FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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秘策?やけくそ?
前書き
とある方に一つ能力を言い当てられてドキドキしながら作った今回のお話。
まぁ、みんな待ってるよね?と自分を納得させることしか俺にはできなかったんだ・・・
「始まった!!みんな!!スペル発動してる?」
ゲーム開始直後、全員に能力が発動しているかを確認する。ちなみに事前の説明では聞いていなかったんだけど、スペルが発動しているかはそれぞれのバッジから確認できる仕様になっているらしい。
「ソフィアは発動してるよ!!」
「よかった。俺も発動してる」
ソフィアと俺は被らせないように注意しながらスペルを作ったのでなんとか大丈夫だったらしく、ちゃんと能力が発動できるようになっていた。
「あぁ・・・あたしのはダメだったみたい」
ガッカリと声のトーンが下がっているのは赤紫髪の少女。彼女のは能力が発動できないようになっていたらしく、しょんぼりと肩を落としていた。
「大丈夫だよシェリア!!シェリアがレオンを守ったってことだよ!!」
「そっか!!」
だが、彼女と同い年の人魚がそれを慰める。その言葉を聞いた天神は落ち込んでいた表情から一転し笑みをこぼす。シェリアのスペルは“レオン分身”。レオンの分身を作り出すことができる能力なんだけど、彼の名前を使うことによって敵がレオンの動きを封じるスペルを作った時にはそれを無効化する狙いがあったので、その役割を果たしたので十分だ。
「あれ?私のは大丈夫だ」
「俺のも大丈夫だ」
「「「!!?」」」
すると、驚くべき言葉が聞こえ思わず視線がそちらに移動する。なんとウェンディとレオンのスペルが両方とも発動しているのだ。これには驚くことしかできない。
「え?まさかシリルを狙ってこなかったの?」
「そういうことだよね」
ウェンディとレオンには“水竜”と“シリル”を使ってもらっている。最悪どちらか片方は使用できないと思っていたので、想定外の事態に頭が追い付かない。
「ん?もしかしてあれを使ったんじゃ・・・」
プチパニックのような感覚に陥っていると、ソフィアが何か心当たりがあるようで、頭を抱えるような仕草をする。
「あれ?」
「な!!何でもない!!何でもないよシリル!!」
一歩詰め寄るとソフィアは慌てたように距離を取る。その挙動不審ぶりには全員が訝しげな表情を浮かべる。
「ねぇ、何かあるなら教えて」
「私たち友達でしょ?」
中でも二人の少女の詰め寄り方が半端じゃない。彼女たちの姿にソフィアもタジタジだ。
ヒュルヒュルヒュル
俺たちがソフィアだけに意識を向けていると、後ろから何やら妙な音が聞こえてくる。その正体が何なのか気になった俺とレオンが振り返ると、そこには俺の方向に向かってきているゴムのようなヒモが飛んできていた。
「うおっ!?なんだこれ!?」
避けようと試みるがすでに目の前に迫ってきていたため回避することができず、ゴムチューブにグルグル巻きにされてしまう。
「ちょっ!?シリル大丈夫!?」
「見ての通りダメです」
俺の悲鳴を聞いてソフィアからこっちへとやって来たシェリアがチューブに手を伸ばすが、ガッチリと絡まっている上に強度もあり、引きちぎることも逃がすこともできない。
「もしかしてこれって・・・」
「敵の特殊能力?」
なぜ絡まっているのか、考えられるのはそれしかない。でも、俺を狙うスペルを封じるためにウェンディとレオンに被らせるのを覚悟で選択してもらったのに、一体なんで・・・
「絶対カグラさんだ!!間違いなくあれでシリルを指定した!!」
地団駄を踏んで悔しそうにしているソフィア。さっきから何やら様子がおかしいけど、やっぱり心当たりがあるのかな?ちょっと説明を求めたいんだけど・・・
リオンside
最終戦が開幕、それと同時に早速一人のスペルを発動させた。
「ミリアーナ、イメージはできているか?」
「ミャア!!バッチリだよカグラちゃん!!」
グッと親指を立てて隣の女性剣士に笑みを見せる猫耳の女性。ここからでは敵の姿が確認できないので、本当に発動しているか不安だが、おそらく大丈夫だろう。
「しかし、よくあんな当て字を思い付いたものだな」
ミリアーナが使用しているスペルは、実はカグラが考えたものなのである。しかし、シリルの名前をあんな風に作ってみせるとは・・・
「ち!!ちが・・・あれはソフィアが考えたもので・・・」
「わかってるわかってる」
カグラがあんな変態的な文字を作ったら逆に驚きで思考が停止してしまいそうだ。ただ、あのセクハラ娘ならふざけて考えそうな言葉だ。
「でも向こうにソフィアがいるんなら、当てられるんじゃないか?」
「大丈夫だ。後半の部分はアラーニャから聞いたものだ。これならソフィアにも気付かれまい」
アラーニャも関わってきているのか。しかし、“尻流亀甲縛”とは・・・どういう発想したらそんな単語にたどり着けるんだか・・・
「そっちはもういいから。リオンも能力発動させろよ」
「オオーン」
人魚の踵の日頃の会話に心配していると、後ろからユウカとトビーに次なる一手をと急かされる。
「焦るな。言われずともするつもりだ」
彼らに注意を受けたので早々に能力のイメージをして発動させる。
「さて、あいつらはどう動くかな?」
俺とミリアーナの能力でシリルとレオンを潰した。これにあいつらがどう対処するのか、拝見させてもらおうか。
シリルside
「なんてあだ名つけてんだよお前は!!」
「ごめんてばぁ!!」
ソフィアが俺につけていたあだ名に激昂を上げる。怒られている少女はうわべ上は反省しているようだけど、動けないことをいいことにお尻に手を伸ばしてくるので絶対に許すわけにはいかない。
「千切れないかね、これ」
「無理だと思うよ、さすがに」
プレイヤーである俺が動けないとなると戦いが非常に厳しいので、何とかしようとレオンが紐を引っ張ってみるが、シェリアの予想通りびくともしない。
「ったく、お前のスペルならこれ無効化できるんじゃなかったのかよ」
「ソフィアのせいでイメージしてなかったの」
「ソフィアのせい!?」
なおも紐を引っ張っているレオンに愚痴られるが、正直責められるのは納得いかない。だって俺のスペルなら基本的に攻撃はすべて回避できるはずだったんだから。
「どうする?一回シリル連れてここから――――」
これからのことをどうしようかと話そうとしたレオン。しかし、突然ある異変が彼の体を襲う。
「うわああああああ!!」
「「「「!?」」」」
大口を開けて叫び始める氷の神。いきなりのことすぎて俺たちは彼がなぜ叫んでいるのか理解できない。
少年は顎に手を当てると、その周辺に力を入れて口を閉じていく。しかし、閉じたはいいが少しでも気を緩めると再び叫び出してしまいそうな状況なようで、口をふさいで息苦しそうにしていた。
「どうしたの?レオン」
「まさか強制?」
ウェンディとシェリアがそう聞くとコクコクとうなずいて返す。レオンの文字は封じてたのに彼が被害に遭ったってことは、向こうはまた予想外の指定方法を使ってきたってことか?
「てかやばくない!?今のでこっちの居場所がバレたよ!!」
俺を拘束して動けなくして、レオンに叫ばせて居場所を特定しつつ彼の動きも制限する。リオンさんならやりそうなことだ。さっき負けた腹いせに。
「とにかく一度撤退しなきゃ!!」
「ソフィア!!お願い!!」
「オッケー」
プレイヤーがやられるとその時点でゲーム終了。しかもこっちはレオンが動きにくい状態で戦力低下。向こうが攻めてきたら負け必須なため、ソフィアに指示を出してこの場から退避する。
「みんな!!行くよ!!」
「「「オッケー!!」」」
ソフィアに背負ってもらい、他の三人は彼女の周りに集まる。そして、彼女の掛け声とともにその場から別の場所へと移動していった。
第三者side
リズミカルに地面を蹴る音が響き渡る。その音が近づいてきたかと思うと、少年たちが元いた場所に犬耳を付けた青年が姿を現した。
「オオーン?」
キョロキョロと辺りを見回すトビー。しかし、どこにもお目当ての人物たちがいない。
「誰もいねぇじゃねぇかよ!!」
「キレんなよ」
遅れてやって来たユウカに怒鳴るトビーだったが、安定の返しをされて頭をポリポリと掻いている。
「どこに行っちゃったのかな?」
「まだ近くにいるんじゃないか?」
敵の叫び声が聞こえてからそう時間は経っていなかった。そのため、まだ周辺にいると読んだ二人だったが、リオンがそれを否定する。
「いや、たぶん向こうの誰かが瞬間移動系の能力を持っているんだろう」
「なるほど。確かにな」
どこから敵が向かってくるかわからない状況で迂闊に動くわけには行かない。向かった先で遭遇してしまっては、意味がなくなってしまうからだ。
「ま、どこに行っても問題ないがな」
「そうだな。シリルとレオンの動きは封じているわけだし」
主戦力である少年たちを封じているとあって余裕が見える人魚の鱗。その頃対戦相手であるチビッ子たちは・・・
シリルside
「あ・・・危なかった・・・」
元の場所から大きく離れた柱の影で作戦タイムを取っていた。
「一体どんなスペルでレオンに叫ばせてるのかな?」
「“氷の神”とか?」
レオンを狙ったスペルを封じたものだと思っていただけに、ショックを隠しきれないシェリアとウェンディがそう言う。
「・・・」
「大丈夫?レオン」
口を抑えて声を出さないようにしているレオンを心配そうに見上げる。彼は口に力を入れながら呼吸をすることが難しく、首を振って大丈夫ではないことをアピールしていた。
「“氷の神絶叫”!!」
「“叫ぶ氷の神”!!」
思い付いたスペルを叫んでみる天空の少女たち。しかし、どれも当たっているような気がしない。そもそも当たってても使用者が見える範囲にいないのだから、確認のしようがないんだけど。
「カグラさんたちが見える位置まで移動する?」
自らのスペルを使って一旦距離を縮めて相手の様子を伺おうとソフィアが提案するが、口を塞いでいるレオンが首を振る。
「俺もやめておいた方がいいと思う」
「そんな格好で言われても・・・」
「そこは今関係ない!!」
相手のスペルを封じられたかどうかを確認したい気持ちはわかるけど、迂闊に接近するのはいかがなものだろうか。向こうがどんな能力を使えるのかわからないし、下手したら迫った瞬間全滅させられる可能性だってあるし・・・
「じゃあどうするの?」
「このまま何もしないわけにはいかないよ?」
時間が物事を解決してくれることは絶対にない。特に今の状況では、動かないことはただ負けるまでの時間を稼いでいるだけに過ぎないのだ。
「たぶんレオンのはリオンさんで、シリルのはミリアーナさんだよね?」
レオンには日頃の恨みや先程のゲームの借りのことを考えると、リオンさんが叫ばせる能力を持っているのは容易に想像できる。でも、なんで俺のはミリアーナさんだと断定できるんだ?
「確かにこのヒモ、ミリアーナさんのに似てるね」
「拘束するなら、ミリアーナさんは得意だもんね」
ソフィアの言葉を聞いてシェリアとウェンディが納得する。言われてみると、ミリアーナさんの魔法は拘束系の魔法だから、イメージが重要になる特殊能力では発動させやすいのかもしれない。
「スペルが当てられないなら、この二人を倒すのが最善だよね?」
「それしか方法はないね」
次々に話を進めていく二人の少女。俺もちょいちょい口を挟んではいるのだが、いかなる作戦でも参加することができないので、あまり話しに参加できないのが正直なところ。
「でも倒すとしたらどうやって倒すの?」
ソフィアたちの考えだと、俺とレオンの動きを制限している二人の人物を倒して解放しようとしてるんだけど、果たしてどうやってそれを実行するのだろうか?
動けるのは三人の少女たちだけ。レオンもいけなくはないけど、叫びながら戦うことができないので片手で口を塞ぎながら行くしかない。それだといくらなんでも厳しいから、やっぱりシェリアたちしか戦える人はいない。
だけど、向こうは五人とも顕在しているし、なにぶん実力者が揃っている。彼女たちだけに任せるのは、いささか気が引けるんだけど・・・
「大丈夫!!ソフィアにいい作戦があるから!!ね?」
「うん!!頼れる人がいるからね!!」
楽しそうに笑みを浮かべて顔を見つめ合わせた後、ある人物へと視線を向ける少女たち。
「え?」
二人の少女に期待の眼差しを向けられた人物は、何がなんだかわからず間抜けな声を出していた。
第三者side
「ふぅ、どこにいるんだ?あいつら」
場面は変わり、柱の影を隅から隅まで見て回り、敵の姿を捜索しているリオンたち。彼らはサブの四人が円のように隊列を作りながら、中央にプレイヤーのカグラを配置する形で少年少女たちを探し回っていた。
ザッザッザッ
五人が見落としがないようにフィールドを歩き回っていると、後ろから近づいてくる足音が聞こえてくる。それを聞いた彼らは振り返ると、目に入った人物を見て驚愕していた。
「おいおい・・・いくらシリルとレオンが動けないからとはいえ、それはないんじゃないのか?
ウェンディ」
リオンたちの前に現れたのは天空の巫女、ウェンディ・マーベルただ一人。秘策があるのか、はたまた単なるやけくそなのか、彼女たちの狙いに注目が集まる。
後書き
いかがだったでしょうか。
いきなりシリルとレオンが戦線離脱です。
そしてリオンたちの前にやって来たのはウェンディだけ。どうなることか、温かい目で見守ってください。
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