Lv.9999億の骸骨(勘違い物)・ω・`)ノ
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
Lv37「猫大統領、寿司を食う」後編
ニキータは、窓から街を見下ろし、遥か過去の出来事を思い出しながら、言葉を紡いだ。
「ワルキュラ様と初めて出会った頃……吾輩は駆け出しの若い実業家でしたにゃー。
もちろんニャンコ商国は存在してないくらいに大昔にゃー。
吾輩は同業者と競い合って、世界中の海を股にかけて冒険してたにゃー」
「確か……海賊をやってたんじゃ?」
「そんな時、ワルキュラ様に出会ったにゃー。
運命的ですごかったニャー。
海を貫く巨大ビームがやばくて暑かったにゃー。
でも、おかげで帝国で就職できてウハウハにゃ」
「船を全部沈められて、刑務所で強制労働やってたんじゃ……?」
甥がニキータの過去に詳しすぎた。疑問に思ったニキータは問いただす。
「吾輩の過去を誰から聞いたにゃ?」
「噂好きの叔母上」
「嫁の世間話好きも困ったものにゃ。
とりえあえず、話を元に戻すにゃ」
ゲフンッと、一回咳払いをして、ニキータは過去話を再開した。
「吾輩は帝国(の刑務所)でたくさん働いたのにゃ。
その模範的な働きっぷりが目に止まったのか、偶然、訪れたワルキュラ様と会話する事ができたにゃー。
そこで自分を売り込んで、大金を借りて商売をやったにゃー」
「この島に、攻め込んで独立国作ったって叔母が言ってたような……?」
「一々、うるさいにゃ、マグロ漁船の乗務員A。
長いから、マグロ漁船Aと呼んであげるにゃ」
「なんて酷い叔父だ!」
「これが嫌なら、マグロAと呼んであげるにゃ」
「魚介類扱い!?」
甥が連続でツッコミしすぎて、会話し辛いにも程があるとニキータは感じた。
どうせ、どの国の建国実話も血で塗り固められている。
汚い手で成り上がっても気にする必要はないのだ。
国を作れば国父扱いされて、神格化され、虐殺とかレイプしても無かった事にされるし。
「国を作ってからは忙しかったにゃ。
(海賊)仲間同士での権力争奪戦が忙しすぎて、吾輩の親友が30人ほどコンクリ詰めになって海の底に沈んだのにゃ。
不幸な事故だったにゃ」
「なんて汚い叔父だ!?やはり競争社会は腐っている!」
「国を建国して、1年ほど経過した頃に、またワルキュラ様と出会う機会があったのにゃ。
金を使い果たして困っていた吾輩は、ついつい『金貨プールが長年の夢にゃー!』と叫んで土下座して直訴してしまったにゃ」
「……」
「周りの骸骨にリンチにされそうにニャッたけど、吾輩は幸運を勝ち取って、プールいっぱいの金貨プールで泳げたにゃ。
とっても綺麗で壮大なプールだったにゃー」
「……そんなのが夢だったのか?
黄金のプールなんて下品なだけだろ!」
「マグロ漁船Aは分かってないにゃ。
黄金の魔性の輝きを見たら……たくさん集めて、黄金の寺や茶室や車を作りたくなるのが金持ちの性にゃ。
……でも、金貨風呂は失敗だったにゃー。金貨が毛に引っ掛て痛いのにゃー。
時代はやっぱり金貨より金粉風呂にゃー。
黄金は身体に良いから、毎日入ってウハウハにゃー。
吾輩が入り終わった後のお湯を、高級銭湯に流せば二重に儲かって良いのにゃー」
金粉を化粧水に使えば、高級感が出て高く売れる。
僅かな量の黄金で済むから、経済的にも安く済む。
だが、甥はそんな風に感じなかったようだ。
「これだから資本主義者はっ……!
少ない貴重な資源を浪費するなんてっ……!」
「話を戻すにゃ、ワルキュラ様の凄さは金貨プールに留まらなかったのにゃ。
一回、宮殿に泥棒……訪問したら、とんでもない価値がある美術品が大量に並んでいたのにゃ。
値段は低くて数億アヘン、高くて数千億アヘンの名作がズラリッと並んでいて爽快でしたにゃー。
ワルキュラ様が言うには『部下が金を使え使え煩いから、適当にオークションで買った』とか言っていて凄いにゃ。世界一の金持ちは10アヘンの菓子を買うのと同じ感覚で、歴史的名画を簡単に購入できて凄くてゴージャスだったにゃ。
おかげで現行犯で捕まって、危うく皇后様に蹴り殺されそうになったにゃ」
「まさか……叔父上の家の隣に、美術館があるのは……」
「そうにゃ。
ワルキュラ様の物真似にゃ。
この美術品ビジネスを吾輩が広めて、本当のお金持ちは、歴史に残りそうな名画を買い集めて、美術館の一つや二つを経営する事が常識になったのにゃー。
美術品ビジネスは儲かって笑いが止まらないにゃー、マグロ美味しいにゃー」
金の話をしながらする食事は美味い(ウミャイ)と感じたニキータ。
特に美術品は、希少性が高ければ良い値段が付くから、変人から絵画を買い集めて売れば儲かりやすかった。
特に一番儲かるのは、ヨボヨボで老齢な画家の絵だ。
『絵師が死ねば、これ以上作品が生産されず、自動的に値段も釣り上がる』美味い商売だ。
「マグロ漁船Aも、美術品の販売をやってみないかにゃ?
審査員を買収したり、賞という形で集めれば優秀な作品が量産できてお得にゃ。
絵師も食っていけない画家生活からサヨナラして、低賃金労働者にクラスチェンジできて嬉しいはずにゃ」
「……叔父は腐っている!
死者に生者の世界を売り渡してどうするんだ!」
「高く売れるなら、国すら高く売るのが商人って生き物ですにゃ。
コネが重要だから家族は売らニャいけど、マグロ漁船Aは残念な事に……商人の素質が無くて困ったにゃー。
恵まれた環境を台無しにして本当に残念ですにゃー」
商国を丸ごと買える金持ちは、ワルキュラぐらいしか思いつかないが、それはそれで仕方ない。
断ったら、圧倒的軍事力で買い叩かれて、二束三文の財産しか残らないだろう。
しかし、この甥の反応はどうなのだろう?商人の家で育ったのに潔癖すぎる。
我侭に育つのも問題だが、共産主義に染まるのはもっと問題だ。
「叔父っ!金で国すら売ると言ったな!?」
「商国に釣り合う値段だったら売るにゃー」
「俺は絶望したぞ!
いつか正義の刃がその身に降りかかるからな!
俺が奴隷になって死んだとしてもっ!同志がワルキュラとお前を殺す!」
「さぁ、さっさと、マグロ漁船でたっぷり労働の汗を流して、資本主義の大切さを学ぶにゃ」
ニキータは残念そうに言い、甥を部屋から追い払う。
甥は最後まで、ニキータを深く憎悪していて謎だった。
経済発展を優先しなければ、こんな島、貧乏人だらけの巣窟になるだけなのに……。
きっと、甥がマグロ漁船で先輩達に扱かれて、資本主義とか、お金の有り難さを理解してくれると信じるしかない――
プルルルルルゥ!
部屋の固定電話が金属音を響かせた。
電話番号はワルキュラだ。
きっと共産国の情報をプレゼントしたから、報酬をくれるのだろうなとニキータは確信し、受話器を取り、緊張で手が震えながらも猫耳に当てた。
「もしもし、こちらはニキータですにゃー」
『俺だ』
「にゃー!ワルキュラ様には、いつもお世話になってますにゃー!
ありがとうございますにゃー!」
『早速で悪いが……最近、お金を使えと首相が煩いのだ。
何か高い美術品はないだろうか?予算は一千億アヘンだ』
首相が煩い。恐らく、これは遠回しな『べ、別にご褒美を上げる訳じゃないんだからね!』だとニキータは判断する。
天下無敵の皇帝のご機嫌を損ねる事ができる存在が、帝国にいるはずがないのだから。
しかも、ワルキュウの美味しい『ご褒美』はまだまだ続くようだ。
ニキータの猫顔は満面の笑みに染まり続けざる負えない。
『あと、金が有り余って困っているから、一兆アヘンほど預金できないか?
手元に動かしていない金があると、首相が本当に煩くて困る。
お金はアレだな。
あった方が良いが、多くなりすぎると所有者の自由すら奪い去っていく悪魔だな、うむ』
「いつもいつもお世話になってますにゃー。
元金を完全保証する素晴らしい銀行を紹介しますにゃー。
もちろん、利子もそこそこで美味いですにゃ」
これだから、ワルキュラ相手の商売は止められない。
アヘン紙幣を発行し、世界経済を牛耳る相手との商談は、美味しい甘い蜜だった。
ページ上へ戻る