FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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意外な弱点
前書き
約三ヵ月ほどやってきたこちらの章もこのお話で終了です。今回の章は作っていくのがなかなか難しくて大変だった・・・
まだまだ蛇姫の鱗でのお話は続くと思うので、気長によろしくお願いします。
シリルside
「シリルゥ!!」
一人で勝利の味を噛み締めていると、後ろから数人の足音と大好きな少女の声が聞こえ振り返る。そこには予想通り、三人の少女たちが来ており、そのうちの一人、天竜ことウェンディが飛び付くようにして抱き付いてくる。
「すごかったね!!シリル」
「えへへ/////そうでしょそうでしょ」
大金星でただでさえも嬉しいのに、ウェンディの笑顔を見せられて思わずにやけてしまう。しかし、その様子を見ていたシェリアとソフィアがイヤらしい笑いを浮かべていることに気付き、何事もなかったかのようにキリッとした顔を作る。
「お疲れぇ」
ウェンディとハグをしていると、三人からは遅れて金色の髪を揺らしながら氷の神がこちらに駆けてくる。彼はずいぶんゆっくりと来ていたようで、俺が緩い顔をしていなかったのを見ていなかったようだ。これには少しではあるが、心の中で安堵の息を漏らす。
「勝ったぞ、レオン」
この大会へと参加を一番に提案した彼に向けてVサインを送る。レオンの目的は食べ放題券を手に入れることだったから、さぞや嬉しがっていたことであろう。
「うん、見てたよ」
「・・・」
しかし、帰ってきたのはずいぶんとアッサリしたものだった。ほとんど表情も変えずにそんなことを言うので、思わずなんて言えばいいのかわからなくなり押し黙ってしまう。
「じゃあ、閉会式に行かなくちゃね」
「そうだ!!食べ放題だ!!」
景品があるということで、もちろん閉会式があるらしいのだが、それを聞いた途端に目付きが変わる辺りこいつの思考がよくわからない。食べ放題のためにずっと頑張っていたのなら、優勝が決まった瞬間に大喜びで跳ね回りそうなものだが・・・
「おぉ~」
閉会式も終了し、マーガレット祭のメインとも言える夜の部に参加している俺たち。ソフィアと観客席にいたシャルルとセシリー、そしてラウルも交えた八人で見て回っているのだが、一番後ろにいるレオンが優勝の副賞である食べ放題券をマジマジと見ていて、ゆっくりとしか進めない。
「レオン、前見て歩きなよ」
「わかってるわかってる」
シェリアに諭されようやく食べ放題券をポケットにしまい、彼女と横並びになりながら追い付いてくるレオン。彼が明日からの食事を楽しみにしているその間にも、俺たちはわたあめやらチョコバナナやらを買ってお祭りを満喫していた。
「てかさっきからずっと聞きたかったんだけどさ・・・」
「ん?」
何かに気付いたレオンが少女たちの方を見ながらずっと気になっていたことをぶつけてみる。
「なんでシェリアたちは着物なんか着てんの?」
彼が気になっていたこと、それは少女たちの服装である。しかし、レオンの言葉を聞いた三人は一つ気に入らなかったことがあるらしく、激しく食い付いた。
「これは着物じゃないよ!!」
「浴衣だよ!!ゆ・か・た!!」
「間違えないでよね!!」
どっちでもいいとでも言わんばかりの表情を浮かべているレオンだが、三人の剣幕があまりにもすごかったのでちょっと押されている。お祭りと言えば東洋では浴衣らしいからね。彼女たちもそれをイメージして今回の服を用意したらしい。
「どっちでもいいんじゃない?」
「そんなこと言わないの~」
「気にするところではあるy・・・いや、どうだろ」
同じく浴衣を着ているシャルルはどうでもいいといった感じだったが、セシリーとラウルにたしなめられていた。
「まぁ、似合ってるからどっちでもいいけど」
これ以上機嫌を損ねると後々に響いてくるので、何気なく褒めてその場をやり過ごそうとした氷の神。こんなので逃げ切れるのかと思っていたが、彼女たちの反応は・・・
「や・・・やっぱり?」
「素材がいいから!!」
「自分で言う?」
簡単に騙されたようで、シェリアは頬を赤くさせ、ソフィアは胸を誇らしげに張り、ウェンディも満更でもない表情をしていた。
「シリルも着れば良かったのに」
「俺は男だって!!」
白を主とした花柄の浴衣に身を包むシェリアにそんなことを言われて思わず怒鳴る。俺とレオンとラウルは浴衣を着る気などあるはずもなく、普段通りの格好をしていたりする。
「いや、男物のってことだったんだけど・・・」
「あ・・・」
それを聞いた途端顔から湯気が出てくるほど熱が上がったのを感じた。いつも女の子扱いされているから、つい条件反射で・・・
「シリルならなんでも似合うと思うけどなぁ」
「殴るぞ」
後ろから抱きつこうとしてきた気配を察知してそれを回避しながらその人物を睨み付ける。紫を主とした浴衣を着ているソフィアだけど、やることは普段となんら変わらない。ただのセクハラ女子だ。
「みんなで揃えれば良かったわね」
「その方がお祭りっぽかったかもね~」
「そうかも」
シャルルの言う通り、全員で浴衣を着てみるのも良かったかもしれない。もちろん俺たちは男物を所望するけどね。
「歩きづらそうだしヤだよ」
「そんなこと言わないの」
ただ一人だけ乗り気でないレオンが目を反らす。普段着ているものと別物だから確かに動きにくいだろうけど、それくらいは気にしないでもいいんじゃないかな?
「ね・・・ねぇシリル?」
「??」
みんなでおしゃべりをしていると、突然ウェンディがモジモジしながら俺に話しかけてくる。
「感想聞いてないんだけど・・・似合ってる?」
どこか気恥ずかしそうな顔をして、クルリとその場で一回転してる天竜。彼女は明るい緑にシェリアと同じように花柄の浴衣を着ているんだけど、藍色の髪うまく色合いがあっていて、とっても可愛らしい。
「うん!!可愛いよ!!」
ニコッと微笑み率直な感想を述べる。最近は彼女とこういう機会も増えてきたので、褒めるときに照れたりすることもなくなった。
「えへへ/////ありがと」
それを聞いた彼女は嬉しそうに微笑み返してくる。本当ウェンディは可愛いなぁ・・・スッゴい癒される。
「シェリアのそれ美味しそう」
「キャッ!!レオン!!勝手に食べないでよ!!」
こっちがイチャイチャしてるかと思っていたら、向こうではさらにイチャイチャしている奴等が・・・それもメチャクチャ身近に存在していた。シェリアの持っているチョコバナナをパクッと食べたレオンとそれに驚いて注意するシェリア。レオンはなんてことのない感じだけど、シェリアとしてはカップルみたいで少し嬉しそうに見える。てかあれって間接キスじゃないか?何気なく食べてるけど。
「シャルルのお尻ゲットォ!!」
「キャアアアア!!」
その様子を見ていたソフィアが何を思ったのか、セシリーとラウルと話していたシャルルのお尻に飛び付く。それで驚いたシャルルは悲鳴を上げた後、彼女の頭にチョップを噛まし、地面にひれ伏せさせていた。
「あんたそういうの控えなさいよ!!」
「ごめんなさい・・・」
ソフィアが女子から敬遠されるのは、今のような変態的セクハラ行為を行うからだ。それを言われ、反省したような姿を見せるソフィアだったが、近くにいるセシリーのお尻をちょいちょい触っているので反省してないのが丸わかりだ。
「あ!!ねぇねぇ!!次あっちに行こうよ!!」
そんな二人は置いておき、俺の袖を引っ張り次の店へと行こうとするウェンディ。俺はそれに従って付いていき、シェリアとレオンも気付いて後からやってくる。
「ソフィアもあっち行こっと!!」
「あ!!コラ!!待ちなさい!!」
俺たちが離れていくのを見て、ソフィアがチャンスだと考えたらしく大急ぎで走ってくる。だが、まだお説教は終わってないようで、シャルルが眉間にシワを寄せ大声を発していた。
「シャルルもういいよ~」
「せっかくのお祭りなんだから楽しもうよ」
「そ・・・そうね」
しかし、今日は楽しいお祭り!!なのでこれ以上のゴタゴタはやめようと提案したセシリーとラウルに対し、シャルルは仕方ないといった感じで納得していた。
「ねぇ!!あれ入らない?」
「「「??」」」
後ろにいる二人のうちの少女が何かを見つけたらしく、振り返り彼女が指さしているところに視線を向ける。そこには今まで見てきた出店とは趣が違う、あるものが建てられていた。
「え?これって・・・」
「お化け屋敷?」
シェリアの指さすそれを見て血の気が引いていく。いや、別にお化けが怖いわけではない。ただ、こんな時までスリルを求めなくてもいいんじゃないのだろうか?そう思っているだけなんだ。別に俺は怖い訳じゃないんだからな!?
「あら?いいんじゃない?」
「何人かに別れて入ろうよ~」
「賛成!!」
やめておこうと言おうとしたのだが、後からやって来た猫耳少女たちがそんなことを言うので断りにくい・・・茶色の髪をしたタレ目の女の子はこちらをニヤニヤと見ているので、悪意があるのは明らかだった。
「よ!!よし、入ってみよ!!」
「そ!!そうだね!!楽しそうだもんね!!」
誰の目から見てもわかるほどに動揺しているが、ここで引くわけにはいかない。大丈夫、所詮は作り物なんだから怖くない。
「じゃあ二人ずつ行こっか?」
「そうね」
「楽しみ~」
八人いるので二人組を四つ作り中に入っていくことになった。できることならウェンディと一緒がいいんだけど、どうやってチーム分けをするかでペアになる人が変わってきそうだな・・・
「あれ?ソフィアは?」
誰とお化け屋敷に入るかを決めようと集まっていたところ、一人の少女が離れた場所で動かないことに気付く。どうしたのかな?何か問題でもあった?
「どうしたの?ソフィア」
「ほら!!ペア決めるから早く来て!!」
ウェンディとシェリアがソフィアの手を握りこちらに引っ張ろうとする。彼女が泣いて喜びしそうなシチュエーションだったが、それでもソフィアは動きません。
「ごめん、ソフィア、お姉ちゃんの遺言で『お祭りのお化け屋敷には入ってはいけない』って言われてるの」
「どんな遺言だよ!!」
足に力を入れてその場から微動だにしないソフィアが意味不明な発言をしてくる。お姉さんがいることすら初耳だったのだが、普通に考えてそんなこと言うはずないだろうし、きっとビビって入れないだけなんだろうな。
「怖がってペアの人に抱きついちゃえば~?」
「それは盲点!!」
仕方ないのでソフィアを置いていこうかと思っていたところ、セシリーがいらんことを言って彼女のやる気を引き出してしまう。
「じゃあセシリーとソフィアだな」
「え!?」
絶対にソフィアとペアになりたくないと思っていたところ、レオンがファインプレーを見せてくれた。これには俺を含め、全員が安堵している。
「なら私はラウルでいいわ」
「でいいって・・・いや、いいんだけど」
続いてシャルルとラウルがペアになることが決定する。あれ?この流れはまさか・・・
「それならシリルとウェンディでいいよな?」
「うん!!あたしも賛成!!」
残りの二人から予想通りの言葉が聞け、心の中でガッツポーズ。あの二組ができたところでこの展開は読めていた。当初の希望通りのペアに嬉しさが込み上げてくる。
「ちょっと~!!僕ソフィアに食べられたくないよ~!!」
「いいじゃん!!一緒に入ろうよ!!」
誰が誰と入るか決まったところで駄々をこね始めるセシリーだったが、ソフィアに抱き締められ早々に中に入っていく。続いて俺たちも入ろうとしたのだが、その直後に中から聞き覚えのある少女たちの悲鳴が聞こえてきて、なんだかドキドキが増幅したのだった。
それからお化け屋敷から出てきた俺たち。最初に入っていったソフィアたちが涙目になりながら外で待っており、無理をさせてしまい申し訳なくなった。俺とウェンディも結構騒いでいたが、二人の騒ぎようは半端じゃなかった。お祭りの出店なのになかなかの完成度だったと思う。怖かったけど、それでいて楽しめた気がする。
「もう絶対入らない・・・」
「ソフィアとは一緒に入りたくないよ~・・・」
後ろでようやく心を落ち着けることができたソフィアとセシリーが小さくそんな感想を述べる。たぶん怖がったソフィアがセシリーに抱き付きまくったんだろうな、まぁ元々は彼女の発言が原因なんだから、仕方ないだろう。
「ソフィアって怖いものが苦手だったんだね」
「意外な弱点って感じだね」
二人に聞こえないようにコソコソと耳打ちし合う。もし彼女にセクハラされそうになったら、お化けでも水の造形で作り出してみるか?きっと泣きながら離れていくぞ!!
「おい、早く行かないと花火見れないぞ」
「近くで見た方が迫力あるよ!!」
すると、先頭を歩くレオンとシェリアが遅れてきた俺たちに向かって手招きをする。実はそろそろ時間も遅くなっており、まもなくメインイベントの花火大会が始まろうとしているらしい。花火なんてほとんど見たことないから、すごい楽しみなんだよね。
「花火が楽しみなんて、みんなガキね」
「シャルルも十分子供だよ」
興味ないような雰囲気を醸し出しているが、いつもよりも声のトーンが若干高く、シャルルも心の底では花火を楽しみにしてるのがわかる。それに気づいた俺とウェンディは視線を交わらせ、小さく笑う。
「ここ良さそうだね」
人がたくさんいる場所まで来ると、上空が見渡せる位置で立ち止まる。周りの人たちも花火が打ち上がるのを今か今かと待ちわびているようだ。
「お!!」
しばらく待っていると、一つの光がゆっくりと空に上っていくのに気付く。その光は一番高いところまで来ると、大きな音を立てて花びらの形へと膨らんでいった。
「キレイ・・・」
「うん・・・」
次々に打ち上がる花火を見上げながら、恋人と肩を寄せ合いそれに見惚れる。目映い光を放つ大きな花は、美しいの言葉が似合っていた。
「蛇姫の鱗に来てよかったね」
「そうだね」
前にいる少年たちに誘われて入った蛇姫の鱗。ここに入ったから、こんなに楽しい日々を送れ、こんなにいいものが見れたんだと思う。
(妖精の尻尾の時にも、こういうのがあれば良かったのに・・・)
ただしそれで、以前入っていたギルドでの思い出が消え去る訳ではない。むしろたくさんの思い出があるギルドだからこそ、もっとこうだったならばという想いが込み上げてくるのだった。
後書き
いかがだったでしょうか。
これにてマーガレット祭編終了です。
次は長編ストーリーにそのまま入るか、はたまた日常編を挟むか・・・まだ未定だというね(笑)
とりあえず日常編をしばしやろうとは思いますが・・・あまり長くはやらず、次のストーリーに入ろうと思います。うん、そうしよう。
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