Three Roses
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第二十話 早世の家その一
第二十話 早世の家
太子はこの時も彼の側近達と共にいた、狩猟に出たおり休憩として酒や果実を間食として口にしていた。
赤い葡萄酒を一口飲みだ、彼は同じ席にいる側近達に言った。
「エヴァンズ家には一つ弱みがある」
「といいますとやはり」
「歴代の王がですね」
「男性の方が」
「気付いていたか、卿達も」
太子は自身の側近達の返事に笑みで返した、赤い葡萄酒で口が赤く濡れているがそれはすぐに拭き取った。
「その通りだ」
「お産まれになって夭折される方が多いですね」
「そもそも男子が産まれることが少ないです」
「お産まれになり二十歳まで育たれる方は少なく」
「また成人されても」
「早世する方が多い」
太子はこの言葉は淡々として無表情で述べた。
「王朝の初代の方からな」
「今に至るまで、ですね」
「どの方もですね」
「早世されてばかりで」
「長生きされた方はおられないですね」
「どなたも」
「女系の家系なのだ」
エヴァンズ家はとだ、太子は看破した。
「女性の方が産まれることが多くだ」
「そして女性の方ばかり育たれる」
「そうした家ですね」
「どちらも半々ではなく」
「女性の方が多いですね」
「そして男性の方もだ」
肝心の、王家や貴族の家にとってはどうしても必要な跡を継ぐべき男子はというのである。
「少なくだ」
「夭折、早世ばかり」
「だからですね」
「どうしてもですね」
「王家の血が危うくなっていますね」
「事実今の王家の男性はだ」
エヴァンズ家のそれはというと。
「王だけだな」
「そうですね、血縁の方は多いですが」
「国内にも国外にもおられますが」
「ご親戚の方は」
「それでもですね」
「直系は夭折、早世が続きだ」
その結果というのだ。
「今は直系の男子はお一人だ」
「王ですね」
「あの方のみですね」
「最早」
「そうだ」
まさにとだ、太子は今度は無花果を食べつつ言った。
「そしてあの方もだ」
「男子はおられず」
「そのうえ、ですね」
「どうも」
「私が言った通りだったな」
太子はまた言った。
「現王の命は短い」
「ですね、確かに」
「あの顔色を見ますと」
「目の生気も弱まっています」
「崩御は近いですか」
「三代続けてそれ程長生きしていない」
特に先王はだ。
「そこから若しかと思い調べたが」
「エヴァンズ家自体がですね」
「早世の家でしたか」
「男の方は夭折、早世ばかり」
「そうした家ですか」
「この国にとっては不幸なことにな」
遠く、広く見る目で述べた。
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