デカとチビ
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第二章
まことは社長に社長室に二人で呼ばれた時のことを思い出してだ、みのるに言った。
「運命やな」
「そう言ってええな」
「御前もそう思うやろ」
「思うから頷くんや」
これがみのるの返事だった。
「うどん食いながらな」
「若布うどん美味いか」
「めっちゃ美味いわ」
「そやろな、この店の麺もつゆもええ」
「大阪のうどんや」
柔らかいそれだ、最近では讃岐系のうどんに押されているという。
「たまにはこうしたうどん食わんとな」
「そや、あかんわ」
「讃岐も悪ないけど」
「こうしたうどんが大阪や」
「そやからな」
二人でうどんについても話した、そして二人でさらに話した。とかく二人はそれぞれあまりにも対称的な個性で目立っていた。
二人はそれぞれ歌も上手で事務所の社長も気付いていた、それでこのことを知り合いのレコード会社に話すとだった。
会社の方も興味を持ってだ、二人に言ってきた。
「歌手ですか」
「わし等が」
「はい、どうですか?」
レコード会社の人は笑ってだ、二人に話した。
「歌手デビューしますか」
「それはまた」
「寝耳に水ですわ」
二人共鳩が豆鉄砲を食らった顔になって言った。
「わし等が歌手になるんですか」
「CDも出して」
「歌には自信ありますけど」
「カラオケよく行きますし」
「けどです」
「それでも売り出すなんて」
「まあ企画ですから」
よくある話だというのだ、芸能界では。
「それで出しますので」
「そやからですか」
「特に肩肘張らずに」
「気軽にですか」
「そんで真面目に」
「楽しんでやりましょう」
仕事をとだ、レコード会社の人は二人に話した。
「楽しく真面目に」
「ほなそれで」
「やらせてもらいます」
二人もこう応えてだった、そのうえで。
歌の収録に入った、まずはそれぞれの歌が収録されたがレコード会社の人は二人の歌を聴いて驚いて言った。
「お二人共凄いですね」
「歌上手ですか」
「わし等二人共」
「はい、噂は聞いてましたが」
社長からだ。
「想像以上でした」
「まあカラオケ好きですし」
「結構行ってますし」
暇な時にだ、二人の共通の趣味でもある。
「自信はあります」
「わしもです」
「ただ上手なだけじゃないです」
二人共、というのだ。
「まことさんはバスで」
「ああ、街を走ってる」
「いえ、声域です」
そちらの話だというのだ。
「見事なバスですね」
「ああ、声が低くて」
「はい、見事なバスです」
そうだというのだ。
「そしてみのるさんはソプラノで」
「ソプラノって」
「本来は女性の声域ですが」
こうみのる自身に話した。
「小坂さんはそちらです」
「そうやねんな」
「普通はです」
みのるにこの前置きからさらに話した。
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