聖闘士星矢 黄金の若き戦士達
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
468部分:第六十五話 魔性の杖その七
第六十五話 魔性の杖その七
「あの者とはローマで会った時から闘うことを予想していました」
「左様か」
「はい、だからこそ」
さらに言うリゲルだった。
「オーストラリアに喜んで行かせてもらいます」
「ではすぐに行くのだ」
「では」
「残るは二つとなった」
エリスはサリアに告げてから今度は封印のことを話したのだった。
「その残る二つのうちの一つを今より解く」
「全ての封印が解かれてから」
「まさに」
「いや、それより先にだ」
エリスは八大公達の上気してきた声に対して制する声をかけてからまた述べた。
「あの者達を呼び戻さなければならん」
「あの方々をですか」
「それからですか」
「左様。アーレス様がお戻り頂くのはそれからよ」
こう言うのである。
「わかったな」
「はい、では」
「我々はその時にも」
「あの者達がここに戻りアーレス様が御自身の玉座に戻られる」
エリスの今の言葉は明らかに両者を分けたものであった。その言葉と共にエリスは静かに言うのであった。今それをである。
「その時こそトラキアの、我等の勝利の時なのだ」
「はい、では」
「その時こそ地上を」
「戦乱により全てが支配される世界」
エリスの青い身体に小宇宙が沸き起こっていた。それは狂闘士達のそれと同じ赤い禍々しい小宇宙だった。その小宇宙は八大公達のそれよりも強大なものであった。
「人はその中で生きることになるのだ」
「互いに争い殺し合い」
「そのうえで己を高め合う」
「我等の理想とする世界が」
「この地上に生まれることになるのだ」
まさにその世界だというのである。
「はい、それでは」
「その世界の為に」
「アーレス様にお戻り頂く。よいな」
こう告げてそのうえでリゲルをオーストラリアに向かわせる。その頃暗闇の中で姿の見えぬ、だが恐ろしいまでに強大な小宇宙を持つ者達がいた。その彼等が何かを話していた。
「いよいよだ」
「そうか、いよいよか」
「いよいよなのだな」
その暗闇の中で言い合っていた。
「我等がこの世界に再び姿を現わす時だな」
「その時が来るのだな」
「エリス様が今動いて下さっている」
エリスの名前が出ていた。
「狂闘士達を使ってだ」
「有り難い」
「我等の為にそこまでか」
「そして我等が出ればだ」
さらに話す彼等だった。
「アーレス様の御降臨も可能だ」
「そしてその時こそだな」
「我等の世界が生まれるのだ」
「アテナ、そして聖闘士達」
アテナと彼等の名前が出た時には憎しみが涌き出ていた。
「あの者達を今度こそだな」
「いや、アテナはこの時代にはいないそうだ」
「いないのか」
「あの女神は」
「そうだ、いない」
こう話される。
「だが。黄金聖闘士達がいる」
「あの者達がか」
「いるというのか」
「あの時と同じだ」
それは同じだというのだった。声の中の一人がだ。
「全て揃っている」
「では教皇もまた」
「あの者か」
「そうだ、あの者だ」
彼だというのであった。彼等は。
「あの者があの時と同じくだ」
「ふふふ、面白い」
「全てはあの時と同じか」
「ならば次こそはだ」
声達はその言葉を受けてだった。明らかに笑った。血に塗れた含み笑いであった。
「あの者達を一人残らず」
「倒してみせよう」
「教皇」
シオンのことであるのは言うまでもない。
「あの者もだ」
「今度こそな」
「そうだ、今度こそだ」
声にさらなる憎しみが宿っていた。まるで燃え上がるような。
「倒してやろうぞ」
「流血の中に沈めてやろう」
「己の血でな」
闇の中で言い合う彼等であった。それは怒りではなく哄笑であった。その言葉を闇の中で出していたのであった。
第六十五話 完
2009・10・30
ページ上へ戻る