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提督がワンピースの世界に着任しました

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第25話 ニコ・ロビンの救出

 数ヶ月前に起きたオハラ島での出来事。その時に選択した行動を、ニコ・オルビアは今でも深く後悔していた。

 彼女は結果的に、二度も愛する自分の娘であるニコ・ロビンを見捨ててしまったと考えていた。

 一度目は、考古学者として歴史の本文(ポーネグリフ)の実地調査を行うために海へ出た時。母親としての役目を放棄して、オハラという土地で育った学者として先人たちの意志を受け継ぎ、そして愛する夫の無念を晴らすために、幼い娘を一人親戚に預けて海へ出た。

 そして二度目はオハラへ戻ってきた時に、海軍や世界政府との争いに巻き込まれないように逃した時。再会したばかりなのに、泣いて嫌がり抱きつくロビンを無理やり引き剥がして、また他人に娘を任せて別れた。

 幼い子供を連れて海へ出るのは、危険があったから。自分と一緒に来ては、不幸になるから。そして、既に死ぬ覚悟を決めていたから。娘だけは、生き延びて幸せになってもらいたいと願ったから。

 色々な想いがオルビアの心の中に有ったけれど、それは全て言い訳でしかなかった。

 海へ出た後のロビンの生活振りを、クローバー博士から聞いたオルビアは深く深く後悔して、自分の行動は選択を間違っていたのだと感じていた。
 あの時に、一緒に居てあげるべきだった、と思わずにはいられなかった。

 今度こそ、娘の幸せを考えて行動しよう。

 オルビアは、現在お世話になっている平賀司令官からもたらされた、革命軍との会談で手に入れた情報、ニコ・ロビンの居場所を伝え聞いて、すぐに娘の元へと向かった。

 これから娘はどう生きていきたいのか。今度こそしっかりと話をして彼女の望むように、正しい選択をしようと心に決めていた。


***


 情報によるとニコ・ロビンが現在暮らしているであろう島へ到着したオルビア。そして今、同行者として艦娘の妙高も一緒に来ていて、オルビアの隣に並んで立っていた。

 妙高がオルビアと一緒にいる理由。それは、ロビンの元へすぐに向かおうと一人で飛び出そうとしていたオルビアに、平賀司令官は危うさを感じて、護衛のために妙高が一緒に付いていくように、と言ったからだった。

 現在二人は、その島の港とは違う場所にある海岸に降り立っていた。ロビンを保護して島を出るまでは、可能な限り島の人達に存在を知られないように、密かに行動しようと考えての事だった。

「情報によればロビンちゃんは、オハラから客船を乗り継いで、この島に逃げてきたらしいです。今は、ココ。この家の人達に保護されているみたい」

 妙高があらかじめ手に入れていた島の地図を懐から出し目の前に広げると、ある一点を指差してオルビアに説明する。

 オハラでの出来事以来、至近距離に娘が居る。オルビアは今すぐロビンに会いに行きたい、と焦る気持ちを抑えながら妙高の話をしっかりと聞いて頷いていた。
 妙高は、オルビアの反応を注意深く観察しながら話を続けた。

「ロビンちゃんは、現在も海軍と世界政府から賞金首に指定され知られていますから、事は慎重に進める必要があります」
「娘を保護した人の目的が、今のところハッキリとは分かっていない。だから、私達の存在がバレて、娘を島から連れ出そうとしていると知られたら、善意で娘を保護した人ならば連れ出そうとする私達から、娘を私達から隠そうとするかもしれない。逆に、賞金目当てなら、娘を海軍に差し出す前に連れ出そうとする私達を邪魔するかもしれない。そういうことね」

 ニコ・ロビンを救出するため現状について確認し合う。自らの心を落ち着かせようと、努めて静かに話し合いを進めるオルビア。

「まずは、この家に情報通りロビンちゃんが居るかどうか、遠距離からの目視で確認してみましょう。発見できたら、本人と接触。発見できなければ、島中を探して回る必要があります」

 妙高が行動の方針を決める。二人は行動の確認を終えて、その後は一切を話さず静かに家に向かって、隠密行動のために人目のつかないような道を選んで移動を始めた。


***


 ニコ・ロビンは、すぐに見つけることが出来た。

 民家が左右にポツンポツンと立ち並ぶ通りの先、島の地図を頼りにして、情報にあった家に向かって進んでいく。すると、その視線の先に身体よりも大きな箒を抱くように持って、なんとか掃き掃除しているロビンの様子が見えた。

 ロビンの表情は暗く、身形は遠くから見た様子だと薄汚れていると、二人は感じ取っていた。

「ロビン……ッ」

 絞り出すような、小さな声のオルビア。彼女の横を一緒に歩いていて、その声を聞いた妙高は、オルビアの後悔している気持ちを察したけれど、その事については何も触れずに、次の行動に移るように指示を出した。

「すぐに、ロビンちゃん話をしましょう」
「えぇ」

 言葉少なめで、了承の返事をするオルビア。無理やりロビンを連れて行くのではなく、まず話をしてロビンの本心を聞き出してから、彼女の今後の行動を決める為に。

 そのまま町の通りの中を歩いて、通りを歩く町人に警戒されたり、意識を向けられないように不自然にならないように、少しずつロビンの居る家に近づいていく。

「ちょっと止まって」
「っ!」

 急に声を上げた妙高の視線の先には、黒色のスーツで、手にマスケット銃を持って武装した集団が見えていた。
 二人はそっと、その集団に気づかれないように民家の影に身体を隠して、黒服の集団の観察と、辺りの観察を始めた。

「妙高、あれは政府の人間みたい。目的は、たぶん私の娘」
「まわりに、集団の仲間らしき人物は見当たりません」

 オルビアは、その黒スーツ集団が世界政府の人間だろうと当たりをつけていた、集団はまっすぐにニコ・ロビンを見ながら歩み寄っている。どう判断しても、目的はニコ・ロビンだろう。

 そして、今気づいたけれど集団の一番前にニコニコとした表情の高齢の女性が立っているのが見えて、先頭の女性はロビンに一方的に何かを言っているが、距離が遠くて二人の耳では聞き取ることができなかった。

 どう動こうか、どの場面で飛び出そうか相談しているうちに、事態は次の展開に。ロビンが一目散に、黒スーツの集団が居る反対側に向かって、つまりは、妙高とオルビアが隠れている方向へと走って来た。

「待てっ、ガキ!」
 黒スーツの集団の先頭に立っていた老女が、ロビン目掛けて汚い口調で大声を出しながら、手を伸ばしてきて彼女を捕まえようとした。しかし、その手は空を切って捕らえることはできなかった。

「ロビンちゃんが逃げてきた。オルビアは、逃げてきたロビンちゃんと合流して一緒にさっきの海岸へ行って」
「妙高は?」

「私は、少し時間稼ぎしてから向かいます。私のことは気にしないで、走って真っ直ぐ向かって下さい」
「わかった、気をつけて」

 妙高とオルビアは、そう言葉を交わすと二人は別た。

 オルビアは、ロビンに向かって走り近づいていった。その場に残った妙高は、ロビンの後を追ってきた黒スーツの集団の目前に立ちふさがった。

「どけ女」
「……」

 妙高から集団に手は出すつもりもなく、オルビアとロビンがある程度の距離まで逃げ切る為の時間稼ぎ、そのために沈黙を保った。
 そして、集団の中に居る無理やり走り抜けようとする黒スーツの前に再び飛び出して、行く手を阻んだ。

「どけっ! 命令に従わない場合は、撃つぞ!」
「……」

 沈黙を保ったまま通せんぼを続ける妙高に、黒スーツの男の一人が銃を構えて妙高に狙いを定める。
 しかし、驚きも怖がりもせずに、何の反応も示さない妙高の様子。黒スーツの集団は、苛立ち始めて、遂に銃の引き金に指を掛けた。

「撃てっ!」
 その声を合図に、妙高に向かって複数の弾丸が殺到した。 
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