FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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日常編2
聖十大魔導の称号
前書き
最近のFAIRYTAILのOVAってなんかエロ重視になってきてる気がするのは気のせい?『妖精たちの罰ゲーム』『ナツvs.メイビス』、そして最後は『妖精たちのクリスマス』。
原作のところでアウトな奴ばっかりだよね、俺は割りと好きだけど。
水竜「変態か」
変態「え!?呼んだ!?」
マーガレット祭を終えた次の日。俺たちはギルドの前で、ある人物たちを見送るために集まっている。
「世話になったな」
そう言ったのは愛刀を片手に握り締める黒髪の剣士。俺たちが今日見送りをしているのは、昨日のお祭りにやって来ていたカグラさんたちだ。
「ミャア!!楽しかったよ!!」
「セシリーもシャルルも柔らかかったぁ」
「「二度と来んな!!」」
お祭りを満喫したらしいミリアーナさんとセクハラを徹底したことで心の充足を満たしたソフィア。ただ、精神を削られた猫耳二人は彼女に怒声を上げている。気持ちがわかるために、なんとも言えない気分だ。
「ソフィア、あまり周りに迷惑をかけるな」
「は~い」
頭をこつかれ、適当な返事でその場を誤魔化す。カグラさんもこいつには苦労してそうだな。身体的なところと、精神的なところで。
「シリル」
「はい?」
ギルドに帰ろうと体を半回転させたかと思ったら、まだ何かあったらしくもう半回転して元に戻る。彼女は俺の方をじっと見た後、口を開く。
「今回は私の負けだ。だが、次は必ず勝つぞ」
どうやら彼女は5スペルサバイバルで俺にやられたことがずっと引っ掛かっているらしい。確かにあの時は、両者ともにスペルが残っておらず、普通のバトルになっていたから、カグラさんとしては悔しくて仕方ないんだろう。
「残念ですけど、次も俺が勝ちますよ」
カグラさんは強いけど、俺には負けられない大きな理由がある。彼女には悪いけど、何度やろうとも必ず勝ち続けてみせる。
「じゃあな」
欲しかった答えがもらえたらしく、どこか満足気な表情の剣士は、軽く手を上げ背を向けると、他の二人を連れて帰路へとつく。
「一度は仕留めたんだがな・・・」
三人の姿が見えなくなった頃、後ろにいたリオンさんがどこか悔しそうな感じでそう言う。もし当初の予定通りレオンのスペルが封じられていたら、あの勝負は間違いなく俺たちの負けだった。だけど、向こうが深読みしてくれたおかげであのような結果になったので、文句は言わせませんよ?
「作戦負けじゃん。そんなこと言わないでよ」
「わかっているさ」
何を言っても意味がないことを、彼自身もよくわかっていた。そのため、レオンからたしなめられるとそう返答してギルドの中へと入っていく。
「よし。ソフィアたちも帰ったし、飯食いに行こうぜ」
ポケットから昨日のゲーム大会で手にいれた食べ放題券を取り出すと、お前誰だよってくらい目を輝かせてそんな提案をする氷の神。
「わかってると思うけど、お店破産させるくらい食べちゃダメだよ」
「大丈夫だよ。その辺は」
今まで見たことがないくらい大食いである彼が食べ放題券なんか使ったら、お店としては溜まったもんじゃない。あの景品を掲げたら、こいつが出てくるだろうと推測できるだろうに、なぜマーガレットの人たちはそれを請け負ったのだろうか?不思議すぎてよくわからん。
「まずはどこにいこっか」
「はしごする気満々じゃん!!」
一軒に偏るとそのお店は大変になるけど、分散させれば大丈夫。彼はそう思っているんだろうけど、それも如何なものだろうか?その日は大丈夫だろうけど、結局徐々に大変になるのは目に見えてる。こいつに食べ放題券は渡さない方がよかったかも・・・いや、たぶん無理矢理奪われるのは目に見えてるけど。
「ずいぶんと盛り上がっておるのぅ」
最初に食い潰すお店を考えている少年を見ていたところ、後ろから聞き覚えのある男性の声が聞こえる。その懐かしい声に真っ先に反応したのは、同じギルドに所属していた少年少女たちだ。
「ジュラさん!!」
「わぁ!!久しぶり!!」
声の主は蛇姫の鱗の最強の魔導士、ジュラ・ネェキスさん。今は聖十大魔導のメンバーで構成されている評議院に入っているが、やはり共にした時間が長いシェリアたちは彼に会えて嬉しそうだ。
「シリル殿とウェンディ殿も元気そうだのぅ」
「お久しぶりです!!」
「ジュラさんも元気そうで」
俺たちが蛇姫の鱗に入ったことは、魔導士ギルドを取り仕切る評議院にも申告してある。なのでジュラさんも俺たちがいることを知っているので、そんな言葉が出てきたのだ。
「ムッ?そっちの二人は?」
俺たちの頭を撫でたジュラさんは、その後ろにいる二人の少女を見て目を細める。白い髪をした少女と茶色の髪をした少女に見覚えがない上に、評議院にも申請されていないだろうから、悪い人たちを見る目になっているんだろうな。
「あら?私たちよ」
「じゃじゃ~ん!!」
訝しげな視線を向けられた二人は変身魔法を解き、元の猫の姿へと変化する。それを見た瞬間、ジュラさんが驚愕し、大きく目を見開いた。
「オオッ!!シャルル殿とセシリー殿か!!」
彼女たちの正体を知り、元の優しげな目へと戻っていく。それを見届けた後、セシリーたちはもう一度変身魔法をやり直し、人間の姿へと変化する。
「ラウルと同じ変身魔法を覚えたのか」
「うん!!ラウが教えたんだよ!!」
胸を張り得意気な表情のラウル。なんとも子供らしい仕草の彼を見て、ジュラさんは息子でも見るかのような笑みを浮かべていた。
「どうしたの?リオンくんたち呼ぼうか?」
久しぶりのギルドに懐かしそうにしていた彼に対し、レオンがここに来た理由を聞こうと話しかける。ただ、本人はオババ様やリオンさんに用事があると読んだらしく、ギルドの扉を開けて二人を呼ぼうとしていた。
「いや、今日はお主に用事があって来たのだ」
「俺?」
しかし、ジュラさんの目的は目の前にすでにいた。指名された少年は首を傾げ、何か心当たりがないか振り返っている。
「ハハッ。そんなことをしてもわかるはずがないぞ」
「??そうなの?」
何か悪いことをして訪問されたわけではないようで、レオンは少し安堵したようにも見える。
「立ち話も何だから、中に入ってよ!!ジュラさん」
「そうだな」
大きな背中を押してジュラさんをシェリアがギルドの中へと誘う。それに続くように俺たちも入っていくと、ギルド内は久々の彼の登場に大いに湧いた。
「やっぱりジュラさんは人気だね」
「ギルドの中でも外でもね」
聖十大魔導序列五位ということもあり、彼の知名度はすごい。おまけに人柄もいいから、自然と心を開けてしまう。実力もあって人気もある、まさしく魔導士の鏡といったところだろう。
「それで?俺に用って何?」
ギルド内すべての視線が集まっている中、中央付近のテーブルに腰掛け話を始める氷の神と聖十大魔導。俺たちやリオンさんたちもどんな話をするのか気になって仕方なく、自然な感じでレオンの後ろを陣取っていたりする。
「今、聖十大魔導が評議院をやっているのは知っておるな?」
「うん、まぁ」
冥府の門の野望のために犠牲となった評議院の議員たち。他にも検束部隊の人たちや元評議院たちも殺されちゃって、魔法界の秩序を守る術がなくなっていた。そこで、イシュガルの四天王の一人、ウォーロッドさんの呼び掛けで聖十大魔導で評議院を再建することになった。ジュラさんも四天王に次ぐ魔導士であるため、召集されたわけなんだけど・・・
「実は聖十大魔導で集まりが非常に悪くてな」
「え!?そうなんですか!?」
彼の口から発せられた言葉に思わず割り込んでしまい、慌てて口を塞ぐ。だって全員集まってないなんて、想像できるわけないじゃん。
「周辺国の者はほとんど集まっておらんし、マカロフ殿も来てくれなくてのぅ」
「マスターが?」
忘れていたけど、妖精の尻尾のマスターだったマカロフさんは、聖十大魔導の称号を持っているのだ。そのためギルドの解散後、ジュラさんと一緒に評議院の再建をしてるのかと思ってたのに、これにはウェンディも俺も驚きだ。
「うむ。おかげで議員がほとんど集まっておらん。今も呼びかけてはおるのだが、来てくれそうになくてのぅ・・・」
人が集まらないことには議会の再結成は難しい。全員が聖十大魔導でなくても、現在集まっている人員から数名を議員に上げることも考えているらしいんだけど、それだと厳正な議会を開けるかどうか、判断がしづらいらしい。
「それで?なんで俺のところに来ることになるの?」
今の評議院の状況については理解することができた。しかし、それがなぜレオンの元に訪ねることになるのか、さっぱりわからない。
「うん。これは現在集まっている聖十大魔導で話し合って出した結論なんだが・・・」
大陸の上位十人(実際には集まっていないが・・・)が話し合った内容と聞いて、思わず静まり返るギルド内。その場にいる全員が、彼らの下した結論の全貌に聞き入る。
「レオン・バスティア、お主を聖十大魔導序列三位に任命する」
「はぁ!?」
予想することなどできもしない話に指名された本人が驚愕して大声を出す。こういうときは一拍間を置いて驚くのが筋なんだけど、レオンにそんな常識が適応されるはずもなく、間髪置かずに驚いていた。おかげで、俺たちは思考がいつもよりも遅れてしまい、いまだに事態を把握できていない。
「あの・・・それってどういう・・・」
主にレオンのせいで頭が追い付かなかったシェリアが、ジュラさんに詳しい説明を求める。それを聞いた彼は、一度うなずいてから言葉を紡ぐ。
「さっき話した通り、人員が足りないことが要因の一つではあるが、何よりあれだけの実力があるレオンを聖十に入れないのはおかしいとなってのぅ。本来なら序列一位でもおかしくないんだが、一位の方がまだ評議院に来てらっしゃらないことで序列二位の方が議長を務めておる。我々の決定で一番序列が高い方が議長を務めることにしたから、レオンを一位にするとさすがに大変だろうとなってな。議長の方を変えずに与えられる一番高い序列が三位だったので、それをレオンに渡し、議会に参加してほしいのだ」
彼の言うことには納得できる。レオンの力はジュラさんを遥かに上回っているから、もしかしたらと思っていたけど、やっぱりイシュガルの四天王よりも強いのか。もしこいつがその誘いを受けて聖十に入れば、長年崩されることのなかったイシュガルの四天王が入れ替わることになる。それはちょっと・・・いや、かなり見てみたい。
(でも、それだと・・・)
チラッとそばにいる赤紫髪の少女に目をやる。彼女はジュラさんの誘いを聞いて、少し寂しそうな目をしていた。
「どうだ?レオン。恐らく、お主の答えは決まっていると思うが」
「だったら聞かなくてよかったんじゃないの?」
「一応、順序を踏まなくてはならんからな」
ジュラさんに誘われたら断れる人なんているのだろうか?それも、同じギルドでその背中を見てきた人間なら特に・・・でも、それじゃあシェリアの気持ちは?レオンは一体、どっちを取るんだ?
「絶対イヤだ」
聖十の称号がもらえたら、誰だって嬉しい。たぶんそれはレオンだって例外じゃないは・・・
「「「「「はぁ!?」」」」」
全員の声が被った瞬間だった。だって・・・せっかくの誘いなのにそれを断るなんて・・・きっとジュラさんも驚いているに違いない。
「ま、そうだろうな」
「そっち!?」
お主の答えは決まっていると思うがって・・・断られるのを予想してたの!?普通うなずいてくれる方を期待するものじゃないのかな!?
「念のため、理由も聞かせてくれ。おおよその予想はできているが」
喉から手が出るほどほしいはずの聖十の称号。それを拒否するってことは、よほど何か大きな事情があるに違いない。
「俺は評議院が大嫌いなんだよ!!」
「子供か」
トビーさんを思わせるような突然のキレ方。しかも理由がとんでもないほどに子供っぽい。彼の過去のことを考えると評議院にいいイメージがないのもわかるんだけど、それはそれ、これはこれなんじゃないだろうか?
「そうか。すまんな、無理を言って」
「いえ。俺の方こそわざわざ来てもらったのにすみません」
駄々っ子みたいなことを言ってたかと思ったら、元通りの静かな雰囲気を取り戻したレオンがジュラさんに頭を下げる。それを見たジュラさんは、袖から何かが書いてある一枚の紙を取り出す。
「そう思っているなら、この依頼を受けてはくれんか?」
机に置き、少年の方へと押し出される一枚の依頼書。彼はそれを手に取ると、一通りの依頼内容に目を通す。
その後ろから俺たちも依頼書を覗き込むと、そこには驚くような依頼が記されてあった。
「これって・・・」
「100年クエスト~!?」
シャルルとセシリーが書いてあった文字を見て目を見開く。ジュラさんから渡されたそれには、確かに100年クエストの文字があった。
「100年クエストって、ギルダーツさんが達成できなかった依頼?」
「だよね」
100年クエストとは、100年間誰も達成できなかった依頼のことを言う。100年間何人もの人が挑戦し、失敗してきた依頼・・・つまり、それだけ難しく、険しいクエストだと言うことだ。
「さっきいった通り評議院では人が足りん。ウォーロッド様たちならできるかとも思っていたのだが、手も空かんし少々厳しくてな。だが、レオン。お前ならできるかもしれんと思い、持ってきたのだ」
さっきの話を信じるなら、レオンはこの大陸の中でもっとも優れた魔導士ということになる。そんな彼なら長年達成できなかった依頼を遂行することも可能かもしれない。
「う~ん・・・」
依頼書を睨み、どうしようか迷っている少年は、眉間にシワを寄せて難しい顔をしていた。そんなところで、ジュラさんがこんな提案をしてくる。
「無論、厳しいと判断したらすぐに引き返してもらっていい。その中でできることなら、この依頼が達成されなかった理由を探ってきてほしい」
なぜここまでクリアされることなく残されているのか、その理由をまだ誰も知らないらしい。そもそも大半の挑戦者は途中で命を落とし、帰ってきていないから知りようがないのだけど・・・
「これくらいなら、やってもいいか」
「オオッ!!まことか!?」
驚くジュラさんの目を見てうなずくレオン。それを見て俺は気付いてしまった。レオンがジュラさんの手のひらで踊らされていることに。
最初に絶対に断られるお願いをして、相手に断ったという罪悪感を感じさせる。そこで少しハードルを下げた頼み事をすれば、自然と相手は「それくらいなら・・・」と引き受けてしまうはずだ。人間の心理を利用した、どこかの営業さんのような攻め方だな。
「ありがとう、恩に着る」
「いや、別に」
恐らくジュラさんの狙い通りになっていることに気付いていないレオン。ここで俺が言うのもありだけど、それは彼に申し訳ないから黙っておくか。
「面白そうだね!!」
「ラウたちも手伝うよ!!」
そして巧みな戦術で騙されたのは彼だけではなかった。シェリアと相棒の猫もすでに手中に落ちており、レオンの手伝いに行くことを決意していた。
「いや、シェリアとラウルには残っていてほしい」
「「え!?」」
しかし、そんな二人の鼻先を折るようなことをいったのは黒いお髭の聖十大魔導。彼女たちはなぜそんなことを言われたのかわからないみたいなので、その理由をジュラさんが説明してくれる。
「これはなにぶん危険な依頼だ。できることならレオンの足を引っ張るようなことをしてほしくない」
その言葉を聞いた瞬間、シェリアの顔が強ばった。魔法学校で常に優秀な成績を修めていた彼女からしたら、それは屈辱以外の何物でもなかったのかもしれない。
「わ・・・わかりました」
でも、シェリアも大人だ。悔しさを噛み殺し、彼の言葉に従う。それを見ていた俺とウェンディは、なんて声をかけたらいいのかわからなかった。
「ジュラさん、移動とかでラウルは連れていきたいんだけど・・・」
「そうか?それくらいなら・・・」
一瞬シェリアに目線をくれた後、声のかけ方がわからず話を反らした氷の神。彼の提案により、100年クエストにはレオンとラウルの二人で行くことになった。
「色々と準備もしなければならんだろうし、出発の日付はお主に任せる。ただ、一応ワシらには出発するときに報告をしてくれ」
「了解シマウマ」
軍隊の敬礼ポーズをし、ジュラさんを送り出したレオン。彼はその姿が見えなくなったのを確認した後、シェリアの肩に手を置く。
「気にしないで。ジュラさんにも悪気があったわけじゃないだろうし」
落ち込んでいるのが丸分かりだった彼女を気遣って声をかける。ただ、そこまでフォローができているようには聞こえなかったのが玉に傷かな?
「ううん!!全然気にしてないよ」
無理に作った笑顔でそう返した天空の神。氷の神はそれにもちろん気づいていたが、これ以上掘り起こすのは彼女に悪いと考え、それ以上のその話題をすることはなかった。
後書き
いかがだったでしょうか。
レオンがチートだったから声くらいかかるだろうと作ってみた今回のお話。実は次の長編にも繋がってくるところがあるようなないような・・・次は新キャラを投入しようかと思ってます。突然の思い付きなんだけどね(笑)
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