Three Roses
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第二十二話 大学その十一
「我々は考えていませんが」
「事前に手を打たれてきましたね」
「相変わらず賢き方です」
「もう気をつけられるとは」
「私はこの前の王の御前での大学、図書館の話でこれまで以上に確信した」
太子はあの時の目で今は側近達に話した。
「マリー王女はやはりな」
「マイラ様が女王になられるには」
「一番の障壁ですね」
「聡明であられるが故に」
「だからこそ」
「そう確信した、だが味方になればだ」
その時はというのだ。
「これ以上はないまでの助けだ」
「聡明さは敵が持てば恐ろしい剣になり味方が持てば素晴らしい盾になる」
側近の一人が言った。
「そういうことですね」
「そうだ、マリー王女の聡明さは必ずこの国を正しく導く」
太子はこう言い切った。
「この国がロートリンゲン家のものになれば」
「我等にとって」
「この上なく頼もしい方となられますね」
「そうだ」
まさにという返事だった。
「だからこそ私は彼女を敵ではなくな」
「お味方にしたいですね」
「出来る限りな」
真剣な目での言葉だった。
「そうしたい、だが敵となろうとも」
「あの方が王位継承を強く望まれても」
「それでもですか」
「太子としては」
「あの方を」
「命まで奪いたくはない」
こう言うのだった。
「敵味方は変わるものだ、命さえあればだ」
「味方にもなられ」
「そのお力を頼りに出来る」
「だからですね」
「そうだ、だからだ」
マリーについてはというのだ。
「味方にしたいし命も奪いたくはない」
「出来れば補佐役ですね」
「マイラ様の補佐役にしたい」
「頼りになる助言者として」
「その立場でいてもらいたいですね」
「そう思う、そもそもこの新教徒達の力は強い」
太子はこのことも指摘した。
「大臣でも宰相と内外それぞれの大臣にだ」
「財務大臣も」
「その席も手に入れてしまいましたし」
「力は強いですね」
「むしろ旧教徒達より優勢です」
「マリー王女はその旗印であり盟主でもある」
このことはマイラも同じだ、彼女もまた旧教徒達の旗印であり盟主である。姉妹でそれぞれそうなっているのだ。
「赤薔薇、彼女の薔薇はな」
「新教徒の象徴ですね」
「そうとも定められていますね」
「旧教徒は黒薔薇ですが」
「マイラ様のお花で」
そして紫の薔薇が王の薔薇だ、今この国にある薔薇はこの三つだ。マリーが大事にしている薔薇達はまた違う薔薇達であるが。
「そうなっていますので」
「赤薔薇には手を出せない」
「若し手を出せば」
「とんでもないことになりますね」
「薔薇には刺がある」
このこともだ、太子は指摘した。
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