FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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初披露
前書き
話を書いてて気付いたが、カグラの中では完全にシリルが女の子ってことになっている気がする・・・いや、俺的にはどっちでもいいけど。
シリル「どっちでもよくなくないですよ!!」
レオン「一回多いぞ?」
レオンside
「なんだ?あれは・・・」
ガタッと椅子を倒し立ち上がるリオンくん。彼は倒れた椅子に気付いてないのか、ビジョンの中に映る少年の腕に釘付けだ。
「ウェンディ!!あれ何!?」
「ソフィアたちあんなの初めて見たよ!!」
彼と最も親しく、常に行動を共にしている印象がある少女にあの模様の正体を聞こうとそちらを見る天神とセクハラ娘。俺たちも気になったので彼女の方を見るが・・・
「えっと・・・私もわからないよ?」
ウェンディもシリルのそれを初めて見たらしく、友人たちに迫られてビクビクしていた。
「ウェンディも知らないの?」
「じゃああれって・・・?」
二人は幼い頃からずっと一緒だったと聞いている。それなのにウェンディが知らないということは・・・
「最近覚えたばかりの何かってことか?」
シリルが覚えたばかりなのならば、ウェンディが知らないのも無理はない。しかし、この状況でそんな新技に頼る必要性はあるのか?
(よほど自信があるのか?それともただ向こうの動揺を誘おうとしているだけなのか?)
いずれにしても、戦いが始まってみれば答えは出る。シリルのとっておきがどれほどのものなのか、じっくりと観察させてもらおうかな。
シリルside
久々に腕に現れた真っ黒な模様。最初はこんな忌々しいものを刻み込みやがってと怒りを覚えたものだが、今となってはこれほど頼りになる力はないのかもしれない。以前から使っていた水天竜よりも強く、高い攻撃力を得ることができるのだから。
「んじゃ、行きますか」
キッと鋭い目付きでカグラさんを睨むと、彼女もそれに対抗するように、厳しい視線を送ってきた。
「竜魔の・・・咆哮!!」
公の場での初披露の技は最初に敵に破られた魔法の進化版。普通のブレスがさっきあっさり破られてしまったので、今回は威力を上げてのリベンジだ。
「何度やっても同じこと」
それに対しカグラさんはもちろん対抗してくる。そりゃそうだ、だってこの技は敵からしたら一度打ち消すことができた魔法なのだから、今度も打ち破って流れを呼び込みたいといったところだろうか。
ガンっ
ぶつかり合う刀と水と空気の混ざり合った波動。黒髪の剣士はぶつかってきたブレスに全力で刀を押し込み、切り裂こうとする。だが、さっきのブレスと今回のブレスは威力が全然違う。それはおそらく、真っ正面から向き合っているカグラさんが、一番わかっているのではないだろうか?
「くっ」
歯を食い縛り全身全霊で抵抗しようとしていた彼女は、悔しそうな表情を浮かべ、押し出していた刀を引っ込め魔力の塊を後ろへと受け流す。流されたブレスは真っ直ぐに飛んでいき、そびえ立っていた真っ白な四角い柱に大きなへこみを作り出した。
「竜魔の・・・」
「!!」
大ダメージを受けている柱を驚いたような目で見ていた人魚の背後から、上空から攻めるように飛び上がり腕へと魔力を溜める。それに気付いた彼女は振り返って俺の姿を視野に入れるが、それももう遅い。
「翼撃!!」
水と風の巨大な翼を作り出し、隙だらけだったカグラさんを狙い打ち。完全に無防備を晒していた彼女は避けることなどできるわけもなく、その体を見事に強襲していた。
「うああああ!!」
初めて聞いたかもしれない彼女の悲鳴が会場中に響き渡る。魔法の勢いに押され地面を転がっていく人魚。しかし、こちらはそれに安心して攻撃の手を緩めるようなことはしない。
「竜魔の鉤爪!!」
「なっ!!」
転がりが弱まり、立ち上がるための姿勢に入ろうとしたところで顔面目掛けて蹴りを放つ。相手の姿勢ができる前に徹底的に攻める。これが勝利の鉄則だろう。
「このっ!!」
これ以上の猛攻はまずいと悟ったのか、無理矢理な体勢から剣を振るって流れを変えようと試みるカグラさん。しかし、その動きも俺の目にははっきりと見えており、頭を下げて回避すると、そのままアッパーパンチのように下から上へと拳を突き上げる。
「がはっ」
顎を打たれ、脳が揺れ、思わず膝から崩れ落ち地面に手をつける黒髪の人魚。彼女の手にいつも強く握られ、肌身離さずに持っていた不倶戴天が、宙に浮き上がり、地面へと深く突き刺さった。
レオンside
「バカな・・・カグラが・・・圧倒されている?」
信じられないような光景に呆然とし、立ち尽くしているリオンくん。しかし、彼のその反応には全員が納得できる。なぜなら、それだけ予想できなかったことが起こっているからだ。
「シリルすごい!!」
「いつの間にあんなに強くなっちゃったの!?」
互いの手を取り少年の強さに喜びを露にしているのは天空シスターズ。彼女たちは新たな力を駆使して強敵を圧倒する少年の姿に見とれ、惚れ惚れとしていた。
「ウッソォ!!シリルがカグラさんに勝っちゃうの!?」
一方、そのとなりに腰かける少女はまさかシリルがカグラさんに勝ちそうになるとは思ってなかったらしく、驚きすぎて反応が明らかにおかしくなってきている。てかあいつ、さっき「シリルが勝つ」って言ってたよな?あれは社交辞令だったのか?
「どうせならカグラさんの服をエロく切り裂いて――――」
「そういうと思ってた」
ソフィアだったらきっとそんな希望を言い出すと思っていたよ。女性が圧倒されているなら、誰だって抱く希望なんだろうけど、口に出してもいいのはこいつくらいのものだろう。
「カグラちゃん!!頑張れぇ!!」
「負けんじゃねぇよ!!」
「キレんなよ」
余裕綽々な小さき魔術師とは断り、焦っているのは人魚の鱗。その中でも彼女と同じギルドに所属しているネコ耳の女性は、ギルドのエースがなす統べなくやられる姿に動揺を隠しきれずにいた。
「これが・・・シリルの実力だというのか?」
そして、彼女と戦ったことのある銀髪の青年は、カグラさんの実力を把握しているだけに、その場にただ立ち尽くすことしかできないでいた。
カグラside
「竜魔の砕牙!!」
目で捉え切れないほどの脅威的な速度で脇腹を切り裂く小さな竜。シリルと正面で向かい合っていたはずだったのに、彼女は私の後ろに瞬間移動と見まごうほどの速度でやって来ており、彼の通った道筋には浅く、それでいてはっきりと足跡がつけられていた。
ガクッ
脇腹に受けた攻撃のダメージによりその場に膝をついてしまう。こいつ・・・
(あの妙な模様が出てから、異常なまでに速度が上がっている)
今まで戦ってきた誰よりも早く、力も十分といっていいほどのものがある。これは・・・
(とんでもない奴が現れたものだ)
エルザやリオンに並ぶ・・・いや、その二人すら越えていくかもしれない実力を手にした少女に、思わず笑みが溢れる。やられているから笑ってしまっているのではない。ただ純粋に、ここまでの相手と手合わせできることが嬉しくて仕方ない。
「そちらが全力なら、それに答えるのが礼儀だろう」
最初からこの魔法を使っていれば楽に進められたはずなのにそれをしなかった。つまりこの状態には何かしらの欠陥があると考えていいはず・・・しかし、一体どんな欠陥があるのか、微塵も想像ができない。
(一番考えられるのは持久力・・・だったら・・・)
一度飛ぶように後ろへと下がって間合いを取る。使用のタイミングと早く試合を決めようという怒濤の攻めから、シリルが短期戦に持ち込もうとしていると読んだ。だから距離を取って時間をかけていき、持久戦に持ち込んでみせよう。そう思っていた、それなのに・・・
ダッ
開けたはずの距離が、一瞬にして埋められていた。
「何!?」
間髪空けずに間合いを詰めて攻撃を繰り出すそれは、私の得意とする攻めと全く一緒。しかし、真似たというよりも、こいつの場合は体が反応したといった感じだろうか?
「竜魔の顎!!」
「うっ!!」
両手を握り合わせ、横に振るうように腹部を叩きつけてくる水竜。しかし、こちらもそれになんとか耐え、踏みとどまったその場から剣を振るう。
「はぁっ!!」
「うわっ!!」
ようやく捉えることができたシリルの体。ここから体勢を整えて一気に流れを引き戻したい。
「怨刀・不倶戴天・剛の型!!」
後ろに押された少女目掛けてジャンプをし、上から重力も利用して攻撃を叩き付ける。
「わっと!!」
私の怨刀がぶつけられる直前、横に体を移動させギリギリで回避する少女。おかげで私の攻撃は空振りに終わったが、まだこれで攻めを止めることはしない。
「怨刀・不倶戴天!!」
地面に叩きつけた刀を腰に戻し、彼女が逃げた方向に向けて姿勢を作る。
(この一打で決めて、勝負を終わらせる!!)
隙を与えたらまた向こうの猛攻が始まってしまう。ならば、相手が反撃できないくらいの攻撃を仕掛けるのが一番。
「人魚の型!!」
刀を鞘に納めたまま、少女の脇腹を目掛けて一直線に剣を振るう。今の私の一番強い魔法。これが決まれば、いくらシリルでも一溜まりもない。
ガシッ
「!?」
完全に突き刺さるはずだった一閃。私の全力を込めたその一太刀をなんと、目の前の水髪の少女は、魔力を纏わせた右手でガッシリと受け止めたのだ。
「バカな・・・」
捕まれた怨刀を引き戻そうと力を入れるが、彼女の掴む力が強すぎてびくともしない。ただその場に留まることしかできない刀を前に、驚くことしかできない。
「結構響きますね、今の攻撃」
ただし、受け止めた少女も相当の痛みを感じたらしく、苦痛に顔を歪めている。もしかしたら抜刀していたら結果も違かったのかもしれないが、今となっては後の祭りだ。
「でも、これならなんとかできそうです」
不敵な笑みを浮かべると、持っていた刀を投げるように放すシリル。その際私も刀を離さないように力を入れて持っていたため、不意に投げられバランスが崩れてしまった。
「竜魔の・・・咆哮!!」
彼女に半身になっていたことで放たれた魔法に対応する術がない。口から発せられた攻撃を、ただその身で受けることしか私にはできなかった。
シリルside
「くっ・・・あぁ!!」
一瞬耐えたかのように見えたカグラさんだったけど、やはり防御の姿勢も作ることができていなかったこともあり、あっさりと吹き飛ばされていく。
(でも、ここまで力が出せるなんて)
正直なことを言うと、滅悪魔法を解放してもカグラさんとは互角になるのが精一杯だと思っていた。それなのに、いざ蓋を開けてみると俺が彼女を圧倒している。これは嬉しいことでもあるし、何よりも自信になる。
「よしっ!!」
徐々にテンションが高まっていき、戦っているのが楽しくなってきた。この無双状態をいつまでも味わっていたい。そんな想いが込み上げてくる。
(でも、いつまでもそんなことをしているわけにもいかない)
第二魔法源のおかげで魔力が増し、水天竜モードが長時間できるようにはなった。でも、二つの魔法を組み合わせているこの状態がどれだけの時間できるのかはよくわかっていないし、長期戦を行うのは少々勇気が必要だ。それに、いつカグラさんに逆襲されるかもわからないので、決めることができる時に勝負を決してしまうべきだ。
「竜魔の・・・」
こちら側に体を向けることができていない女性の弱点がつけられている部位に狙いを定め、意識を高める。彼女も自分のそれが狙われているのはわかっているようだったが、もうどうすることもできない。
「鉄拳!!」
強く握りしめた拳に全魔力を集中させ、解き放つ。全身全霊で打ち出されたそれは、カグラさんの空いている左手甲を見事に打ち抜き、弱点バッジを粉砕した。
『カグラ選手!!弱点部位へのダメージにより退場です!!従って《5スペルサバイバル》!!勝者!!小さき魔術師!!』
プレイヤーを撃破したことによりアナウンスされる勝者の名前。それは同時に、この大会の優勝者を告げるものでもあった。
『よって今年度のマーガレット祭ゲームトーナメント大会優勝は、小さき魔術師です!!』
声にできない喜びを噛みしめ、高々と両手をあげて歓喜のポーズを決める。それまで遮断されていた会場中の観客の大歓声が、場内を包み込んだ。
第三者side
「やったぁ!!勝ったよシェリア!!」
「うん!!シリルすごかったね!!」
勝負の決着を見届けたのと同時に、歓喜の声を上げながら抱き合う少女たち。その隣にいる銀髪の少女はそれを羨ましそうに見ていたが、抱き合っている二人はセクハラを受けたくないため決して交ぜることはしない。
「すまん・・・やられた」
喜びを分かち合っているウェンディたちのいる待機部屋に、たった今転送されてきたカグラが申し訳なさそうに仲間たちに頭を下げる。
「気にするな。向こうの作戦勝ちだろう」
「オオーン」
「一度は仕留めたわけだしな」
「カグラちゃんは頑張ったよ!!」
落ち込むカグラに優しく声をかけるリオンたち。それを聞いたカグラは、まだ納得のいかないような表情だったが、気にしても仕方ないと割り切ることにした。
「早くシリルのとこに行こっ!!」
「うん!!」
「こうなったらシリルを抱き締めてやる!!」
唯一フィールド内に残っている少年のもとへとかけていく三人の少女たち。しかし、彼女たちと共に戦っていた一人の少年だけは、魔水晶ビジョンの前から動こうとしない。
「どうした?レオン」
「行かないのか?」
ウェンディたちが真っ先に飛び出していったため、敵であったリオンとユウカが心配し声をかける。だが、少年はビジョンに映る人物を見据え、嬉しそうに口角を上げた。
「やっぱりシリルじゃなきゃ、ダメなんだな」
誰にも聞こえないほどの小さな声でそう呟いたレオン。彼の声が聞こえなかったリオンたちは、訝しげな表情を浮かべる。
「さて、食べ放題食べ放題っと」
何事もなかったかのように、当初の目的であった食べ放題券をもらおうと仲間たちの元へと駆けていく氷の神。こうして、大会は無事に全日程を終了したのだった。
後書き
いかがだったでしょうか。
お遊びで始めたマーガレット祭のゲーム大会も無事に終了です。
予定としては次でマーガレット祭編を終わらせようと思ってます。どうなるかは気分によって変わりますが・・・
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