世界をめぐる、銀白の翼
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第一章 WORLD LINK ~Grand Prologue~
555 ~Δ(三つ)のベルト、ライダーのΧ(邂)逅~
次の日の事だ。
蒔風は巧と共にある養護施設に来ていた。
その名は「創才児童園」といい、孤児たちの施設だ。
そこで働いている三原修二、という男に会いに来た訳なのである。
「乾さんが狙われている?」
園の外、子どもたちが遊んでいる広場を眺めながら、話を聞いた三原は驚愕した。
三人は幼稚園ほどの大きさの建物の一階部分、開けられた掃き出し窓のところに座っている。
三原は驚愕したが、よく考えてみればそれもそのはずである。
大元のスマートブレインを壊滅させたとはいえ、その生き方を実践しているオルフェノクは多く存在する。
そういった者達から見れば乾巧は人間側についた裏切り者として、まさに敵だ。
しかも所有するベルト、ファイズギアはかなりの力を持つ。
彼を倒して名を上げようとする者は多くいるだろう。
「わかりました、協力します。で、敵は何者ですか?」
「それはだな」
「いや、それよりも三原、海堂の連絡先知ってるか?」
蒔風が説明しようとする前に、巧が三原に質問した。
「あの人の連絡先ですか?えっと・・・・ちょっと待ってください」
そう言って三原が携帯を取り出して海堂と言う男の連絡先を探す。
「なあ、彼はいったい何者なん?」
蒔風のそんな質問に、巧が答える。
三原修二
三本のライダーズギアのうち、「デルタギア」の所有者だ。
アークオルフェノクとの最終決戦にも参加し、共にオルフェノクと戦った人間だ。
ちなみにデルタギアは人間でも変身可能なものだが、不適合な者が使用すると極めて凶暴かつ好戦的な性格に変貌してしまう。
そういうわけで適合者である三原はオルフェノクではなく人間だ。
最初こそ戦いを恐れ、拒んできたが、未来を切り開くために決意し、戦うことを決めたのだ。
だからこそ、彼はデルタギアに呑まれなかったのかもしれない。
「なるほど・・・・・」
そこで三原が携帯をしまい、巧に向き直る。
「巧さん、海堂さんとの連絡がとれないんですよ」
「あいつ・・・・どこで何やってんだ?」
「さあ・・・・・」
「オレがどうしたって?」
「「!!」」
その声に反応し、園の入り口のフェンスの方を見ると、そこにはバイクに跨った青年がいた。
「海堂!!」
「よ。ここのガキどもに会いに来たんだけどよ、なによなによ?こんなところにこんなメンツが集まってよぉ~~」
巧や三原をチラチラと指差しながら海堂がおどけた態度で言ってきた。
海堂直也
その正体はスネークオルフェノクである青年だ。
彼もまた、人間のために戦ったオルフェノクである。
「ちょうどいい。海堂。お前まだカイザのベルトは持ってるか?」
「あるけど、どしたん?」
カイザのベルト
これもまた、ライダーに変身するためのベルトである。
このベルトの持ち主はいたのだが、ひとりは戦いの過程でベルトの力に耐えきれなく、最終決戦前に死亡。
二人目はその直後にあった最終決戦にて、ファイズがとどめをさすようにアークオルフェノクの動きをしがみついて止めたためにその反撃を食らって死亡してしまったのだ。
その二人目が海堂の友だったため、今ではこのベルトは海堂が持っている。
と、その間にも蒔風が二人に説明を終えた。
三原は納得し、戦うことを承諾した。
しかし
「オレはパスするよ」
そう言って海堂は出て行こうとしてしまう。
「ちょ、海堂さん!」
三原が海堂を呼びとめる。
それに振り返って海堂が言った。
「オレはあの時王様のオルフェノクとやり合ったんだ。もうこの体だって長くはねえ。なのになんでオレがそんな寿命を削るようなことしなきゃならないんだよ」
「う・・・・・」
そう言われては三原も何も言えない。
彼もオルフェノクである以上、このままでは消滅して死んでしまうのだ。
そんな彼に戦えとは強制できない。
「残された時間を思いっきり楽しむって俺様は決めたのよ。でわでわ、おたっ、しゃで」
そう言ってペコリとふざけた感じで頭を軽く下げて、海堂は出て行ってしまう。
「しかたないよ。彼の人生さ。強制はできないしね」
「蒔風さん・・・・」
「で、だ・・・・・・・これからどうしようか?」
「決めてなかったのかよ」
「だぁ~~~って~~~~~~。「奴」が来るまで何するよ」
「先にその「奴」を叩く・・・・とか」
「「奴」の居場所は見当もつかん。まあいるとしたら・・・・・」
「したら?」
そこで蒔風がにやりと笑いながら、こう答えた。
「アークオルフェノク・・・・・・だな」
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とある荒廃した建物の中にて
どうやらこの建物は何処かの研究機関のものだったらしい。
その機関がつぶれ、打ち捨てられたこの建物に、住み着いた者がいた。
重傷を負い意識不明状態のアークオルフェノクと、最終決戦の場からここまで彼を運び込んで来た女性オルフェノク・ロブスターオルフェノクだ。
「王の目覚めはすぐそこ・・・・・待っていろ、裏切り者のオルフェノクめ!王が眼覚めた暁には、必ず・・・・・」
そういいながら、培養液に漬けられた王が入っている水槽を愛おしそうに撫でるロブスターオルフェノク。
ドゴオア!!!!
その時、建物が揺れ、計器がぶつかってガシャガシャとやかましい音を立てた。
何事かと思ったその矢先に、その部屋の扉が勢いよく開かれ、一体の彼女の部下のオルフェノクが跳び込んできた。
「た、大変です・・・・・何者かがこの施設、にッ!?」
ビクン!!と身体か震え、全身から青い炎を吹き出してそのオルフェノクが灰となって消える。
灰となって消えた先には一人の男が立っていた。
なぜだか顔の部分だけ常に影がかかっていて、その素顔がはっきりしない男、「奴」である。
「あなた・・・・何者?」
「・・・・・・」
「いいから答えなさい!!!この場で死にたい・・・・の・・・・・・」
ロブスターオルフェノクが「奴」に詰め寄り、近づいたところでその言葉が途切れる。
ガクガクと震える頭を下に向けると、自分の腹を「奴」の抜き手が貫いているのを目撃した。
「こ・・・・・んな・・・・・・」
ボッ!!ザラザラザラ・・・・・・・・
そしてロブスターオルフェノクも、先ほどの部下と同じように灰になって消滅してしまった。
「奴」がアークオルフェノクのいる水槽に近づく。
「これがかの王か。目覚めると厄介だから、その前に・・・・・・」
だが、「奴」がその水槽に手を伸ばした瞬間、アークオルフェノクが目覚め、その首元に両腕を突き出してきた。
「ぬっ、がッ!!!」
ドゴン!!!!
そのまま壁を突き抜け、二、三部屋先でアークオルフェノクが「奴」を壁に押し込んでいる。
「ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」
「ぬへぇ・・・・・こいつ湿ってる・・・・きもっち悪いんだよ!!!!」
ドガッ!!!!
「奴」がアークオルフェノクの腹部を蹴り飛ばして後退させる。
そして瞬時にその背後に回り込み、首根っこを掴んで壁に向かって投げ放った。
「お返しだこの野郎!!!」
ガゴゴゴン!!!!
その壁を破壊して外まで吹っ飛んだアークオルフェノクを追って、「奴」も外に降りる。
この建物はかなり郊外にあるようで、とてもじゃないが一般人が目撃することはない。
「これなら安心して・・・ってうを!?」
「奴」が驚愕の声を上げる。
なぜならば、アークオルフェノクがその建物を守っていたオルフェノク達だった灰をかき集め、空中にて一つの巨大な形を作っていたからだ。
それは徐々に一つの獣の形となり、サイの特質を備えたオルフェノク・エラスモテリウムオルフェノク激情態となって「奴」に襲いかかった。
大きさにして六メートル。
異常な巨体を誇り、理性の無い化け物が今解き放たれた。
ゴルルルルルルルルルルルルルルアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!
凄まじい咆哮を轟かせてエラスモテリウムオルフェノクが「奴」に突っ込む。
「ケルベロス!!!」
ガルアアアアアアアア!!!ッドッゴン!!!!
ケルベロスとエラスモテリウムオルフェノクが衝突する。
しかしケルベロスの大きさは約三メートル。
二倍の大きさにそれ以上の重量を持つエラスモテリウムオルフェノクを止めることはできない。
だがそれでも一瞬は押しとどめる。
そしてズルズルと押しやられていくが、その少しの時間で十分だった。
「フッ、セイッ!!!」
「奴」が魔導八天でエラスモテリウムオルフェノクの巨大な角を根本から切り落とす。
そしてその角を掴み、その巨体の背中のど真ん中に突き刺した。
ゴギュアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!
エラスモテリウムオルフェノクが壮絶な雄たけびを上げてのたうちまわる。
「奴」がその腹部に入り込んで、地面を踏み抜かんとする勢いで踏みこみ、その巨体を全身の力の限り蹴り上げた!!!
巨大な化け物が宙に浮き、背中を下に向ける。
そしてその背中に突き刺さった角めがけ、ケルベロスが突っ込んだ。
さらに押し込まれた角は反対側の腹から突き出し、エラスモテリウムオルフェノクは灰と消える。
その間に「奴」はアークオルフェノクに向かう。
「奴」が相手の突き出してきた拳を下に払い落し、左手に持った剣で肩口から一気に切り込んだ。
ズシャアッ!!!!
地面を転がるアークオルフェノクの切り口から薄く青い炎が上がっている。
もはや終わりだ。このまま放っておけばこいつは消えるだろう。
「でもそれではいけない。オレの力になってもらうぞ」
「奴」が倒れる王の頭に手を当てる。
「ゴ・・・・ゴオオアアア・・・・・・・」
「あん?人間相手に手を出したお前が悪いんだよ。人間をなめるなよ、くそ野郎」
バシィ!!!!
そしてアークオルフェノクの姿が「奴」に消える。
ゴキゴキと首を鳴らし、建物の方へと手を伸ばし、波動砲を撃って跡形もなく吹き飛ばした。
「よしよし。これでいいな」
そういって満足し、「奴」は携帯を取り出す。
掛ける先はあるクリーニング店だ。
こうして、各々の戦いの準備は整った。
後は戦うだけとなる。
「もしもし?世界をまっさらにしたいんだけど」
今回の戦いは、まるで決闘のように始まった。
to be continued
後書き
そういえば・・・・最終決戦でオートバジンって壊れてましたね。
アリス
「どうするんですか。ふつーにバジンさん出てたじゃないですか」
あれだあれ。
壊れてないならそれでよし。
壊れていたなら・・・・何とか直したんだよ!!スマートブレイン襲ったんだな、うん!!
アリス
ア「次回、戦いますよーーー!!!」
ではまた次回
戦うことが罪なら、オレが背負ってやる!!!!
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