エクリプス(機動戦士ガンダムSEED編 )
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第23話 果てなき輪舞(ロンド)
Side マリュー・ラミアス
ノイマン
「驚きました。もう作業に掛かってくれるとは。」
ナタル
「ああ、それは本当にありがたいと思うが。」
マリュー
「おはよう。」
パル
「おはようございます。」
ナタル、ノイマン
「おはようございます。」
マリュー
「御苦労様です。」
ナタル
「既にエクリプス社からタチコマ達が到着し、修理作業に掛かっております。」
マリュー
「ええ、ヤマト中尉は?」
ナタル
「先刻、迎えと共に工場の方へ。」
マリュー
「そう、ありがと。」
ナタル
「…。」
マリュー
「ん、なに?」
ナタル
「いえ、ではこの際に、内部システムの点検を、徹底して行いたいと思っておりますので。」
マリュー
「…お願いね。でも3日間は休養よ、ウズミ様からオーブへ上陸の許可もあるし。」
Sideout
Side エリカ・シモンズ
シモンズ
「以上の経緯で、モビルスーツが、その概念を発案した者達の、予想を超えたポテンシャルを有していたことは明白である。
レドニル・キサカ一佐の報告に依れば…、記録ポーズ。通話チャンネルオンライン。
はい。はぁい、ええそうよ。お母さんはまだ仕事。
帰るのはリュウタが寝てからになっちゃうわ。晩ご飯はお父さんと食べてちょうだいね。
ふふ、分かってます。今度のお休みは大丈夫だから、お母さん約束破らないでしょ、滅多に?
うふふ、はいはい。それじゃぁ、お父さんの言うこと聞いて、ちゃんとお風呂入って歯磨いて寝るのよ。
はい、じゃあね。
通話チャンネルオフライン。」
インターフォンの呼び出し音が鳴った。
シモンズ
「どうぞ。」
作業員
「シモンズ主任。コウキ・イチジョウさんをご案内致しました。」
光輝
「こんにちは、エリカ・シモンズ主任。
そろそろ報告書を書かれると思い、お尋ねしました。」
シモンズ
「あら丁度、始めたところよ。」
光輝
「丁度いい。L.A.I社でお話しましょう。
ご案内します。報告書の原案を作って置きましたので、疑問点はお答えします。」
シモンズ
「まあ、手回しの良い事ね。」
Sideout
光輝とシモンズはモルゲンレーテの工場へ来た。
Side エリカ・シモンズ
シモンズ
「ここはモルゲンレーテの工場よ。」
光輝達はエレベーターに乗る。
光輝
「はい。しかし、複数のボタンを同時に押すとL.A.Iに繋がります。」
シモンズ
「いつの間に。」
光輝
「ウズミ様の許可は取ってあります。」
シモンズ
「ここは?」
光輝
「ここはモルゲンレーテの新工場です。
L.A.Iのライセンスを受けた、モビルスーツやバルキリーの製造工場です。
階下はL.A.I社のブラックボックスを製造に必要な、
工場や潜水艦の地下ドッグになっています。
必要な資材は海底資源プラントから輸送潜水艦で搬送されています。
細かな説明は後にして、シモンズ主任の新しい部屋に行きましょう。」
シモンズ
「私の部屋まで…。あれ、部屋は装備品が揃っているけど、コンピュータやモニターがないわね。」
光輝
「学習システムで全て行えるから必要ないよ。説明するより使って見た方がいい。
机の上に置いてあるヘルメットを被って、バイザーを降ろして、
『学習システムロード』と言って見て。」
シモンズ
「学習システムロード。
…
…
凄いはね、これは。」
光輝
「学習システムは、リーディングとプロジェクションというESP能力を元に開発されている。
一方で、VR機能はでは五感の神経信号を読み取り、書き換えている。」
シモンズ
「学習システムでは、直接脳にイメージとして、VR機能はパラレル信号を送受信するのね。」
光輝
「流石だね。その為にVR機能は現実世界と同じ速度でしか学習出来ない。
AIを講師にしたら現在より効率的だな。
仮想現実で実体験に等しい学習ができるのだから。
それより学習システムで、会議じたで報告書を書こうか。」
シモンズ
「分かったわ。
レドニル・キサカ一佐の報告に依れば、地球連合のモビルスーツの威力は圧倒的の一語に尽きる。
しかしながら、そのポテンシャルを余すところなく引き出すためには、パイロットの能力に依存するところが大である。
GAT-X105ストライクを操縦するキラ・ヤマトの一連の戦闘記録は本件の論拠となっている。
オペレーションシステムの見直しが必要であることは、早くから指摘されていた。
基本的にコーディネイターの能力がナチュラルのそれを上回るのは避けがたい事実であり、
インターフェイスの性能が同じならば、彼らの方が機体のポテンシャルをより有効に引き出すことが出来るのは明々白々なことである。
ナチュラルがコーディネイターと同等の威力をモビルスーツに発揮させようとすれば、
それだけ優れたソフトウェアが必要となる。
しかし、緊急事態とはいえ、その作業をコーディネイターの手に委ねなければならなかったことは、皮肉と言うしかないだろう。
結局、地球軍は、コーディネイターと戦う為の兵器を開発するのに、
その敵であるはずのコーディネイターの力を借りなければならなかったわけだ。
初めて戦場にモビルスーツを送り出したプラントの技術者達は、
宇宙での戦いを制する兵器こそが戦局を支配すると信じていた。
それは、戦闘機よりも優れた機動性を発揮し、戦艦に匹敵する火力を有し、
戦車よりも強靱な装甲で生き延びることの出来る兵器でなければならない。
その主張は、大筋において正しかった。
ただ一点だけ、彼らが見誤っていたことがあった。
それは、モビルスーツが有効なのは、宇宙に限らないと言うことだ。」
光輝
「地球でのモビルスーツ運用には疑問がある。
せめてストライク並みの機動力か、イージスの様な変形機構を持っていないと、只の機動力に優れた戦車にしかならない。
あの重量は問題だ。宇宙空間なら自重を支えなくても良いが地上では2足歩行では不利だ。
2m、80kgの人間が10mの身長とするならば、体重は5倍の400kgではなく、5の二乗の20トンだ。」
シモンズ
「それはそうね。
ザフトはストライクを積んでヘリオポリスを脱出した、
地球軍の宇宙戦艦アークエンジュエルを執拗に追撃した。
その結果アークエンジェルは地球への降下に失敗し、ザフト勢力圏内への着陸を余儀なくされる。」
光輝
「蛇足だが、初めからザフト勢力圏内への降下の可能性があった。
第8艦隊のハルバートン提督を守る為だ。
ザフト勢力圏内へ降下した場合、アークエンジェルはザフト軍を陽動して、
ザフト軍の目を向けさせる。
ハルバートン提督はその隙に別便でアラスカに設計と運用データを届ける。
今頃、アラスカではOS開発に四苦八苦だろう。
ミスリルは地球軍に加担しない。」
シモンズ
「うふふ。
ザフトの追撃を逃れることには成功しているが、その理由の多くは、
ミスリルのバルキリーと、キラ・ヤマトとストライクの奮戦に依るもと思われる。」
光輝
「アークエンジェルは目立っていないが、クルー達は一線級だよ。
学習システムでトレーニングしていたらなぁ。」
シモンズ
「あら、地球軍に加担しないのでわ?」
光輝
「地球軍の上層部だよ。
今のアークエンジェルのクルー達は、素直に上の命令を聞かないよ。」
シモンズ
「そうなる様に仕向けたんででしょ。
アンドリュー・バルトフェルド。砂漠の虎と称されるザフト切っての名将である。
砂漠に虎が居るうのかどうかはさて置き、バルトフェルドが指揮する部隊は、
陸戦用モビルスーツ、バクゥを以て、アークエンジェルを攻撃した。
しかしこの危機をキラ・ヤマトは、ミスリルの作戦があったとは言え、
遂には、バルトフェルド自信が乗る新型モビルスーツ、ラゴゥまでをも、倒すことに成功する。」
光輝
「単なる砂漠なら問題ないが、あそこは廃坑だらけで、
ザフト軍は重しのモビルスーツまで用意してくれた。
プラントを焚きつけた甲斐がある。」
シモンズ
「えっ、何をしたの?」
光輝
「パトリック・ザラが隠蔽していた情報を、民衆と評議会で暴露した。
いつの時代にもいる扇動政治家は…。」
シモンズ
「アークエンジェルは、紅海に進出した。しかし、ザフトは海上にも網を張り、待ち受けていた。
航空用モビルスーツ、ディン。水中用モビルスーツ、ゾノ、及びグーン。
対するアークエンジェルは、ストライクに加えて、支援戦闘攻撃機、スカイグラスパーを投入し応戦する。
スカイグラスパーの支援により、地球上でのストライク運用は、飛躍的に柔軟且つ、機動的なものとなった。」
光輝
「確かにスカイグラスパーとの組み合わせは面白いアイデアだな。
第8艦隊のハルバートン提督らしい柔軟な思考が実を結んだ結果だ。
少ない予算で効果的な方法である。彼の言葉を借ると
『ザフトは次々と新しい機体を投入してくるのだぞ?
なのに、利権絡みで役にも立たんことばかりに予算を注ぎ込むバカな連中は、
戦場でどれほどの兵が死んでいるかを、数字でしか知らん!』
との事だ。
彼なら宇宙空間での運用に適切な判断をしてくれるだろう。」
シモンズ
「ともあれ、キラ・ヤマトとストライクの組み合わせは、ここでも驚くべき順応性を発揮することになる。
キラ・ヤマトの能力は、明らかに、他の一般的コーディネイターパイロットの其れを凌いでいる。
推測の域を出ず、専門外のことでもあるが、以前一度だけ学会誌に発表されて論議を呼んだ、
スペリオール、エヴォリューショナリー、エレメント、ディスティンドファクターを想起されたい。
可能であれば、キラ・ヤマトに対しては、継続した精密且つ徹底的な調査分析を…。
最終項目を削除。」
光輝
「流石だな、SEED因子の事を知っていたとわ。
脳のリミッターを解除して、瞬間的に爆発的な力を出す。
ただ一時的なものに過ぎない。リミッターを解除すると体への反動が大きい。
キラ君はその辺を教えてある。彼ならリミッター解除を2分程度にコントロール出来ている。
ナチュラルでも武闘家なら長い年月を掛けて達する事ができる。
キラ君はヘリオポリスを出て、わずかな間にその域に達した。
私の指導があったとしても、他のコーディネイターより優れている。
後これが今まで戦闘してきたモビルスーツの弱点と攻略法だ。」
シモンズ
「呆れたわね。ザフト軍のモビルスーツの設計図まであるわ。」
光輝
「シモンズ主任にはL.A.I社の技術者と兼任して貰うよ。
これが新しいモルゲンレーテ社の社員証だ。L.A.I社の社員証にもなるようにチップを埋め込んである。
それと学習システムの機密レベルをL.A.I社の技術者と同じにしてある。
これでL.A.I社の人工知能コンピュータを活用できる。
仕事は増えるが人工知能の恩恵で仕事は楽になるさ。
試しに今の会話をオーブの機密レベル1で報告書にまとめてみると良い。」
シモンズ
「あら、簡単に出来たわ。
…
内容も申し分ない。」
光輝
「ウズミ様には別途、報告書は送ってあるので心配ない。」
シモンズ
「そう言えば、オーブが200万人分の緊急支援を表明したわね。
貴方の差し金でしょう。」
光輝
「この映像を見てくれ。」
シモンズ
「これは、かっ火星?」
光輝
「正解、火星だよ。
火星に合成食材の製造プラントと資源プラントを建設中だ、
オーブに寄贈した輸送潜水艦の設計図をロードしてくれ。」
シモンズ
「何よこれ…。
ワープ航法、重力制御、慣性制御…。」
光輝
「ワ-プはフォールドと呼んでいる。同様に通信もフォールド通信で火星ともリアルタイムで通信出来る。
ミスリルで算出した、地球の自転速度と公転速度だ。」
シモンズ
「あら、地球の軌道がズレているわね。」
光輝
「今は修正可能な範囲だ。目に見えて狂ってはいない。
プラントの建設資材などを宇宙に送っているんだ。
地球が軽くなり、自転や公転が変わるのも無理のない話さ。」
シモンズ
「それで火星から資源を輸入するのね。」
光輝
「それも一理あるが、海底資源は次の世代に残して置きたいからな。
長期的に見て、火星の軌道を地球に近付ける。
火星は第二のフロンティアとなる。」
シモンズ
「呆れたわね。
火星を開発するには、ナチュラルとコーディネイターが協力するしかないのね。」
光輝
「プラントには私の論文を送ってある。
そのファイルのタイムスタンプには地球の公転周期と自転周期、重力値を混ぜてある。
それを見つけた時、プラントは気付くのさ、地球と戦争していられないと。」
シモンズ
「それだけじゃないでしょう。」
光輝
「文化的な孤立を選ぶか、選択肢を用意してある。
文化は1世代で成し得ない物である。
それに気付くとコーディネイターは地球と共存共栄を選ぶ派閥に吸収される。」
L.A.I社員
「コウキ殿。ルカ・アンジェローニ殿をご案内致しました。」
光輝
「ありがとう。通してくれ。」
ルカ
「失礼します。」
光輝
「紹介するよ。
こちらはL.A.I社の社長のルカ・アンジェローニだ。
で、こちらがモルゲンレーテとのパイプ役になってもらうエリカ・シモンズだ。」
Sideout
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