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ドリトル先生の名監督

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第十二幕その十一

「馬に乗ってお散歩はしても」
「それ以外はね」
「全部苦手だったから」
 それこそスポーツはどんなものでもです。
「陸上競技も器械体操も球技も」
「水泳もね」
「全部全く苦手だったでしょ、ビリヤードだって」
「ビリヤードはスポーツなのかな」
「そう言う人もいるわよ」
 実際にというのです。
「ビリヤードもね」
「球技としてだね」
「そう、それでそのビリヤードもね」
「僕は出来ないよ」
 そちらもというのです。
「実際にね」
「だからね」
「ああした洒落た遊びもね」
 笑って言う先生でした。
「縁がないね」
「とにかくスポーツはからっきしだから」
 先生は、というのです。
「その兄さんが監督さんね」
「そうだよ」
「それをするなんてね」
「意外過ぎるんだね」
「ええ、どうしようもない位にね」
 それこそというのです。
「実際にそう思ってるわ」
「けれど縁があってね」
「監督さんしてたのね」
「一時期ね」
「凄いことね、日本に来てから」
 その時からというのです、先生は。
「かなり変わったわね」
「色々とだね」
「そう、色々とすることになったわね」
「学会にも顔を出してるしね」
「手術もしてるでしょ」
「うん、医師としてもね」
「本当に変わったわ、イギリスにいた時は閑古鳥が鳴いている病院にいるだけだったのに」
 それでも幸せなことは幸せでしたが。
「それが今はね」
「うん、この通りね」
「色々と学会に出たり旅行もして」
「監督もしたよ」
「本当に変わったわね」
 しみじみとして言うサラでした。
「日本に来てよかったかしら」
「そう言うんだ」
「だってそれこそよ」
 まさにというのです。
「兄さん自身は変わっていなくても」
「それでもだね」
「環境が変わったわ、後はね」
「結婚?」
「だって力士さんもよ」
 サラもお相撲を観戦しています、そのうえでお話します。
「この人達も結婚してるでしょ」
「うん、そうだよ」
「むしろいい家庭を築いてこそ」
「いい力士さんになれるっていうね」
「だったらね」
「僕も結婚して」
「イギリスにいる時よりもずっと縁があるでしょ」
 先生のお顔をお相撲よりもじっと見ての言葉です。
「そうでしょ」
「ははは、ないよ」
「どうだか、兄さんの鈍感さは尋常じゃないから」
 このこともよく知っているサラです。
「気付いていないだけでしょ」
「いや、僕のことは僕が一番よくわかってるよ」
 先生はこう言いますが。
 動物の皆は首を横に振ってトミーと王子も先生の言葉を聞いてどうだかというお顔になっています、そしてサラも。
 そう言った先生にです、こう言いました。
「それは絶対にないわ」
「絶対に?」
「ええ、ないわ」
 それこそというのです。
「間違ってもね」
「そう言うんだ」
「伊達に兄さんの妹じゃないわ」
 それこそというのです。
「それ位はわかるわよ」
「厳しいね」
「厳しいんじゃなくて知ってるのよ」
 先生をというのです。
「だからこう言ったのよ」
「そうなんだ」
「全く、兄さんなら」
 先生を知っているからこその言葉です。 
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