Three Roses
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第二十一話 地位と力その五
「だが、先程出たが」
「婚姻で国を乗っ取る」
「そうしてくるからですね」
「これ以上力は持たせられない」
「そうですね」
「そうだ、軍を握られた」
既にというのだ。
「ならばだ」
「これ以上は、ですね」
「大臣の椅子を渡せない」
「そうですね」
「宰相、内外の大臣の席はだ」
王は側近達に言った。
「新教徒、もっと言えばマリー王女の派から出す」
「わかりました、それでは」
「その様に」
「次の宰相はロドネイ公だ」
王は誰をどの役職に据えるのかも言った。
「内大臣はグラッドソン大司教、外大臣はデューダー卿だ」
「お三方ですか」
「マリー様の側近中の側近であられる」
「あの方々にされるのですね」
「そしてキャスリング卿もだ」
残る腹心である彼もというのだ。
「然るべき座に就けよう、だがこの三つを手に入れると」
「それ以上は、ですね」
「旧教徒側も許さない」
「そうなりますね」
「侍従長か財務大臣か」
この二つのうちいずれかをというのだ。
「狙ってくるだろう」
「宮廷か予算か」
「そのどちらかをですか」
「狙ってきますか」
「そうして動いてきますか」
「そうしてくるだろう」
おそらくという言葉であったがだ、王はその読みを話した。
「特に太子はな」
「ロートリンゲン家の力を使われ」
「そうされてきますか」
「あの方は次はそうされる」
「そうなのですね」
「あの太子は思った以上に切れ者だ」
こうも言った王だった。
「政治がわかっている」
「確かに、あの方は」
「かなりの切れ者です」
「表向きは温和で穏健ですが」
「隙があれば動かれる」
「好機を逃すことはないですね」
「帝国の紋章は鷲だ」
王はまた帝国、太子の母国の話をした。
「それも双頭のな」
「その双頭の目で常に状況を見て」
「そして動く」
「それが帝国であり、ですね」
「太子であられるのですね」
「そうなるな、噂は聞いていた」
実は太子はこの国に入る前から中々の切れ者として知られていた。帝国の後継者として相応しいとまでだ。
だがだ、王がその目で見るとだったのだ。
「しかし噂は噂でだ」
「真実ではなく」
「その真実は、ですね」
「予想以上だった」
「そうでしたね」
「そうだった、彼はだ」
また話した王だった、太子について。
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