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復讐法

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第三章

「大変なことですよね」
「全くですよ」
 その彼にだ。ミスタースポックの出来損ないの様な顔に全く似合っていない口髭を付けた、かつては歌番組の司会だったこの番組の前番組でキャスターだった男が頷く。今日は特別にゲストで呼ばれたのだ。
 そのスポックの出来損ないがだ。丸眼鏡に言った。
「人権は何処に行ったんですか」
「そうですよね。こんなことが許されるならですよ」
「日本は大変なことになっています」
 こうだ。スポックは言うのだった。顔立ちはスポックよりも遥かに下品だ。
「加害者といってもですよ」
「はい、人権はあります」
「その彼等にこうした仕打ちは間違っています」
「一寸の虫にも五分の魂ですよ」
 眼鏡は俗に言われている言葉を出した。
「幾ら被害者の遺族とはいえです」
「こんなことは許されませんね」
 二人で同じテーブルにつき顔だけ向かい合わせて話していく。
「この法律を何とか廃止しないと」
「犠牲者がもっともっと出ますよ」
 彼等は嘆息しながらだ。必死に話していく。しかしだ。 
 ネットはこの彼等の発言が取り上げられた。ある巨大掲示板からはじまった。この巨大掲示板は今や日本人なら誰もが知っているものだ。
 その掲示板においてだ。二人に対する書き込みが殺到した。
「はあ!?」
「何言ってんだこの馬鹿二人」
「じゃあ御前家族が殺されても同じこと言えるのかよ」
「被害者の遺族の気持ちになってみろ」
 こうした書き込みがだ。続いて書かれていった。
「本当に他人の痛みがわからない奴だな」
「人殺しの人権なんか知るか」
「人を殺したら死刑になるの当然だろ」
「被害者の遺族にとっちゃ当然の権利だろ」
「犯罪者に人権なんてないんだよ」
 こうした意見まで出た。
「それが何だ?加害者の人権!?」
「加害者の人権なんて不要なんだよ」
「死刑は当然だろ」
「この連中何言ってんだよ」
 こうした書き込みが殺到してだ。掲示板のスレを紹介するサイトでも貼られていった。
 ツイッターでもブログでもこの発言が取り上げられ。二人は完全に『人権派』として批判と侮蔑の対象になった。そうしてであった。
 ある弁護士あがりの泡沫政党の党首がだ。こう言ったのだった。
「人権があるのですしい」
「やっぱりあの法律は間違っています」
「人は殺したらいけませんよ」
「被害者の遺族の人達には我慢してもらいましょう」
 完全に加害者の側に立っていた。だが、だった。
 この党首も批判の対象になった。こう書かれていった。
「そういう御前は慰安婦なんて嘘でっちあげてたよな」
「そんなの人民を餓え死にさせてる将軍様に言えよ」
「こいつ本当に馬鹿だよな」
「何もわかってないな」
 キャスター二人とだ。同じ様な批判が書かれていった。
「何でこういう奴等って加害者の人権言うかね」
「被害者の気持ち考えないんだ?」
「どう考えても頭おかしいだろ」
「この連中何処から金もらってんだ?」
「カルトじゃないのか?もうな」
 人権派の言葉はネットでは圧倒的な批判を浴びた。テレビで彼等が何を言ってもだ。無論新聞でもだった。このことに対してであった。
 首相は官邸の自分の席でだ。官房長官に言った。
 官房長官は首相の前に立っている。その彼に言ったのである。
「死刑自体もな」
「そもそもそれ自体がですね」
「彼等は廃止しようと言うが」
 だがそれでもだというのだ。
「それは結局無理なのだろうな」
「そうですね。人を殺せばです」
「死刑にするしかない」
 政治家らしく割り切った、現実を見た言葉をだ。首相は出した。
「結局のところはね」
「そうですね。そしてです」
「そうだ。無期懲役にしても」
「それだけ犯罪者を税金で養うことになりますから」
「それもな。国民感情としてはな」
 その基になる人間としての感情ではだった。 
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