ガンダムビルドファイターズ ~orbit~
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動き出す絶望 後編
不幸中の幸いか、天之川学園は天山学園との試合で今日のスケジュールは終了ってことだな。なんか、今は関わりづらいようだ。
「レーイーくーんー。病み上がりで悪いけど、ちょっと来てくれる? 」
「あ、ああ………」
ハルカゼに呼ばれ、観客席から会場の外へと連れ出される。
「さてさて。じゃあ聞きたいことはあるかな? 」
「なんで俺をここに呼び出しかってのを聞きたいな」
「会場内だと息苦しいと思ってね。僕なりの配慮だよ。なんせコーチですから」
「あっそ。お前は平常運転か」
「アハハハハ。まあね。その口ぶりから言って、何かに気づいた? 」
「…………ああ。ヒメラギ達の様子が、ちょっとおかしいんだ。それだけじゃねぇ。サオトメもだし、最初は気づけなかったけど、すれ違い際に俺を見た奴もだ。頼む。俺はいったい…………何をしたんだ? 」
「…………その前に、確認事項ね。レイ君は、試合中にどこまで意識あった? 」
「!…………セシリアが落とされた所までなら、覚えてる」
「成る程にゃるほど。じゃあビンゴって訳ね。OK。じゃあとりま車に乗ろっか」
腕組みをして一人納得し、俺を車に乗せる。
「さて、じゃあさっきの試合のログね。見えづらかったら場所を変えるから」
「大丈夫だ。見える」
「OK。じゃあ流すよ。セシリアさんが落とされた辺りから流すよ」
そして、テレビには試合の映像が流れる。
「あっ。信じるか信じないかは、あなた次第です」
「気が散るから黙っててくれ」
「はーい」
ーーー--
ガデッサを斬り伏せようと構えた瞬間、ブラウドライツガンダムにビームが貫通する。
G-セルフ・パーフェクトパックの機体色が赤色へと変色しており、バックパックの二つのユニットとトラックフィン、そしてビームライフルを構えていた。
ブラウドライツガンダムは爆破する前にドラゴンファングの口を開き、ガデッサの胴体、両腕、右足へと噛みついた。
ドラゴンファングの口内からはビームが放たれ、ガデッサを貫いた。
そして、ブラウドライツガンダムとガデッサは爆破した。
ドラゴンファングは爆風の中から飛び出し、アルケオニスガンダムの周囲に展開する。
アルケオニスガンダムは刀を構え、G-セルフ・パーフェクトパックへと接近する。あちらもビームサーベルを両手に構え、接近してきた。
刀とビームサーベルが撃破する中、ドラゴンファングでも攻撃していく。
G-セルフ・パーフェクトパックの両腕が緑色へと変色し、ビームサーベルを降り下ろしてきた。シールドと刀で受けるが、シールドは切断され、刀に亀裂が入る。
アルケオニスガンダムは耐えきれず、島へと叩き落とされた。
そして、止めとも言える追撃で、G-セルフ・パーフェクトパックの左足が緑色に変色し、そのまま飛び蹴りを放った。
ーーー--
「そうだ。確か、俺はここで…………」
俺の呟きが聞こえたのか、すぐに映像を止められる。
「そう。やられると思った。けど逆転勝ちした。ただし、それはいい形とは言えないものでね」
「…………どういう事だよ? 」
「それは説明するより、見た方が早いかもね」
そう言い、ハルカゼは映像を再生する。
ーーー--
G-セルフ・パーフェクトパックの飛び蹴りがアルケオニスガンダムへ直撃する前に、赤黒く染まった刀が、G-セルフ・パーフェクトパックの左足に突き出された。
刀と蹴りが衝突するなか、アルケオニスガンダムの左手が赤黒くなり、左足に向けてゴッドフィンガーを直撃させる。
左足を破壊されたため体勢を崩したG-セルフ・パーフェクトパックは、一度距離を取るために左手のビームサーベルを振るうも、突き出されていた刀に、左足ごと貫通される。
そのまま刀を手放し、右手にも赤黒いエネルギーが集中する。左手はG-セルフ・パーフェクトパックの右手首を掴み、右足で顔に蹴りを入れ、反動をつけて起き上がり、G-セルフ・パーフェクトパックを踏みつける。
そして右手のゴッドフィンガーで右肩の付け根を破壊すると、そのまま右腕を真っ二つに折る。G-セルフ・パーフェクトパックが全方位レーザーを放とうと輝き出すと、顔に蹴りを入れられ、折った右腕にあるビームサーベルで、胴体を貫通する。
G-セルフ・パーフェクトパックはその時点で輝きを失ったが、アルケオニスガンダムは右手で顔を掴み、そのまま相手戦艦の方へと向かっていった。
敵戦艦は迎撃をしてきたが、G-セルフ・パーフェクトパックを盾にして防ぎ、艦首の目の前まで詰め寄る。
既にボロボロのG-セルフ・パーフェクトパックを艦首へと投げつけ、両手には赤黒いエネルギーが球体となり、石破天驚拳の構えを取る。
アルケオニスガンダムはそのまま石破天驚拳をG-セルフ・パーフェクトパックと敵戦艦へと撃ち、バトルは終了した。
ーーー--
「…………これ、俺がやったのかよ………? 」
映像が終了し、驚愕の表情でハルカゼに聞く。
「残念だけど、君だね。それと、僕は観客席にいたからよく分からないけど、マヒルさん達が何か呼び掛けてたようだよ? 」
「っ────俺、アイツらの所へ行ってくる」
車から出て、走って会場へと向かう。まずは、対戦相手だった天山学園の所だ。
観客席に行って居ないか見てみたが、どこにもいないようだ。
「けど、まだ会場内にはいるはずだ! 」
すぐにその場から走りだし、会場内を探し回る。すると、ようやく天山学園のメンバーが見えた。
「あっ!!さっきのグズ野郎か!いったい何の用だよっ!? 」
天山学園のメンバーの一人が声を荒げてきた。やはり、さっきの試合の事だろう。あれはいくらなんでもやり過ぎだ。
「まあ待ちな。ひとまず、何か言いたそうだし。そうでしょ?カグラ レイ」
メンバーをたしなめるように、アモウが俺を見据えて言ってきた。
「ああ…………」
「倒れたときはビックリしたよ。もう大丈夫なようでよかったけど。それで、何の用? 」
その言葉に、俺は頭を下げる。
「さっきの試合は、本当に悪かった。許してくれとは言わない。けど、謝らせてくれ。本当に…………悪かった」
俺なりの、精一杯の謝罪をする。覚えてねぇとか忘れたなんて、言い訳にしかならねぇ。やったのは、紛れもなく俺自身なんだから。
「…………確かに、あれはかなり酷かった。ボコボコにされたあげくにオーバーキル。僕のメンバーも激怒したよ。けど…………」
アモウは間を空けると、自分に向かって親指で指差した。
「問題なのは、勝てそうと思って油断した自分自身だ。大人しく蹴りじゃなくビームサーベルで攻撃すればよかったよ」
「へー。よく分かってんじゃねえか」
頭を下げたまま声がした方へと視線を向けると、一人の男が立っていた。
「俺の後輩とし恥じねーように出来てるようで安心したぜ。実力だけじゃなく、人間としても上出来だ」
「サ、サカキさん!?どうしてここに!? 」
「あー………まあ俺の母校と、ハルカゼがコーチの天之川学園がバトルって聞いたからな。それで来たんだよ」
男は笑いながらアモウに言うと、下げてる俺の頭に手を乗せる。
「というわけだぜボウズ。お許しも得たんだし、いい加減頭を上げろ」
サカキと言われる男に言われ、俺は頭を上げる。
「ボウズ。お前のやった事は間違っているが、観てた俺から言えば単純に強かったぜ。これからが楽しみなぐらいにな。まあ、アモウもまだまだ負けてねーけどな」
アモウと俺の頭をグシャグシャと撫でてくるが、二人揃ってサカキの手をどける。
「そういう訳だお前ら。お前らも充分強かったぜ。まっ、アモウと比べるとまだまだだけどよ」
「ぐっ…………」
アモウの言葉とサカキという男が来てから、場の空気が変わった。殺伐とした空気から、和やかな空気になった。
「…………ありがとうな」
「気にしないでいいよ。けど、次は僕達が勝つから」
「ああ…………次は正々堂々と戦おうな」
俺はその場から去り、アマネ達の所へと向かう。
「いやー、青春してんな」
「サカキさん。本当は別の目的で来たんじゃ…………」
「ん、んなわけねぇだろ?ちゃんとバトルするって聞いてたんだからな!? 」
ーーー--
「はあ……はあ……アマネ…………皆……」
「どうしたの?コーチと一緒じゃ────」
「皆、悪い! 」
頭を下げて、アモウの時と同じように謝罪を述べる。
「…………もう、あんな戦い方はしないわね? 」
「ああ。絶対にしねぇ」
「ならいいわ。けど、もしまたやったら、アンタとのパートナー関係は無かった事にするから」
「ああ、分かった」
「ビックリしたぜ本当に…………いきなり人が変わったよーな口調になるしよ。いや元々ワリーんだけどよ。けどよかったぜ!あんま気にせず、次も頑張ってこーぜ! 」
「そうだよカグラ。結果としては勝利出来たんだし」
「…………ケンカしてたノ? 」
肩に腕を置きながら、ヒメラギが言う。それに便乗するように、アキザワも言ってきた。
てかセシリア…………お前はよく分からない状態だったのかよ?いやまあ助かるんだけどよ。
「ふん。精々気を付けるがいい」
「分かってるっつーの。…………ありがとうな皆」
ーーー--
『あ~あ~。時間が短かったから仕方ないとはいえ、立ち直っちゃったよ。てか自由野郎や雑魚やうるさい奴も、あんなバトルをしたんだからもう少し厳しくしなよ』
膝を抱えて座り込みながら愚痴を言う。
『でもねレイ…………この出来事は何度でも繰り返すよ。何度でも何度でも何度でも何度でも…………ね』
半分近くが黒く染まった空間に尻を付けて座る。
ーーー--
「はい皆、今日もお疲れ様~。明日を勝ち進めば夢弓学園と当たるかも知れないけど、上ばっか見てると足元を掬われるから、きちんと目の前の一戦に集中するようにね。じゃあ解散」
今日のスケジュールを全て終え、ミーティングをしてから解散となった。
「うーし!じゃあかえっか! 」
「今日も疲れたなぁ」
「ふん。だらしないな」
「そーだ。肉マンでも食って帰ろーぜ?なあカグラ? 」
「なんで俺に振んだよ? 」
「ワタシはダイジョウブ……」
「俺も別にいいよ」
「セシリアちゃんが行くなら私も行こう」
「じゃあ私も行くわ。カグラ君は? 」
「あー、へいへい。分かったよ。行けばいいんだろ行けば」
六人でコンビニへと寄り道し、肉マン、アンマン、ピザマンを注文し、店の外で食べる。
「さて、じゃあ食べ終わったしそろそろ帰ろうか。皆、また明日」
「遅れぬようにするのだぞ」
「ウース。カグラ達もまた明日なー」
「ああ。途中で転ばねぇようにしろよ」
「俺は子供か!? 」
アキザワ、サクラ、ヒメラギは別々の帰路で別れ、途中まで道が同じ俺とアマネとセシリアは無言で帰っていく。まあいつも通りだけど。
「あっ、そういえばカグラ君。直しといたから、明日忘れずに持ってくるようにするのよ」
「忘れるわけねぇだろ。まっ、サンキューな」
アルケオニスガンダムの入った小さなケースを受け取り、鞄の中へとしまう。
「セシリアさんにはもう渡してあるから、明日も頑張ってね? 」
「ウン……アリガトウ、マヒル」
「今さらながら、俺との扱いの差に文句を言いてぇ………」
「無理の相談ね」
「テメェ…………」
と言ったところで、分かれ道にあう。ちょうど三人共別々の道になるところだ。
「じゃ、また明日」
「またアシタ……」
「ああ。また明日な」
いつも通りのバラバラに別れ、それぞれの帰路につく。とりあえず、アイツが言っていた言葉を考えながら孤児院に帰るか。
ーーー--
「ふぅ…………一時はどうなるかと思ったけど、あの様子だともう大丈夫そうね」
天山学園との試合での、カグラ君の様子を思い出す。あの時のカグラ君は、正直とても怖かった。まるで別人のようにすら感じた。
「けど、少し厳しく言い過ぎたかしら?まあ、多分大丈夫でしょ」
大して気にする事もなく歩いていくと、突然視界が暗くなった。それだけではなく、身体中から力が抜け、地面に倒れる。
へ?何が起きたの?なんだか、頭もボヤけてきたような…………。
どうにかして身体を動かそうとするが、指一本ところか意識も遠くなっていく。
なんなのよ…………これ……。
辛うじて聞こえる誰かの声を最後に、私は意識を失った。
後書き
前々話と同じ終わり方をしてしまいました。申し訳ありません。
さて、ようやく書きたいものが近付いてきたので、このまま突っ走ってみようと思います
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