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真田十勇士

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巻ノ六十三 天下統一その十三

「できませぬ」
「それ故にな」
「はい、飲めませぬ」
「そうじゃな、しかしな」
「しかしとは」
「この関東は平坦しておるからな」
「そして川も多く」
 幸村も言う。
「政はしやすいですな」
「豊かになるな」
「はい、確かに酒や水の味は落ちますが」
 近畿と比べてだ、だがそれでもというのだ。
「しかし」
「政をすればな」
「豊かになります」
「そうじゃな、それとじゃ」
「それと、とは」
「北条家は小田原におったが」
 このことも言うのだった。
「そして鎌倉幕府は鎌倉にあった」
「はい、しかしですか」
「うむ、どちらも政を執るにしてはな」
「西に寄っていますか」
「関東全体を治めるにはな、そう思わぬか」
「確かに」
 幸村も兄に答えた。
「それがし前に小田原に行ったことがありますが」
「その時に思ったか」
「関東全域を治めるには」
 小田原よりもというのだ。
「武蔵、それも江戸の辺りがです」
「よいか」
「そうも思いましたが」
「江戸城か」
「かつて太田道灌殿が築かれた城ですが」
「あちらの方がよいか」
「そうも思いました」
 こう兄に述べた。
「むしろです」
「江戸城か」
「はい、あちらです」
「あの城のことはわしも聞いておるが」
「それでもですな」
「随分小さくしかもほぼ捨てられておるという」
 そうした城だというのだ。
「最早廃れておるというが」
「しかしです」
「その城はか」
「場所としては関東を治める場所かと」
「そう思ったか」
「はい」
 まさにというのだ。
「そうした場所だとです」
「江戸か」
「意外ですか」
「江戸はだ」
 まさにとだ、信之はここで言った。
「確かに場所はいい」
「関東を治めるにはですね」
「場所的にな、しかし」
「それでもですか」
「江戸城はな」
「あまりにもですか」
「廃城だからな」 
 それでというのだ。
「関東全域を治めるには都合が悪かろう」
「ですな、しかし」
「その江戸城を改築してな」
 そのうえでとだ、信之は幸村に言った。
「見事な城にすればな」
「関東を治めることも」
「出来るであろうが、しかし」
「改築しようと思えば」
 江戸城を関東全域を治めるだけの城にしようとすればというのだ。
「相当な銭と時がかかりますな」
「そうであるな」
「そこが問題かと」
「そうじゃな、しかしな」
「はい、兄上の言われる通り小田原や鎌倉よりもです」
「関東を治めやすい」
「そうであるかと」
 幸村は信之に話した。 
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