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魔界転生(幕末編)

作者:焼肉定食
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第71話 沖田の弱点

 新政府軍に追いつかれ大乱戦の中ではあるのに、土方と沖田だけは別の空間にいるかのように対峙していた。が、もちろん実際には違っていて、当然、新政府軍の兵隊は、土方に襲い掛かってくる。新撰組の法被を羽織っている沖田にも当然襲いかかる。
 だが、二人はそんなことなど気にすることはなく、兵隊を切り倒し二人の周りには累々たる屍が重なりあった。
「フフフ。さすがですね、土方さん」
 沖田はにやりと笑った。
「御託はいい。来ないのか、総司?」
 土方は典太を肩に担ぐような体制で沖田を睨みつけた。
 初めて化け物以外を典太で斬った土方は何故か空しさを感じていた。
「では、お言葉に甘えて行きますよ、土方さん」
 沖田はだらりと両腕を下げた状態で構えたが、空間が陽炎のように揺れたと思った瞬間、土方の後ろに来ていた。
「ぐわぁ!!」
 土方の両腕、両足に薄皮一枚程度の切り傷が現れた。
「土方さん、何やってるんですか?全く相手になりませんね」
  沖田はがっかりしたようにため息をついた。
(動きが全く見えなかった。まるで姿を空に消し去ったかのように)
 土方の背中に嫌な汗が滲んで来ていた。
 再び、沖田の姿が視界から消えたと思ったと同時に、傷を負った同じ場所が斬られた。
「ぐわぁ!!」
 土方は悲鳴を上げて片膝をついた。
(どうなっているのか、わからないが、これが総司の能力か)
 土方を見下ろしている沖田を睨み返した。
「つまらない、なんてつまらないんだ。土方さんがこんなにも弱くなってしまっているなんて」
 沖田はわざとらしく天を仰いで嘆くように言った。
「もういいや。死んでください、土方さん」
 そう言った沖田の目はまるで感情がない氷のような目つきだった。そして、今度は低く構えた。
(突いてくるのか。どうする?どうすればいい?)
 土方は頭をフルに使って考えた。
「では、さようなら」
 沖田の体が三度消えようとした瞬間、土方は足元に転がっている死体を盾にした。刹那、沖田が突きの衝撃が手に伝わり、死体からは大量の血が噴き出した。
「まさに間一髪ってとこですね、土方さん。ですが、今度は外しませんよ」
 沖田は笑顔を向けて土方に言った。そして、消えた。と同時に大量の血が空に舞った。
「ちっ、大情義が悪いですよ、土方さん」
 沖田は土方を睨みつけた。土方は再度、今度は別の死体を盾にしていた。空に舞った血しぶきは、その死体のものだったのだ。
(くそったれが!!どうにも手が出ない。どうやら、俺はここまでか?)
 と土方は覚悟を決めたが、その時、盾にした二つの死体を見比べてみた。
(そういうことか。光明がみえた)
 土方はにやりと微笑んだ。
「何がおかしいのですか、土方さん?」
 沖田はその笑みをみて不機嫌そうに見つめた。
(まだ、総司は自分の欠点が解ってないのか。よし、気づかれる前に決着をつけねばならんな)
 土方は再び頭を回転させた。それは、間合いの計算だった。
 消えたように見えたときから、死体が血しぶきを上げた間の時間はどれくらいなのか必死に考えを巡らせた。
 その結果、大凡だが、沖田は消えたのではないと予想した。
 沖田の間合いを詰める速さが以上に速いと考えたのだった。化け物になる前も詰めの速さは段違いに速かった。突きの速さも速かった。
 だが、それさしの勝負で言えることだ。この大乱闘の中、どう間合いを詰める?
 どんなに速くても一直線には来れない。と、土方は踏んだのだ。
 「総司、俺の慈悲だ。この場で地獄に放りこんでやる」
 土方は大混戦の中に身を投じた。そして、愛刀・兼定も抜いて二刀流で構えた。
 どこからともなく現れた感じの土方に敵は驚いていたが、当然、襲い掛かる。が、土方はそんなことなどお構いなしに斬って捨てる。
「さぁ、来い、総司」
 土方はにやりと微笑んだ。
「二天一流とは、ふざけてますね。では、遠慮なく行かせていただきます」
 沖田は低く構え土方のみに集中して狙いを定めるのだった。
 
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