聖闘士星矢 黄金の若き戦士達
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441部分:第六十一話 対話その六
第六十一話 対話その六
「あの女神か」
「あの女神も眠りについております」
「永遠の眠りに」
「その通りだ。あの神もまただ」
男はその懐かしむものを抑えて述べてみせた。
「眠りから覚めることはない」
「今ここにいるのは我等のみ」
「新しく神々だけが」
「その通りだ。そしてだ」
男の言葉は完全に戻っていた。その壮厳かつ豪奢な玉座に座りそのうえで述べていくのだった。全てを見渡しているかの如き声で。
「我々が地上を完全に治める時になろうとしているのだ」
「新しき神々の中で最も力を持つ我々が」
「これより」
「アテナはそれがわかっておらんのだ」
そのうえでアテナを批判するのだった。
「地上は神々のものではないか」
「はい、人のものであると」
「古の時代からそう言い続け」
「あくまで人を護り続けています」
「人は神の僕に過ぎない」
男は一言で言い捨ててみせた。
「所詮はだ。我等に仕える為の存在だ」
「そして我等を崇め」
「その恩恵を受けるだけの存在です」
「しかし。それでもアテナだけは言っていた」
言葉はまた古のものを見る目になっていた。その遠い昔から現在に至るまでの悠久の記憶をである。彼がその玉座から見てきた全てのものをである。
「地上はあくまで神々の治める場ではないと言い」
「人を護り。そして」
「人をただ慈しんできた」
「人を愛することはいい」
男もそれは否定しなかった。
「ポセイドンもハーデスも人を愛している」
「はい、確かに」
「それは間違いありません」
彼等とて人を愛さないわけではないのである。そしてそれはアテナや彼等だけではなかった。あの血生臭い彼にしろ同じであった。
「アーレスもまたな」
「その通りです」
「あの者も人を愛しています」
「それは間違いありません」
「しかしだ」
男は言葉をまた変えてきた。それもはっきりとである。
「それはあくまで我等を崇める人間だけをだ」
「そうです。他の神を崇める人間なぞ愛するに値しません」
「ましてや我等を信じないならば」
「愛する必要はない」
男もまた冷たく言い切ってみせた。
「全くな」
「ですがアテナは違い」
「そうした人間であっても愛します」
「それがわかりません」
「全くだ」
男もまたアテナのそうした考えを理解していなかった。しようともしなかった。
「あの者の考えることだけはわからん」
「人は所詮人です」
「我等と同等ではないというのに」
「先のハーデスとの聖戦においては」
またその聖戦の話をする男だった。
「とりわけ慈愛をみせた」
「そに人間達に対して」
「聖闘士以外の彼等に対しても」
「しかもだ」
男の言葉はまさに理解できないものに対していぶかしむ声であった。
「その聖闘士達の死に対しても涙を流していた」
「そうでした」
「神が人に対して泣くなどとは」
そうしたことも理解できない彼等であった。何処までもアテナのそうした感情をわかっていなかった。わかろうともしていないのだった。
「愚かしい」
「知の女神であるというのに」
「あの者は確かに戦いの女神であり知の女神だ」
「はい」
「まさにその通りです」
アテナのその司っているものは言及するまでもなかった。
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