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IS~夢を追い求める者~

作者:かやちゃ
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第2章:異分子の排除
  第37話「それぞれの解決」

 
前書き
またもや日常回。
話のネタが思いついたんや....許しておくれ...。

まだもう一話あります。 

 







       =桜side=





「第一回、俺主催お料理教室ー!」

「わー!」

 俺の言葉にマドカちゃんが乗ってくれる。
 なお、秋十君は呆れ顔で、ユーリちゃんは元々こういうのに乗れない性格なので無反応。

「...何卒よろしくお願いします。」

「おう。」

 ちなみに、料理教室を開いたの理由はセシリアが原因だ。
 ...と言っても、“料理を教えてください”という頼みを聞いただけだけど。

「それにしても、塩と砂糖を間違えるなんてベタだねー。」

「うっ....お恥ずかしい限りですわ...。」

 そう。今度は塩と砂糖を間違えて料理を失敗してしまったらしい。
 だから、これ以上失敗したくないように、俺たちに助けを乞うてきた。

「まぁ、その間違いに関しては、今度から少しだけ味見して確かめればいいさ。後はラベルを貼っておくとか。」

「そうしておきます...。」

 やっぱり女子として全然料理できないってのは堪えるんだろうな。
 だいぶ落ち込んでいるし、さっさとやっていこうか。

「まず、料理ができない人の特徴は大きく分けて二つある。何かわかるか?」

「え...?えっと.....。」

「....分量や手順とか...単純に工程をミスするのと、変にアレンジを加える...ですか?」

「正解だ秋十君。」

 と言っても、俺の自論だけどな。

「両方を持ち合わせている人もいたりするけどな。まぁ、どちらにしても、まずはレシピ通りの料理で練習した方がいい。と、いう訳で、今日の夕飯は自分たちで作った物限定な。」

「何が“と、いう訳”なんですか!?確かにその方が食費も浮きますけど。」

 まぁ、いきなり言ったもんな。驚かれるのも無理はない。

「何回か繰り返して作るからな。それらも食べる事を考えると、この際夕飯も一緒にしてしまえばいいと思ってな。」

「確かにそうですけど...。」

「俺も一緒に作るから大丈夫大丈夫。」

 万が一夕食と呼べるほどのモノが作れなくても俺が作れば解決するし。

「まぁ、まずは手頃な奴からだ。」

「は、はい!」

 手軽に作れてあまり量も多くない料理を選択し、それを教えていく。



「...で、そこで塩で味付け...ってそれは砂糖だ!」

「ああっ!あ、危なかったですわ...。」



「料理って難しいですわね...。」

「何、慣れれば楽しめるものさ。自分用でしかないのであれば作業に成り下がるが、誰かに食べてもらうと考えれば、必然と気持ちも籠る。」

「なるほど....。」



「....で、これで完成だ。」

「...何とか納得のできる出来栄えになりましたわ...。」

 数十分後、一通り教え終わり、料理も上手く完成した。
 何回か危なっかしい所もあったが、そこは俺がフォローした。

「よくアレンジとか隠し味とかあるけど、それはもっと料理に慣れてから試すようにな?まずは基本を覚えて、いきなり大きくレシピを変えないように。」

「はい!」

 最初の方は何度か自分なりにアレンジしようとしていたからな。
 そういう所もちゃんと教えておく。

「所で....ユーリさんたちは....。」

「あー...ちょっと何人か様子を見に来たみたいでな...。おやつになるものを作ってもらっている。」

 主に本音など料理好き(食べる的な方で)の女子が集まっている。
 家庭科室を借りているので、ユーリちゃんと秋十君に料理を任せている。
 マドカちゃんは集まった女子をまとめているな。

「....チヴィットというのはこういう事もできるんですのね。」

「IS学園に来る前はユーリちゃんの料理を待機状態で何度も見てきたからな。どういうことをすればいいのかぐらいは分かっているさ。」

 セシリアが言うのは、シュテルやレヴィが、材料や調理器具を運び、ディアーチェがフライパンを扱っている事だ。
 ちょこちょこ動き回っているので、見学に来た女子に注目されている。

「とりあえず、食べてみな。」

「は、はい。」

 恐る恐るセシリアは自分が作った料理を口にする。
 何せ二度も意気込んで作った料理を失敗しているのだ。恐れるのも無理はない。

「....美味しい...。」

「だろ?変に手を加えず、レシピ通りに作れば普通に美味く作れる。」

 これで少しはセシリアも料理に自信がついただろう。

「さて...手伝おうか?」

「大丈夫です!シュテルたちも手伝ってくれてますので...!」

「桜さん、もしかして本音達が来るの予想してたんですか!?」

 見学しに来た女子たちに振舞う料理を作りながら、秋十君がそう聞いてくる。

「...まぁ、家庭科室を借りているからなぁ...。誰かが来ると予想して、その時のための材料は持ち込んでおいたさ。」

「...確かに容易に予想できますね...。...っと、完成だ。」

 完成した料理を片っ端から配っていくユーリちゃんと秋十君。
 ちなみに、作ったのはホットケーキやクレープなど、簡単なものだ。
 ...さすがに何人来るか分かってないのに手の込んだものは作れない。

「全く、どうしてこうなったんだか...。」

「良い匂いがしたからね~。つい来ちゃったんだよ~。」

「...まぁ、予想して準備していた俺も俺だが。」

 クレープを頬張りながらいう本音に、俺は溜め息を吐く。
 ...どうでもいいが、ほっぺにクリームがついてるぞ?

「....しゃあねぇ。用意した材料、全部使いきってやるよ。」

「やった~!」

 結構持ってきておいたからな。
 元々、これが終わったら知り合いには配る予定だったし。
 ちなみに、材料費は全部俺持ちだ。別に困るような事ではない。





「今日は本当にありがとうございました。」

「どういたしまして..っと。どうだ?自信はついたか?」

「はい!」

 俺たちによるプチパーティが終わり、セシリアは今日の事についてお礼を言う。

「じゃあ、今日はもうお開きとするか。」

「片づけも終わりましたよ~。」

 使った器具は全てちゃんと洗い、元に戻しておいた。
 ユーリちゃんが片づけが終わった事を知らせに来たので、俺たちは家庭科室を後にした。













       =out side=





「はぁっ!」

「っ!」

     バシィイイッ!!

 シグナムの振るう竹刀が、箒の竹刀を打つ。
 竹刀と竹刀がぶつかり合う音が響き、すぐさまシグナムは間合いを離す。

「せぁっ!」

「ぐっ...!」

 そしてすぐさま反転、また攻めに入り、横薙ぎに竹刀を振るう。
 それを箒は上に受け流すように弾くが、その威力に後退してしまう。

「はっ!」

「ぐ、ぁっ...!」

 その隙を見逃さず、シグナムはさらに踏み込み、一閃。
 箒の竹刀を弾き飛ばしてしまう。

「....勝負あり、だ。降参だ。」

「そうか...。」

 竹刀を突きつけられ、箒は敗北を認める。
 そして、二人とも防具を脱いで一息つく。

「....剣道ではない剣...やはりやりづらいな...。」

「すまんな。私にはどうも剣道は合わなくてな。」

「いや、いい経験になっている。ありがとう。」

 シグナムと箒は、仲良くなっていた。
 トーナメントの一件以来、何かと気が合ったようで、気が付けばこうなっていたらしい。
 今では、互いに剣道場で競い合う仲になっている。

「私もまだまだ未熟だと思わせられるな。」

「剣の道は、いくら進んでも未熟なままさ。」

「...そうだな。」

 レベルが高い試合なため注目されているが、それを気にする事もなく二人は笑いあう。

「...そういえば、篠咲秋十には会わないのか?」

「う...む...まぁ、な...。面と向かって談笑しろと言われれば気まずくなりそうでな...。」

 洗脳が解けても、箒はあまり秋十と話していない。
 それどころか、洗脳が解けた事も伝えれていないのだ。

「そんな事もあろうかと!」

「「っ!?」」

 そこへ突然、桜が現れる。
 まるで束のような出現だったため、思わず二人は竹刀を振るう。

「危なっ!?いや、俺が悪かった!」

「っ、驚かせないでくれ...。」

 竹刀を素手で受け止め、何とか事なきを得る。

「...なんの用ですか?」

「あれ?なんで束みたいなセメント対応?...んん、明日の放課後、秋十君と試合をしてもらおう。もちろん、剣道でな。」

「は...えっ!?」

 いきなりすぎるその提案に、思わず変な声を出してしまう箒。

「箒ちゃんも剣道で語った方がやりやすいだろ?じゃ、そゆことで~。」

「え....え...?」

「...もう行ってしまったぞ?」

 いう事だけ言って桜はどこかへ去っていった。

「まさに嵐だな...。まったく...。」

「こ、心の準備が....。」

 溜め息を吐きながら、シグナムは箒に話しかけようとした。

「し、シグナム!私はどうすればいいのだろうか!?」

「っ、お、落ち着け...!話はそれからだ。」

 逆に詰め寄られ、驚くシグナムだが、何とか箒を宥める。

「...逆に考えればいい。これを機に、仲直りできると。」

「し、しかし、今の私ではちゃんとした試合ができるかどうかすら...。」

 先程の試合の威勢はどこへやら。ヘタレと化した箒がそこにいた。

「はぁ...。...私が言えた事じゃないが...箒、お前はあまり話し上手ではない。」

「っ、ああ...。」

 唐突に告げられた事に、自覚しながらも頷く箒。

「だが、剣の腕前はある。...ならば、全てを剣に込めていけ。」

「.......。」

「乱れてもいい。上手く振るえなくてもいい。...ただ、お前が篠咲秋十に伝えたい想いの全てを剣に込めろ。...後は試合すればわかる。」

 言葉ではなく、剣で語れ。そう、シグナムは言う。

「....元々、私にも...というより、他人には深く理解できない“罪悪感”なのだ。ならば、その複雑さなど全部ひっくるめて剣に込めて本人にぶつければいい。」

「....そう、だな...。ああ、私にはその方が向いていそうだ...。」

 シグナムの言葉に、何とか箒は立ち直る。

「....ありがとう、シグナム。貴女のおかげで、秋十とも面と向かって会えそうだ。」

「そうか。...私もあまり口上手ではないからな。それでも助けになれたならいい。」

「ああ。...では、明日の放課後のために、相手をしてくれないか?」

 再び立ち上がり、竹刀を構える箒。

「...一応、理由を聞くが...。」

「なに、明日試合をするのだ。その時に、腑抜けた剣筋ではもったいないだろう?例え罪悪感などで乱れるとしても、少しでも鍛えておきたい。」

「...そうか。なら、相手をしてやろう。」

 そういってシグナムも構え、二回目の試合を始めた。









「という訳で秋十君!明日箒ちゃんと試合な!」

「何がどうしてそうなったんですか!?」

 ...その日、寮のある一室でそんな会話があったとか...。















「(そういえば、箒は去年の剣道大会で優勝していたっけな。なら、俺も相応の覚悟で....って、それはいつもと変わらないか。)」

 翌日、放課後になって剣道場に向かう秋十はそんな事を考えていた。
 いきなり桜に試合する事になったと告げられ、結局それに付き合う事になった。
 なお、当の桜は既に剣道場に行ってるらしい。

「...あれ?そういえば桜さん、この前まで箒の事を苗字で呼んでたのに、昨日は束さんみたいな呼び方で...。」

 ふと、桜の箒に対しての呼び方に気づく。

「...でも、ただ単に束さんを真似ただけかも...。...まぁ、桜さんの事だ、気にするだけ無駄か。」

 後でどういう事か聞けばいい。そう思って剣道場へと足を進めた。







「.....来たか...。」

「...箒....。」

 剣道場に着くと、既に箒は道着を着て待ち構えていた。
 端っこの方には見物するであろう同じ剣道部の人達がいた。

「.....あんな仕打ちを受けても、私を名前で呼んでくれるのだな....。」

「箒....?」

 名前で呼んでくれた事に、箒が思わずそう呟くが、運よく秋十には聞こえていなかった。

「はいはい、試合前に会話するのもいいが、できればそれは後にしてくれ。その方がお互い話やすいだろうからな。」

「あ、桜さん。...っと。」

 秋十が何かを言う前に桜が遮り、竹刀を秋十へと投げ渡す。

「防具はいいとして...道着はどうする?着るか?」

「え、でも俺に合わせた道着なんて...。」

「なんのために俺がいると?」

「...あー。」

 自分の道着はないだろうと思った秋十だが、桜の存在がそれを否定する。
 なにせ、桜の手には秋十にサイズを合わせた道着があったのだから。
 なお、手作りらしい。

「...じゃあ、着替えてきます。」

     ―――ガタッ!

「おう。...はいそこ座ってろ。」

 “着替え”という単語に反応する見学者複数。それを桜が止める。
 普通性別が逆だと思うが、案外IS学園の女子は男に飢えているのである。

「ははは...更衣室まで遠いですので、倉庫を借りますね。」

「まぁ、時間がかかる事になるしな。...だから座ってろ。」

 剣道や柔道、弓道に使う用具や掃除用品を入れる倉庫を借りて、秋十は着替える。
 そして、また反応した女子たちを桜は抑える。





「お待たせしました。」

「よし、準備も終わったし、早速試合だ。双方とも用意はいいか?」

 着替え終わったのを桜は確認し、試合を始めれるか聞く。

「...私はいい。」

「俺もできてます。」

「そうか。...なら、試合を始めるか。」

 そういって桜は試合を見やすい位置に移動し、シグナムが合図を下す。

「始め!」

「「っ...!!」」

 試合が始まった瞬間、秋十は攻撃に備え、箒は先手必勝とばかりに接近する。

「はぁああっ!!」

「ぐっ...!」

 上段からの振り下ろし。シンプルなそれを、秋十は真正面から受け止める。

「っ、シッ!!」

「くっ!!」

 受け止めた後、横に巻き込むように持っていき、そのまま反撃の一閃を放つ。
 竹刀が持っていかれる時点でどう来るか分かっていた箒は、それを飛び退いて躱す。

「っ....。」

「(....?なんだ?今のは....?)」

 一度間合いが離れ、見合う状態となる。
 その際に、秋十は箒の剣筋に何か違和感を感じ取る。

「(ダメだ!上手く力が入らない...!やはり、秋十の正面に立つだけで、私は...!)」

「(...手加減...いや、違う。これは...。)」

 睨み合ったまま、互いに思考を巡らす。

「.......。」

「っ....はぁっ!」

 秋十は静かに構えなおし、箒はそれを認識しつつも竹刀を振るう。

     バシィイイッ!!

「っ....!」

「なっ...!?」

 だが、それを秋十は真正面から受け止めた。

「くっ...!」

 すぐさま弾かれ、箒は再び間合いを取る。

「....来い。遠慮なんて、しなくていい。」

「っ...!」

 静かに、ただ秋十はそう言った。
 その言葉に箒は目を見開き、一度目を伏せてから、また斬りかかってくる。

「(今の箒の剣筋は、とにかく真っすぐだ。例え、心の部分で遠慮とかをしていても、ただ自分の想いを込めている。だから....。)」

「はああああああっ!!」

 秋十の言葉が効いたのか、先程よりも気合の入った振り下ろしが迫る。
 普段の秋十なら、正面から受けずに横に逸らす一撃だが、今回は受け止める。

「ぐっ...く...!ぁああっ!」

「っ!」

 正面から受け、さらにその状態から押し返す。
 箒は押し返された事に驚きつつも、すぐさま構えなおし、反撃を防ぐ。

「(全て、受け止める!)」

「っ、ぁあああっ!!」

 先ほどよりも力強いが、その代わり大振りになる箒の攻撃を、秋十は逸らす事をせずに敢えて受け止める。
 秋十は分かっていた。箒が振るう竹刀に込められた想いが。

「(洗脳されていた、なんて箒にとっては言い訳にすらならない程、罪悪感を感じているんだろう。...鈴の時だってそうだったからな。)」

「ぁああああっ!!」

 強い雄叫びと共に、箒は何度も竹刀を振るう。
 それを、秋十はただひたすら正面から受け止める。

「.......。」

 ...実力は歴然だった。冷静を欠いた箒が秋十に勝てる要素はなかった。
 しかし、その一撃一撃に込められた想いから、秋十はただ勝つのを良しとしなかった。

「箒....。」

「表面上は取り繕っているが、心が泣いている...な。」

 試合を見ているシグナムと桜は、そんな二人をただ見守り続けた。

「(私はお前の無骨なまでに真っすぐな剣に憧れた...!...力強くも、美しくもなかったのに、子供ながらに私は“凄い”と感じた...!なのに...なのに私は...!)」

 それは後悔だった。
 大事に想っていた相手を、傷つけていたのだから。

「(それでも秋十、お前は....。)」

   ―――...箒....。

   ―――....来い。遠慮なんて、しなくていい。

「(こんな私を、まだ名前で呼んでくれた。受け止めてくれた....!)」

 涙を流しそうになるのを堪え、箒は再度秋十へと打ち込む。

「っ....!」

「は、ぁっ...!!」

 大きく秋十が後退する。元々受け流せばいいものを正面から受け止めていたからだ。

「くっ...!」

「ぁああああああっ!!」

 力強く、箒は竹刀を振り切った。
 それにより、秋十は大きく竹刀を弾かれ、後退する。

「....ありがとう、箒。」

「え....?っ!?」

     スパァアアン!

 瞬間、体勢を立て直した秋十が素早く二閃。
 二回の高速な斬撃で箒の竹刀を弾き飛ばし、竹刀を突きつける事で決着がついた。

「....お前の、その気持ちだけで十分だ。...また、一緒に剣道で競い合おう。」

「....秋...十......。」

 箒の頬を、一筋の涙が伝う。
 “赦された”。そう理解したからこそ、堪えていたものが溢れてきたのだ。

「....すまない....!今まで、すまなかった...!」

「...いいさ。別に箒を恨んだりしちゃいない。」

 謝る箒に、秋十は竹刀を降ろしつつそういう。

「....八神。」

「...わかっている。」

 その様子を見て、試合を見た興奮を抑えられない見学者達を桜たちは退かせる。
 ただならぬ事情を見学者達も理解したので、空気を読んで席を外した。

「(...よかったな、秋十君。)」

「(...桜さん、そういう事だったんですね...。)」

 サムズアップする桜に、秋十もなぜ試合をしたのかが理解できた。

「秋十...!ぁあああ....!すまない....!」

「.......。」

 堪えていたのが決壊し、涙を流す箒を秋十は黙って慰め続けた。









「本当の意思ではないとはいえ、親しい人を傷つけた...か。罪悪感が大きいだろうな...。」

「おまけに、年月もそれなりに経っている。積年の罪悪感は結構重いぞ。」

 二人だけにしておく方がいいと判断した桜とシグナムも外に出て、そんな会話をする。

「...篠咲君と篠ノ之さんって一体どんな関係なの...?」

「関係...か。」

 空気を読んで席を外したとはいえ、事情が気になる見学者だった一人が桜に聞く。

「秋十君自身は特に恨んだりしていないが...箒ちゃんはそんな秋十君に負い目を感じているんだ。それも、面と向かって喋るのも苦労するほどにな。」

「負い目...?」

「...さすがにそれは言えないな...。」

 他人の事情に深入りする訳でもないので、聞いてきた女子は引き下がる。

「...ま、剣道部所属の人ならわかるかもしれないが、箒ちゃんはちょっと話下手な所がある。...だから、敢えて剣で語らせたって訳さ。」

「そうだったんですか...。」

 剣道大会優勝者と男性操縦者の一人の試合という事から見学していた女子たちだったが、そんな理由があった事に静かに驚いた。

「....なんか悪いな。こんな個人の事情に付き合わせちまって。」

「い、いえ、そんな事は....。」

 申し訳なさそうにする桜に近くの女子がそう言い返す。

「...まぁ、ようやく拗れていた問題が解決されたんだ。...これからも二人と仲良くしてくれるか?」

 桜がそういうと、それは愚問だとばかりに、女子たちは頷いた。

「(さて、これで秋十君との仲は全員が元に戻ったな...。)」

 洗脳によって変わってしまった部分を全て直した事に、桜は少し肩の力を抜く。

「(後は...俺たちを敵に回してしまった事を、後悔してもらうか。)」

 しばらく時間が経ち、落ち着いたのを見計らって道場に入りながら、桜はそう考える。
 今は自室謹慎で大人しいが、いずれまた何かやらかしてくるのを見越して。







   ―――次...臨海学校がお前の最期の時だ...。











 
 

 
後書き
※“最期”とか言ってますが殺しません。絶望に落とす的な意味で言ってます。(というか桜はそんな“逃げ”に値する方法で終わらせません。)

そろそろどこに向かってるか分からなくなってきた...。
福音戦までなのは決めてあるんですけど、その過程が迷走しています...。
まぁ、基本原作沿いなのでどうとでもなりますけどね。(ただし駄文になる) 
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