僕は生き残りのドラゴンに嘘をついた
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第5話 ソラト、立ちふさがる
デュラの船の準備も済み、乗ってもらう日がやってきてしまった。
ソラトは悶々としたまま、山へ向かおうとした。
しかし、町の入口を出ようとしたら、見張りの兵士に呼び止められてしまった。
「あの山にドラゴンらしき魔物が飛んで行ったという目撃情報が入ってな。一般人は立ち入り禁止になった。まだ生き残りがいたのかもしれない。
町にお触れを出したら、ちょうどたまたまこの町に、行方不明だった元勇者様やそのパーティだったメンバーがいたそうで、名乗り出てくれた。もう討伐に向かっているそうだ。それが終わるまでは、頂級冒険者といえども入らないほうが安全だろう」
「――!」
――この前の帰り道、デュラが目撃されてしまったのか。
ソラトは、兵士の制止を迷わず無視し、山へ急いだ。
***
「デュラ!」
「どうした? ずいぶん息を切らして」
「この前飛んでるところを見られてしまってたみたいだ! 勇者たちがここに向かってる!」
「そうか……」
デュラはその知らせを聞くと、視線をやや上方向に外した。
「彼らは空に向かって攻撃することもできる。空でも地でも、私では到底勝てないだろう。以前は同胞がいたから、なんとか逃げることはできたが……。私の運もここまでかもしれない」
「なんとか、ならないんだ?」
「そうだな……。通じるかどうかわからないが、魔法で人型の魔物に化けてみよう。やりすごせるかはわからないが」
「えっ?」
デュラはそう言い終えると、瞬く間に体を縮小させた。
すると、銀色の長い髪、白い肌、豊満な胸……一糸まとわぬ若い女性の姿に変化した。耳がやや尖っているほかは、ほぼ人間と同じように見えた。
ソラトは混乱した。
「デュラ、これはどういう……」
「私が魔法を使えるのは知っているだろう? 魔法で人型の魔物に化けることもできる。ただしごく短時間だ。魔力消費も大きいので半時ももたない」
「そうじゃなくて、その姿……もしかしてデュラはメスだったの?」
「そうだが。知らなかったのか?」
「……」
ソラトからすれば、ドラゴンのオスとメスの区別など付くはずはない。
衝撃の事実だった。
その美しい姿にソラトは見とれたが、すぐにそんな場合ではないことを思い出した。
「じゃあいったんドラゴンの姿に戻って。僕は外で見張ってるから。僕以外の人間の声が聞こえてきたら、念のため変身しておいて」
横穴の近くにある、見晴らしの良いところまで出た。
すると、四人組の人間がすぐ近くまで来ているのが見えた。
勇者一行だ。
必死で入口のカモフラはしたが、相手が相手だ。どこまで通用するだろうか。
***
勇者一行が、ソラトの前に現れた。
四人の内訳は、青い鎧の勇者と思われる男、ピンクの鎧の女戦士、水色の法衣を着た男僧侶、緑のローブを着た壮年の男魔法使いだった。
「ん。きみは? もしかして生き残りのドラゴンか?」
「……」
勇者と思われる若い男にそう聞かれたが、ソラトはなんと返事したらよいのかわからなかった。
「いや、勇者殿。この者は人間ですぞ。魔物が化けているわけではないようです。ただ、すぐ近くに強力な魔物がいるのはどうも間違いないようですな」
魔法使いがそう言うと、今度は女戦士が魔法使いに声をかけた。
「前に討伐に来たときに漏れていたのか? お前が気づかないことなんてあるんだな」
「フォッフォッフォ。ワシにもミスはあります。まあ、あの後からここにやってきたか、もしくは瀕死状態で検知できなかった可能性はありますがね」
どうしたらよいのかわからないソラトを尻目に、魔法使いは杖を掲げ、目を瞑って集中する。
「フムフム。なるほど。あちらの斜面の中、ですかね」
あっさりとバレた。
――なんでそこまでわかるんだ。魔法か?
ソラトは焦った。
勇者ら四人はソラトを無視し、うまく隠せているはずの横穴に近づいていく。
――まずい。
デュラの変身も、この四人相手では恐らく全く無意味だ。
ソラトは慌てて剣を抜き、四人の進行方向に立ちふさがった。
「ま、待った」
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