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歌集「春雪花」

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 聞けぬ声を

  想い黄昏る

    夕暮れの

 里に降りにし

     秋ぞ侘しき



 もうどれ程聞いてないだろう…記憶の中の彼の声は、何だか遠く…。

 見渡せば、日も山陰へとその身を隠し…ぼんやりとした光が滲んでいる…。

 山波は秋の装いを纏い、里へは冷たい風が吹き抜ける…。

 寒さがが染みるのか…寂しさが沁みるのか…。


 我が儘と言われても良い…彼に会いたい…。



 恋しくも

  想いは遠く

    影もなく

 花も咲かねば

   実もならざりし



 どれだけ恋しくも、彼は遠く…想いなぞ告げることも出来はしない…。

 こんな恋など叶うはずもなく…想うだけの片恋にすぎず…。

 春には花が咲き、秋には実をつけるものなのに…私は花も咲かなければ、実を結ぶことさえないのだ…。


 なのに何故…私はここにいる…?



 
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