISよりも違和感を感じないのだ。

「やっぱり、全身装甲(フルスキン)だとそう言う所も違うのかな? でも、いいなー専用機持ちはIS好きに使えてさ。私らは乗れる時間も機会も限られてるし」

「はは、特にオレは他の専用機持ちより恵まれてるって自覚はあるけどな」

 DEMの社内にある自宅の直ぐ近くに24時間自由に使えるアリーナがある以上、他の専用機持ちとも違い態々学園内のアリーナの使用の申請も必要ないのだから、それも当然だろう。
 それでも、四季としてはISに関わるのはIS学園への在学中の三年間だけと決めているが、飽く迄企業代表としてDEMの看板役として活動するのも悪くないと思っている。何より……

(……最低限、元姉と元兄と決着つける必要も有るからな)

 決着をつける為にも、それまではISと言う武器は必要だろう。それを成した後はパイロットを続ける気は無いが。

「っと、足が固定されたら次は背中をラックに接続だ」

 思考が妙な方向に進んでいた所で意識を現実に戻して、指示を続ける。

「軸があったらそのまま背中を預けて」

「ほーい」

 気の抜ける返事と共に彼女が背中を預けると体のアーマーがロックされる。

「腕のアーマーはアームが挟んだら自動でロックされるから、そうなったらパージしても大丈夫だ」

「うん」

 腕のアーマーがロックされると四季は悪戯を思いついた子供のような笑みを浮かべる。ちょっと注意点を説明する序でに一箇所だけ態と間違えて貰おうと思って、敢えて指示を出さずに居る。それに彼女が気付けば良し、気付かなくても良い。どちらにしても説明する切欠にはなる。
 まあ、この場に詩乃が居れば彼の笑みの正体に気付いて止めていただろうが、残念ながら彼女が居るのは一般の学園であってIS学園ではない。だから、彼を止めるものは居なかったりする。

「よっと」

 そんな事を考えていると知らずに彼女はラファールから飛び降りる。

「起動ならびに歩行、帰投練習終わり♪」

 笑顔でそう告げる彼女が次の生徒と変わるが、

「いや、一箇所だけ注意点がある」

「あっ、コックピットに届かない」

「あっ!」

 『ほらー』と言っている彼女の前には直立したまま立つラファールの姿。当然ながら乗りにくい。

「それが注意点だ。ハンガーに設置した後は乗り込み易いようにしゃがまないとこうなるんだ。装着解除した後は動かなくなるから、次の人からは気をつけてくれ」

 そう説明した後、四季はヴレイブを装着する。

「と言うわけで、説明の都合上最後に自由に動いてもらった以上、責任はオレにあるから次の事はオレが運ぶんで安心してくれて良い」

 そう言うと他の女子二人が『ラッキー』と言っている中、一番最初だった清香がちょっと残念そうな顔を伝手居る中、最後の一人に慰められている。まあ、その辺は別段意識していない四季である。何処まで行っても詩乃さん一筋なのが四季が四季たる由縁だ。

 箒が所属している秋八の班では四季の版図に多様な事になっていて、真耶先生の『仕方ないので織斑君が乗せてあげて下さい』と言う指示に箒が反論しているが、それは四季の班には関わりが無いので省略する。

 そもそも、Hi-νガンダム・ヴレイブは全身装甲のIS。お姫様抱っこと言う体制でもロボットに抱っこされている様な物であるのだが、されている生徒も特に気にしていない様子だ。……その姿が妙に様になっていたり、手馴れているように見えるのは普段からしているからだろうか……詩乃さん相手に。

 まあ、二人目の生徒も問題なく進んでいくが……

「ほっ」

「……あー、しゃがむ様に心がけてくれ、次は」

「いや、まあ、他の女子の視線が強制力を持っていて……」

 彼女の言葉に大体状況を察してしまう四季だった。まあ、たいした手間でもないのでさっさと運ぶ事にする。

「えへへへ~ありがとね、しーちゃん」

 特徴的な仇名で呼んでくるクラスメイト……『布仏 本音』にどう致しましてと返しておく。小動物チックな癒し系な少女だが……当初は更識と関わりのある家の出身なので警戒していたが、最近では妙に警戒が解けているから不思議だ。
 これが意図的な事ならば恐ろしいが、意図が一切無く行っているとしたらそれはそれで恐ろしい。

 そんな彼女は他の生徒と比べて、簡単な動作だけだがかなり上手かった。解けてはいるが一応は警戒対象(更識家)の関係者なので、警戒し無いと言う選択肢は出来ない。

(……それにしても)

 ふと、他の班の様子を見てみるとラウラの班が遅れていた。それに続いて一夏、秋八と言った順番に遅れている。……まあ、本来ならばしゃがむ所を立ったまま装着解除しているのだから、遅れるのも無理は無いだろう。だが、ラウラの班が遅れているのは彼女の纏っている雰囲気が原因である事は間違いない。

 ……まあ、遅れはしたものの一応は授業時間内に全員が終った。流石に放課後居残りは誰もが嫌なのだろう。

「午後は今日使った訓練機の整備を行なうので、各人格納庫で班別に集合すること。専用機持ちは訓練機と自機の両方を見る様に。では解散!」

 授業の最後に千冬のその言葉で占められる。そんな中、秋八と一夏はすっかり息を切らしているが……その利用は一つ、

「一兄……流石にあの程度で息を切らすなんて体力不足じゃないか?」

「し、四季…………あ、あの程度って、あれが……かよ?」

「……いや、あれをあの程度って、君はどれだけ体力が有るんだい……」

 四季の言葉に息も絶え絶えになりながら息一つ乱していない四季の姿に本気でそう聞く一夏と秋八の二人だった。


「あー……あんなに重いとは……」

「し……知ってはいたけど……知識と現実は別物だね……」

 四季をはじめ一夏と秋八の班では『運ぶのは男の役目』と当然の様に思って彼ら一人に運ばせていたりする。その結果、息も絶え絶えになっているのが一夏と秋八で、一人だけ息一つ切らしていないのが四季である。
 ダークマスターズとの戦いこそ経験していないとは言え、小学生の時分でのデジタルワールドを冒険をはじめ、世界を飛び回りエレメンタルの神器を探し廻ったエルガとの戦い、更にはガンダム達による訓練……基礎体力作りは重点的に行なっているのだから、体力に関しても二人よりもある。

「でも、一兄。女の子に運ばせるのも可笑しくないか?」

「いや、確かにオレが運ばないで女子に運ばせるのも普通に可笑しいから良いけど」

 そう言った一夏の視線の先にはシャルルの姿があった。『デュノアくんそんなことさせられない!』『私達で運ぶから!!!』とシャルルの班では女子がみんなで運んでいた。

(え? なんかシャルルだけ扱いが結構違う? ……まあいいか)

 まあ、貴公子……王子様然としたシャルルに力仕事をさせると言うのも似合わない気がするが。

「まあ、訓練機の運搬も体力づくりにはなるからな、一兄ももう少し基礎体力を付け直した方がいいと思うよ」

 流石にガンダム達による訓練メニュー……七星天剣流やらガンダム族の剣技の会得の為の体力づくりは遣り過ぎの域にあるだろ……。

 警戒対象の為になるべく一緒に行動する事を避けているシャルルを一夏と秋八が一緒に着替えに行こうと誘っているが、当のシャルルは機体の微調整をしたいからと言って断っている。

(……隠す気無さそうだな……ホント)

「シャルルの奴、妙にシャイなんだよな~。お坊ちゃん育ちで慣れてないのかな……? 男同士なんだし、もっと親睦深めないとな。なあ、四季、秋八?」

「あ、ああ……そうだね、一夏兄さん」

「ああ、うん……その内にね、一兄」

 一夏の言葉にそう返す秋八と四季。そんな形で授業は終ったのだった。








 その日の授業も無事終わり……ストレス(秋八と千冬)から開放された四季は、何時もの様にTORIによってコントロールされているバイクに乗り込む。無人で疾走するバイクにも慣れた様子のIS学園の生徒達を他所にヘルメットを手に取った時、

「おい」

「ん?」

 後ろから何か聞き覚えの有る声がかけられる。……誰かと思って其方を振り向くと其処には、予想通り転校生のラウラの姿が有った。
 高圧的な視線を四季へと向けているが、どうもラウラの方が背が低い分四季が見下ろしている状況の為、高圧的に見上げていると言う状況に陥っている。

「貴様も専用機持ちだそうだな? ならば話が早い、私と戦え」

「いいぞ」

「貴様には無くても私に……って良いのか?」

「いや、断る理由は無いし」

 四季の返答が予想外だったのだろう、一切の迷いの無い肯定に逆にラウラの方が動揺してしまっていた。
 そもそも、理由と言うのなら四季にはラウラと戦う理由が幾つもある。一つは束からの依頼。ドイツの新型に搭載されているらしいVTシステムの完全なる破壊。一つはドイツの第三世代機のデータ収集。何より……どうも四季は根本的に戦闘狂(バトルマニア)の気質が有るようだ。

 なるべく完全破壊……少なくとも、VTシステムに関係する部分だけは徹底的に破壊する必要が有る分、向こうから戦いを挑んでくれなければやり辛い上、なるべく学園公認の試合でそれをするのも避けたいと思っていた。どうやって戦闘に持ち込むかと考えていたが、向こうから挑んできてくれるというのなら大歓迎だ。

「そ、そうか……それならアリー「ほら」……なんだこれは?」

 突然渡された特定の数字の羅列が書かれたメモ用紙に疑問を浮べるが、

「いや、オレの連絡先。外出許可を学園側から貰った連絡をくれ。DEMの方でアリーナを確保しておく」

「……今からではないのか?」

「いや、学園で遣り合ったら邪魔が入るだろう」

 主に生徒とか教師とか。流石に専用機二機による本気のバトルを他の生徒も大勢居るアリーナのど真ん中で始めるわけには行かない。何より、結構派手に破壊する必要が有りそうなので、教師の邪魔も入らない方が良い。

「…………ところで……なんでバイクに乗っているんだ? いや、それ以前にそのバイク無人で走ってなかったか?」

「何って? 帰るだけだけど、オレは学園側から特例を貰っていてな。あと、バイクは……」

「TORI!」

「AI制御されているんだ」

 バイクから飛び降りて羽を挙げて挨拶するTORIの姿に暫く唖然とするラウラだったが、再起動出来たのは四季が走り去ってから数分後だった。

「…………。ふざけるなー! あの屈辱は必ず晴らしてやるからなー!」

 既に小さくなっている四季の背中に向かってそう叫ぶラウラの姿を、周囲の生徒達は生暖かい視線で見て居たそうな。急いで外出の手続きを行う事にしたラウラだったそうな。

 秋八と一夏……特に一夏に対して並々ならぬ敵意を持つラウラとしては、今朝の一件も有って先ずは一年最強と噂されている四季を叩き潰そうと考えていたわけだが、出鼻をくじかれる形となった。

 まあ、四季は四季で、

「頼む、四季……オレにお前の技を教えてくれ!」

 一夏に呼び止められてそう頭を下げて頼まれていた。






(認めない! 認めない! 認めるものか!!!)

 トーナメントが近い為に殆ど人が居ない剣道場の一部……秋八もISの訓練で一緒に居ない為に、残念ながら一人になっていた箒は一心不乱に竹刀を振っていた。

(あんな奴が、あんな奴が!)

 記憶の中の四季はいつも一夏の影に隠れていた軟弱な奴だった。だが……四季が五峰の家に引き取られる前に尊敬していた父が、深酒をしながら悔しげに泣いていたのを見てしまった。
 その時の言葉は彼女にとって受け入れる事のできない言葉だった。『四季に十年に満たない年月で、今までの自分が得た物を全て奪われる』と言う確信が篭った言葉と共に悔しげに無く父の姿だった。
 そして、『その上で自分の得た物を踏み台にして自分では届かない高みに行く』と言う言葉。それを裏付けるように『七星天剣流』と言う流儀を学び、圧倒的な力を見せる四季の姿。

(認めるものか! 認めて溜まるか!)

 認めてしまえば己の中の大事なものが崩れてしまう……そうとでも言う様に一心不乱に剣を振る箒の姿は何処か鬼気迫るものがある。

(認めてたまるか!!! あんな奴に負けた事も! あいつに負けた事だって!!!)

 何度も床に叩き付けられ見下ろされる己の姿と、箒が準優勝した大会で優勝した年下の少女の姿。友達にも家族にも、好きな相手にも祝福して貰っていた彼女の姿が憎悪と共に思い出される。

 箒には友達は居なかった。出来ても政府の証人保護プログラムのせいで直ぐに転校を余儀なくされる。家族とも証人保護プログラムで引き離され、好きな相手とも離れ離れになった。また秋八と再会するために続けていた剣道で、優勝出来ずに終った。自分と違い、自分の欲しかった物を全部持っている奴に……。

(認めてたまるか……)

 己のやってきた事全てが無駄だと否定するように篠ノ之流を捨てて新しい流派を学んだ四季に手も足も出なかった。

(私は……)

 秋八が倒れるのに、一夏や四季達が活躍する中、何も出来ない……無力な自分が憎かった。

(……私にも専用機があれば……)

 それさえあれば四季にも負けないと言う意思と共に箒は心の中で呟くのだった。何時かの四季と重なる姿だが、そんな四季を心配してくれる相手や、止めてくれる相手も箒には居ない……。秋八に至っても、今は箒ではなくその感心はシャルルにあった。






「くそっ!」

 人気の無い所で秋八は悪態を吐いていた。

(なんで《シャルロット》かぼくの部屋じゃないんだ……。いや、箒と同じ部屋なのは別に良い……。くそっ、大事な《シャルロット》とのフラグが起せないじゃないか! 四季の奴の邪魔が入らないから、大丈夫かと思ったのに!)

 一夏とシャルルが同じ部屋になった事に対する悪態を吐いていたのだ。まあ、人気が無いとは言え……実はDEMから放たれている隠密ガンダムに見られているが……それはそれ、心の中までは読めないので重要な事は聞かれていない。
 まあ、最初の悪態に驚いて近くに居た隠密ガンダムが様子を見に来ただけだが……

(下地が出来ていた箒だけしかまだ手に入っていない……。しかも、四季のせいでクラスのぼくを見る目まで変わってくる! だったら……今度こそ、邪魔が入らない所でぼくが力を見せてやる。ラウラ・ボーディッヒを……偽者の織斑千冬をぼくの手で倒せば、ぼくの力を学園中に見せ付けてやることが出来るんだ!!!)

 そう言うと秋八は邪悪な笑みを浮かべる。

「……次の“タッグ”トーナメント……パートナーを選ばないとね。彼女は箒と組むはずだったし……」

 秋八の知る本来の歴史では箒とラウラが組む事になる。ならば、自分が箒と組んでいれば相手の戦力を削れるのでは、と思う。その辺の生徒よりは力はあるはずと言う考えからそう思う。

(接点が少ないぼくとじゃ組んでくれないかもしれない……。念の為にこの役立たずを囮に、シャルロットをおびき寄せるか?)

 そう考える秋八の視線は黒式へと向けられていた。ISのコアには意思が有ると言うが、こんな事を思われている相手に対して好き好んで力を貸すのだろうか、本当に疑問である。だが、そんな彼にとって黒式は本来望んだ物ではない。力を発揮できようが出来まいが、最終的に彼の望んだ機体が手に入れば用済みなのだ。

(チッ! こんな事ならぼくが一人部屋を選べばよかったかな……? いや、間違っていない筈だ。ぼくが箒と組めば、ラウラは他の生徒と組むしかないはず……四季と組むはずは無い、アイツに対して良い印象は持っていないはずだし、四季の奴がラウラと組む理由だって無いはずだ)

 自分に言い聞かせるように心の中で呟く秋八。確かに今の四季にはラウラと組む理由は無い。序でに投げ飛ばされた事もあって、ラウラに四季への良い印象も無いだろう。だが、二人が組む可能性を一つだけ忘れていたりする。
 
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