復讐法

「許せるものではない」
「そうなりますね」
「そうなる。犯罪者にただ飯を食わせるなんてな」
「ましてやそれが人殺しなら」
「はいわかりましたで頷ける人間はいない」
　こう言うのだった。
「いても非常に少ない」
「その問題もありますね」
「そしてやはり人を殺した人間は死刑にする」
　首相はまたこのことを指摘した。
「これは当然だ」
「罪にはそれに相応しい報いがあって当然ということですね」
「そしてだ。被害者だ」
　今度の問題点はここだった。人を殺すということは殺された人間がいるということだ。これは自明の理であり現実の世界ならばそうならないと成り立たない理屈だ。
　だがこの至極当然のことにもだ。首相はあえて言ったのである。
「被害者の遺族にとっては愛する者を奪われたのだ」
「それも永遠に」
「そうなればやはりな」
「加害者に同じことをしなくては気が済みませんね」
「感情的にもな。ましてや相手は殺人犯だ」
　つまり人殺しだ。それならば余計にだった。
「許せる筈がない」
「愛する家族を殺した殺人犯ならば」
「だからだ。被害者の遺族にとってみれば当然のことだ」
　その相手をだ。自分達の手で好きにすることもだ。
「昔から。こうした話では相手に同じ目に遭わせたいという人がいたからな」
「そうした言葉は常に出ていましたね」
　殺人事件があった、その都度だ。
「相手を憎むのも当然ですね」
「これもまた至極だな」
「そうですね。今度は感情面から言ってもですね」
「当然だ。法律的にもだ」
　またこの話をする首相だった。
「罪には相応しい罰が必要だ」
「目には目を、歯には歯をですね」
「ハンムラビ法典はそのまま今も生きている」
　あの古来の法典はやはり偉大だった。そうしたことがわかっているのだ。
「そして被害者の、殺された人の遺族の感情を考えてもだ」
「当然のことですね」
「私もそう思う」
　結果としてだ。首相もそうだというのだ。
「批判する人権派は人権を楯に言うがな」
「それが正しいかというとですね」
「自分の身になって考えてみることだな」
　首相もだ。ネットでの書き込みと同じ意見を述べた。