IS ーインフィニット・ストラトスー 〜英雄束ねし者〜
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13話『思惑』
四季がラウラを投げ飛ばした一件でクラスメイトからのイメージが思いっきり変わったのは別に良いとして……。
「織斑兄弟、五峰、お前達がデュノアの面倒を見てやれ。それと五峰は“特例”が有るから、主に授業等で面倒を見てやれ」
千冬からのそんなお達しがあった。四季としては警戒対象のシャルルとは距離を置きたいところだが、逆に言えば探りを入れるには丁度いいだろう。……目立った行動は出来ないだろうが、学園内には忍者ガンダム達が潜んでいるのだし、向こうが動いた場合の対処も可能だろう。
「君が五峰君? 初めまして、ぼくは……」
「いや、挨拶はいいから、急いだ方がいい。一兄も、出遅れると拙い」
「ああ、兎に角移動の方が先だ。女子が着替え始めるから」
人懐っこそうな笑顔を浮べて話しかけてくるシャルルを一瞥し、最優先事項を一夏と共に確認試合行動に移る。四季が先行しつつ相手の動きを確認し、一夏がシャルルの手を持ってその場を離脱した。
秋八は既に出遅れているのだが、そもそも四季には最初から秋八を助ける意思は無かった。
「ふぇ? ふぇえええ?」
一夏に手を握られて顔を真っ赤にしてそんな声を上げているシャルルに疑問を強める四季だが、挨拶に託けて探りを入れてみることにする。
「っと、自己紹介がまだだったな。オレは五峰四季、君と同じく一企業の社長の子息だ……養子だけどな」
「う、うん、そうだね、よろしくね」
「ああ」
顔を真っ赤にしているシャルルの表情を受け取ると……
(……女にしか見えないよな?)
手を握られる程度で顔を真っ赤にしている時点で、かなり初心な女の子としか思えない……。
(……ストレートに聞いてみるか)
報告にあったデュノア社の関係者のパーソナルデータ……『シャルロット・デュノア』の物を思い出しながら言葉を続ける。シャルルとシャルロットが同一人物だとしたら、ボロを出してくれるかもしれない。
「……ところで……『シャルロット・デュノア』は元気か?」
「え?」
シャルルの表情が一瞬だけ凍りつく。上手く行ったと心の中で笑みを浮かべながら次にぶつけるべき言葉を選ぶ。
「誰だよ、シャルロットって?」
「ん? デュノア社の社長の娘……オレ達の同じ歳のな」
そこまで言った後、二人から視線を外し愉しげに笑みを浮かべる。
「愛人のって注釈が付くけどな」
「そ、そうなんだ? ごめん、ぼくは会った事が無いから……」
「そうか……だったら長期休暇の時は気に掛けてやってくれ、デュノア社の社長夫婦が禄でもない連中で、酷い扱いをされているらしい」
「っ!?」
明らかに慌てている様子のシャルロットに尚も追い討ちをかける。『お前の事は知っている』と言外に語ってみせると思わず息を呑むのが分かる。
そこで確信した。……間違いなくシャルルはシャルロットだろう。警戒のレベルを上げつつそこから相手の目的を推測する。
(オレ達のデータか……IS込みでの)
そもそも、『シャルロット』についてのデータを信頼できるキャプテンガンダム達遊撃部隊からの情報で知っている身の四季は最初から疑問を抱いていた。
『四人目の男性操縦者がフランスで見つかった』等と言うニュース等が一切無い事と転校の時期だ。実は四季については束直々に世界各国の電波ジャックによっての発表になったので、ニュースとしてのインパクトが強すぎたが、表向きの最初の男性操縦者である一夏と秋八が発見されてから既に調査は始まっている。それなのに、この時期での転校と言う不自然な遅さ。
寧ろ、デュノア社からの男装したスパイと取るべきだろう。特に色々とフランス国内では肩身が狭くなっているデュノア社だ。……DEMが原因で。
理由の一つは第三世代型量産期の量産型νの存在だ。それによって、未だにワンオフ機ですら第三世代機を開発できていないデュノア社としては政府から連日催促の嵐を受けている。……特にデュノア社が原因でDEMがフランスへの量産型νの販売を行なわない、そう決めたのだから。
裏ルートや他国の企業を窓口にして購入する手が有るが、それには相応の金額が必要となる。
『ああ! 転校生の男子と織斑くん、五峰君発見!』
『織斑君ってどっちの?』
『一夏くんの方』
「チッ! 遅かったか!?」
先ほどまで呑気にシャルルへの探りを入れていた事に後悔するが、流石にHRが終っている以上、各学年のクラスから情報収集のための尖兵が駆け出して来ている。多少遠回りにはなるが、ルートの変更をイメージ……。
「いたっ! こっちよ!」
「転校生、どこ!?」
「金髪の!」
「こっちよ、こっち!」
後ろから聞こえてくる声に其方を振り向くと後ろからも生徒達が集まってくる。もしもこの場で捕縛されれば最後、質問攻めの挙げ句に授業には遅刻……そして、最後には千冬からの特別補修カリキュラムの三連コンボを受ける破目になる。そもそも、今日は詩乃と約束があるのだ、ストレスの元凶の一つに付き合っている暇は無い。
「え……な、何? 何でみんな騒いでるの?」
「そりゃ、男子がオレ達だけだから」
「?」
何でこんな状況になっているのかが分からないと言った様子のシャルル。
(いや、もう少し下調べとか、演技とかしてみようよ……)
「いや普通に珍しいだろ。ISを操縦できる男って、今のところオレ達しかいないんだろ?」
「あっ! ああ、うんっ、そうだね」
そんなシャルルから感じられる不信感に気付かないのか……いや、本当に気付いていないのだろう、一夏がシャルルのフォローをしていた。
(……いや、自己紹介の時はそれほど不自然じゃなかったけど……あいつのシャルルを見る目は……)
情報と状況から推測を組み立ててはいるが、四季とは違い秋八はシャルルが女かもしれないと言う推理を四季よりも早く組み立てているように見えた。…………いや、何か確信を持っている様にも見えた。
改めて秋八への不信感を強めているとジリジリと生徒達が三人に近付いてくる。仕方ない、そう思いつつ一夏へと視線を向ける。
「一兄、非常手段だ」
「それしか無いか」
四季が窓へと走ると素早く窓を開ける。同時にシャルルの手を引いて一夏が窓枠に足をかけると、素早くシャルルをお姫様抱っこする。
その間に片方の窓を開けて同じ様に窓枠に足をかけている。
「ふぇ? ふぇぇぇぇぇええええぇ!? ちょっと、何!? 何をする気なの!?」
状況が一切見えていないシャルルが突然の四季と一夏の行動に戸惑っていると、そんなシャルルに構わず二人は。
「「とお」」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ!!!」
躊躇無く窓から飛び降りる。
「ああぁ!」
「また逃げられた」
「だから言ったのよ、四季君が居る時は窓際を抑えないと」
何故か人が三人飛び降りたのに誰も慌てていない事にシャルルが疑問に思う間も無く、窓から飛び降りると言う状況を味わう事になったシャルルが涙目になる中、
「来い、アメイジング・レヴ、D、A!」
二機のアメイジング・レヴを展開し、自立行動モードの鳥型形態になった二機が四季と一夏と一夏に抱きかかえられたシャルルを回収して地面に降りた。真っ赤になったり真っ青になったりと顔色を変えていたシャルルは涙目でブルブルと震えながら一夏に抱きついていた。
「君達、いつもこんな事してるの!?」
「まあな」
「いつもの事……と言うよりも何時もよりも増えてるな」
「あの時から四季と一緒の時はいつも助けられてるよな」
「いつも!?」
つまり、窓から飛び降りたりと言う行動をいつもしていると言う事だが……四季の行動派主にデジタルワールドやエルガとの戦いと言う二つの冒険で培った経験ゆえで有るが、それに付き合って行動しているうちに一夏の感覚も大分麻痺してきたようだ。
なお、
『あの行動力と判断力、素敵ですわ』
『あれ、一夏? 躊躇無く飛び降りるのって人としてどうなのよ』
と、某イギリスの代表候補生が四季の行動にそう色ボケしていたのは何時もの事だったりするのは良いとして、まだ辛うじて常識のある某中国代表候補生は幼馴染の行動に頭を悩ませていた。
そんな会話を交わしながら窓から飛び降りたことで、大幅な距離の短縮に成功した事で予定よりも早く、男子が着替える事になっているアリーナ更衣室へと走った結果、余裕で間に合った。
なお、秋八と言えば三人に比べれば人数は少ないものの、他のクラスの女子に捕まっていたりする。……代表決定戦に対抗戦と評価が下がる事は多々有ったが、それでもそれなりに他のクラスからは人気がある秋八なのだった。
「ああ、休み時間になるとさっきの三倍に追いかけられるのは覚悟した方が良いぞ」
「三倍っ!?」
「しかも、休み時間までは四季も助けてくれないしな」
「助けてくれないのっ!?」
アリーナの更衣室に辿り着いた時、一夏の言葉に涙目で驚愕するシャルル。
「そう言えば四季、知ってるか?」
「……何を?」
「いや昨日の夕食の時に鈴から聞いたんだけどさ……なんか、今度の今度のトーナメントで優勝したら、オレか秋八かお前と付き合えるって噂だぜ」
「なっ!?」
一夏の言葉に思いっきり驚愕する四季。そもそも、夜はIS学園に居ない四季なのだから、その時に噂になっている事に付いては知りようも無い。
何故そんな噂が? とも思うが大体は見当が付く……一夏や秋八辺りが原因だろうと予想していた。
(多分、誰かが一兄かあいつに『優勝したら付き合ってください』と言ったんだろうな……。それにしたって、噂が廻る時期が気になるな……)
多分前回のクラス対抗戦の後からだろうが、それにしてもトーナメントの時期を考えると噂の出回る時期が早すぎる。……何者かの意図を感じずには居られない。
『うふふ』
そんな風に笑うIS学園の何処かに青い髪の扇子を持った女性が居たが、四季は知る由もない。
(兎も角、今度のトーナメントこそは軽く流す心算だったけど……事情が変わった)
何故かやる気になっているセシリアが眼に浮かぶ。……鈴が優勝する可能性にも賭けたいが、流石にそんな確実性に欠ける他力本願の未来には賭けられない。シャルやラウラ……他のクラスの代表候補生は未知数……。序でに一年にいると言う更識簪は専用機の開発状況は知っている。
自分には詩乃が居るのだから、彼女の断りなく他の誰かと付き合う意思は無い。セシリアには悪いが、ここは安全のために自分が優勝すべきだろう。
(……トライオンシステムだけでも開発を続行して貰うか……いざとなれば……)
最悪トライオンシステムを一夏にでも貸し与えるべきかとも思ったが、使わないだろうし趣味には合わないだろう。
地上戦用のライオン型サポートメカ『リクトライオン』、空中戦用のイヌワシ型サポートメカ『ソラトライオン』、海戦用のマンタ型サポートメカ『ウミトライオン』からなるDEM製の通常IS用のサポートメカがトライオンシステムである。合体形態である『トライオン3』は闘士ダブルゼータ、ガンパンツァーΖΖ、武者駄舞留精太、関羽ガンダムの四人をモデルにして完成させたシステムである。
DEMのトップシークレットに当たるデータの一つであり、完成させるまで迂闊に外に出せない代物ではある。
なお、リクトライオンのデザインを決定する際にライオンか虎で闘士ダブルゼータとガンパンツァーの間でちょっとした言い争いがあった事を追記しておく。G-アームズではライオン(獅子)はキャプテンのエンブレムであるのだ。
「でも、四季一人の時はもっと凄い事してたよな……」
「もっと!? あれより凄い事してたの!?」
「ああ、三階の窓から飛び降りて、あのアメイジング・レヴって奴使わないで平気で着地したり」
正確には飛び降りた瞬間壁を蹴って近くの木の枝を掴んで落下の勢いを殺し、そのまま地面との距離が短くなった所で着地した訳だが……。これも過去の冒険で身についた度胸と日々のガンダム達との特訓ゆえである。
(そうか……。これが今の世の中で男がISを使えるとどうなるかって事か。ぼくはこれからずっとこんな状況で生活しなきゃいけないんだ……)
流石に好機の目には曝されるだろうが、別に窓から飛び降りて平気で走り回る必要は無い。そんな事ができるのはIS学園じゃ四季一人だけだろう。
「そんな事より助かったよ。やっぱ学園に男三人だけってのは辛いからな。一人でも男が増えるのは心強いもんだ。これから宜しくな」
そう言って一夏はシャルルへと握手を求めて手を差し出す。
「オレは織斑一夏、一夏って呼んでくれ」
「うん、宜しく一夏」
嬉しそうに握手に応じるシャルル。そんな二人を先に着替えた四季は外に出たと見せかけて物陰で観察していた。
「ぼくの事もシャルルでいいよ」
「分かった、シャルル」
二人が出て行く事を確認すると四季は天井を見上げ……
「隠密ガンダムさん、シャルルの監視と一兄の護衛を頼めるか?」
四季がそう呟くと天井から顔を出した隠密ガンダムが頷いて再び姿を隠す。……すっかり、IS学園内に関係者に気付かれる事なく独自の活動用のルートを確保しているDEMの忍軍である。学園内の監視カメラの死角なども既に調査済み、自由自在に動き回っているのが現状である。当然ながら、隠しカメラが無く完全な死角となっている部屋の有無についてもだ。
四季が一夏とシャルルに遅れて更衣室を出て行くと暫くして秋八が息を切らして更衣室に入ってくるのだが……当然ながら、其処には誰も居なかった。
「遅い! とっとと列に並べ!」
一夏とシャルル、四季に遅れて校庭に秋八が辿り着くと千冬の叱責が響く。
「では本日から格闘及び射撃を含む実戦訓練を開始する!」
『はい!』
千冬の言葉に生徒全員が返事をする。現在、校庭には二クラス分の人数……一組と二組のメンバー全員が揃っている為に相応との人数となっている。
「何人かは既に経験……或いは習熟している者も居るだろうが、退屈だろうが危険なので決して遊ぶな!」
特にお前だと言う表情で四季を睨み付ける千冬だが……当の四季は流石に飛行訓練の授業で遊んでしまった事が有るので目を逸らす。……ガンセイヴァーから最初に教えられた事……空を飛ぶ楽しさを知っているだけに、つい自由に飛び回ってしまった。序でに次に教えられたのは着地の重要性だ……。
格闘及び射撃……つまり今日から『武器』を使った本格的な訓練が始まる……そう言う訳だが、副担任である真耶が居ない事が気になる。
「凰、オルコット!」
「「は、はい!」」
突然名前が呼ばれたことに驚きながらも返事をする二人……
「「専用機持ちなら直ぐに始められるだろう、前に出ろ!」
『直ぐに始められる』と言う所で何を意味しているのかが分かる。専用機持ちはこう言った訓練で直ぐに始められる為に選ばれる率は高い。
そんな二人に千冬が何かを囁くと二人のやる気が目に見えてあがるのがわかる。
「やはりここはイギリス代表候補生セシリア・オルコットの出番ですわね!」
「まあ? 実力の違いを見せる良い機会よね! 専用機持ちの!」
やる気満々と言った様子の二人……まあ時々横目で四季と一夏を見ているところから何を考えているのかは分かるが。
(四季さんに私の勇姿をお見せする良い機会ですわ!)
セシリアの頭の中で側にデュークモンと騎士ガンダムに似た甲冑の騎士を従えた、どこぞの騎士王みたいな鎧を纏った四季に褒められている絵が浮かんでいたりするのは、相変らずだろう。
(一夏にいい所を見せるチャンスね!)
まあ、鈴は鈴でそんな事を考えていたりする。騎士王な衣装じゃない普通の格好だが、考えている事はまったく同じな一夏の絵が浮かんでいる。
……それが、千冬の言った『アイツ等にいい所を見せられるぞ』と言う言葉の効果である。
「それで相手はどちらに? わたくしは鈴さんとの勝負でも構いませんが」
「ふふん、こっちの台詞っ。返り討ちよ」
不敵な笑みで互いに視線を交わすセシリアと鈴。対戦カードは無かった二人だが、中々面白い試合になるだろうと予想する。まあ、
((四季が相手じゃなきゃいいんだけど(ですけど)))
何て考えていたりもする。代表決定戦やら不明機戦やらで見せられた四季の戦いぶりを思えば当然だろうが。
これまでの活躍で得た一年生最強の呼び名の影響は伊達では無い。
「慌てるな、対戦相手は……」
千冬が今にも戦い始めそうな二人を窘める。
(相手は山田先生だったな、確か)
一瞬だけ笑みを浮かべると一夏とシャルルの所に近付いていく秋八。
(上手く一夏の近くなら役得が受けられるかもね……。間近で見てみたいって言うものあるけどね)
そう考えながら二人に近付くと一夏に声をかけてシャルルに挨拶する。
(先ずは挨拶から。さっきは遅れてしまったけどね)
「来たな」
上空を見ながら呟く千冬。『キィーン』と言う音を立てて何かが校庭へと向かってきている。
(あれは……?)
空を見上げると遠くからだが確かにそれはIS。……先日のシャッフルガンダムを含む不明機では無い様子だが……。
「え?」
そんな風に視線を向けていると上空の影の体制が崩れる。
『あぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!』
徐々にだが大きくなってくる悲鳴が聞こえてくる。……何が有ったかは知らないが、その様子を見る限りでは、本気で空中で体制を崩したのだろう……。
「きゃあああああああああああああぁ! どっ、どいてください~!」
「山田先生?」
上空で体制を崩した人……山田先生に一瞬呆けてしまうが、直ぐに気を取り直してHi-νガンダム・ヴレイブを展開する。素早くバックパックからフィン・ファンネルを射出、通常は壁上に展開するバリアを衝撃吸収用のビームネットモードで展開、正面にネットを展開して受け止めるのは危険と判断し、己の後方にビームネットを展開すると、
「くっ!」
正面から真耶を受け止めてブースターの噴射と背後に展開したビームネットで勢いを吸収する。勢いが強すぎるために後ろに押される。徐々に勢いが弱くなっている中、完全に勢いが無くなった事を確認すると、ビームネットを解除して射出していたフィン・ファンネルを再びバックパックへと収納する。
「……止まったか……。えーと、山田先生、大丈夫ですか?」
「…………」
受け止めている四季が真耶へと問いかけると顔を真っ赤にして、オロオロとした表情を浮べていた。
さて、現在の四季と真耶の状況を簡潔に説明すると、第二世代型IS『ラファール・リヴァイブ』を纏った真耶をHi-νガンダム・ヴレイブを纏った四季が抱きしめる形で受け止めていると言う訳だ。
「ア……えーと……」
ヴレイブの装甲の中で真っ赤にしながら真っ青になると言う器用な事をしているが、残念ながらそれは誰にも見えていない。……当然ながら、全身装甲で有る為に感触も何も有ったものでは無いが、それでも……異性を抱きしめていると言うのは変わらない。
一瞬、見惚れるほどの笑顔で#マークが浮かんでいる詩乃さんの顔を思い浮かべて寒気を感じた。
(あれが……DEM社の最新鋭機)
Hi-νガンダム・ヴレイブを……睨み付けると言うのが正しい険しい表情で見上げているシャルルが己の専用機の待機状態を握り締める。
デュノア社で販売されている真耶が纏っている量産機『ラファール・リヴァイブ』と同じタイプの“万能型”と世間では認知されているDEMの代表的なISとされている第三世代機で、世界初の量産型第三世代機の母体となった機体としても、DEMの看板と言っても良い機体で、デュノア社にとっては世界三位のシェアを持っていたデュノア社がIS本体の開発権を取り上げる瀬戸際に立たされている原因となった機体でも有ったりする。
DEMの企業代表にして三人目の男性操縦者の四季の専用機であるヴレイブの性能を見せる為のIS委員会を相手に世界中継で模擬戦を行う事になった。
その際に選ばれたのは万能型とされているラファール数機対ヴレイブ一機での専用機とのスペック差を考慮しての試合だったが、ラファールは全機がヴレイブのSEを削れる事も無く全機が敗北した。
まあ、操縦者を選ばないラファールに対してヴレイブは四季の為だけに生まれた機体であり、初期第三世代機に劣らない第二世代最後期の機体とは言えヴレイブは最新鋭の……異世界の技術さえ使われて完成した機体だ。
当然、世間の目ではDEMの技術力の方がデュノア社よりも上と判断し、軍用機として採用が決定した。今後徐々にラファールから量産型νに移して行く予定らしい。それでも、デザインの面でラファールを好む者も多く、競技用ではまだまだラファールの人気はある。……人気は有るのだが、未だに第三世代機の開発さえ出来ていないデュノア社に対して、フランス政府はある事情も有り、今年度中に第三世代機を開発できないなら、デュノア社からISの本体の開発権を取り上げる決定をしたそうだ。
更に他の欧州の国々はDEMからの技術提供で得た技術で大幅に技術力を上げている中、フランスだけが受けられずにいる。
そのトップに居るのはイギリスであり、BIT兵器の発展型である『ファンネル』と『インコム』の技術を受けたブルーティアーズ型の三号機を開発中だとか……。
(ごめんね、一夏。君の優しさ、つけ込ませてもらうよ……)
心の中で一夏へと謝罪してシャルルはHi-νガンダム・ヴレイブを見据える。
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