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歌集「春雪花」

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 冷えし夜の

  月を仰ぎ見

    想いしも

 落ちにし影の

    一つなりけり



 冷たい風が枯れすすきを揺らし…指先から温もりが落ちてゆくような寒い夜…。

 会いたい君はどこにもなく…ただ、淋しさのあまり月を見上げた…。

 月明かりは眩しいほどに私を包むが…落ちた影は、私が一人だと嘲笑った…。



 色褪せし

  初冬の里の

    侘しさに

 叶わぬ恋の

   散りてゆきなむ



 秋の華やかな山並みはその色を褪せさせ…次第に冬を思わせる寂しい色へとかわりゆく…。

 初冬の風景は物悲しく…何もかもが虚しくなるばかり…。

 彼を求めては自らの意味を問い…諦めようと藻掻いては、自らを貶める…。

 こんな叶わない恋…散りゆく枯れ葉の様に、いずれは消えゆくものなのだろう…。


 そう…もうすぐ降り頻る真冬の雪に、枯れ葉が埋もれてしまうように…。



 
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