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Track 2 受け取るキモチ 繋げるミライ
活動日誌8 ゆめのとびら! 2
これは前に希さんに聞いた話。
固く口止めをされているから、お姉ちゃんには話したことはない。
それが――
お姉ちゃんが理事長先生にお願いしていた学院存続の活動もスクールアイドルだったってことなのだ。
お姉ちゃんは少なくとも、踊りと言う部分に関しては努力をし続けてきたから――何もないゼロからのスタートをするには時間が足りないって思っていたんじゃないかな?
あとは単純に、ステージに立つ為の努力と覚悟が感じられなかったのかも知れない。だから反発をしていたのかも知れない。
自分なら、できる努力と覚悟があると――ううん、やらなくちゃいけないって思って提案したんだろう。
だけど、理事長先生は頑なに断った。
それは、お姉ちゃんの頭には学院存続しかなかったから――本当の意味で学院の為にスクールアイドルになろうとしているのがわかったからなんだと思う。
理事長先生は大勢の学院の生徒を見てきた。更に、ことりさんと言う同世代の娘もいる。
だからお姉ちゃんの考えもわかっていたのだろう――学院が存続出来るなら、自分のことなど構わないって。
きっと自分が了承をしてしまえば、お姉ちゃんの学院生活を縛ってしまうと――自己犠牲だけではなく、生徒会ですら巻き込んでしまう可能性もあると。
だから了承をすることが出来なかったんだと思う。
そんな時に現れた穂乃果さん達への理事長先生の対応が、自分の時とは違い寛容なものだったから余計に腹が立っていたのかも知れないけど?
確かにお姉ちゃんと穂乃果さん達は、学院存続と言う根幹は一緒だったのかも知れない。
だけど、それだけじゃない――別に理事長先生は、娘可愛さで身内びいきをした訳でもない。
と言うよりも、もしそうなら止めていたんだとも思う。
だって自分の娘が苦労しても実らないかも知れないであろう未来に、親だったら賛同なんてしないと思うし。
それが自分の責任――とまではいかないんだろうけど、理事長先生は感じていたと思う。
そんな自分の責任で娘を縛らせるなんて親なら考えないと思うから。
だけど、純粋に彼女達自身の希望が溢れていると感じていたから、理事長先生は穂乃果さん達の活動に関しては許可をしたのだろう。
当然、お姉ちゃんと同じで、学生としての犠牲を払う部分に関しては許容しなかったらしいから。
そして、穂乃果さん達にお姉ちゃんを託したのかも知れない。
きっと彼女達ならお姉ちゃんを救ってくれるって――誰に縛られることなく、自分の為にやりたいことが出来るようになれるって。
もしも生徒会が主導でスクールアイドルを始めていたら、穂乃果さん達は加入しなかったのかも知れない。そうなれば、今の私達は存在しなかったんだと思う。
別にお姉ちゃん達では成功しないって話じゃなくて、やっぱり私にとっての憧れて追いかけたいと思っているスクールアイドル μ's は――
9人だけのものだと思うし、別の形ではないんだと思う。
きっと今の私達があるのは、穂乃果さん達がいたから。
お姉ちゃんの言葉に諦めずに頑張ってきたから――お姉ちゃんを始めとする私達が救われたんだと感じているのだった。
そんな感じで、少し前のめり気味だった頃もあったけど――穂乃果さん達と一緒にスクールアイドルをやり始めて、凄く肩の力が抜けたんだって。
だけどそれで学院への愛が衰える訳じゃない。
周りのみんなと一緒に全員で学院を良くしていこうとしていた――もっと良い方向へ動き出している感じだったみたい。
でもそれは卒業と言う形で終わってしまった。
穂乃果さん達との絆、音ノ木坂学院との絆――そして、学院への愛。
すべてがお姉ちゃんから遠ざかりそうになっていた。
――まぁ、ローカルアイドル活動によって穂乃果さん達との絆は繋がってはいたんだけどね。
それでも学院への絆は『卒業生』と言う形でしか残っていないから。
だからこそ、理事長先生はお姉ちゃんへのアルバイトを申し出たんだと思う。学院への愛を繋ぎ止めていける手段として。
当然、お姉ちゃんは二つ返事で了承したのだった。
ちなみに私達の歓迎会を開いてくれた日。
お姉ちゃん達が理事長先生の所と職員室に挨拶をしに行ったのは――卒業生としてだけではなく、アルバイトをするのに挨拶をしに行ったのだと言う。
まぁ、希さんとにこ先輩は卒業生としてだし――今日、希さんが来ているのは単なる付き合いなんだって。
希さんは学院時代から引き続き、神社で巫女さんのアルバイトをしているらしいから――私達で練習しに行けば会えるかも知れないんだって。
私はコーヒーを飲みながら、お姉ちゃんの真剣な表情で叩くキーボードの音と、出来上がった書類を真剣な表情でチェックする希さんを眺めながら――
去年の生徒会室はこんな風景だったのかな? なんて思っていたのだった。
♪♪♪
「……うん、問題ないんやない?」
「本当? まぁ、あとは穂乃果達がチェックするだろうから……終わりで良いわね?」
希さんが一通りチェックを終えて、問題がないことをお姉ちゃんに伝えると――背伸びをしながら解放された表情を浮かべてお姉ちゃんは答えると、ノートPCを閉じた。
「それじゃあ、コーヒーのおかわり入れてくるなぁ?」
「あっ、亜里沙がやります!」
「良いって、良いって……ウチに任しとき?」
「はい……」
お姉ちゃんはホッと一息をついて、後ろに回した両手で支えながら、上半身を後ろに反らして、少し首を回していた。
そんなお姉ちゃんに希さんは微笑みを送ってから、スッと立ち上がりコーヒーのおかわりを入れに行こうとして声をかけていた。
私は慌てて自分が行こうとしたんだけど、満面の笑みとともに断られたのだった。
「……それで、部活の方はどう? 今日からでしょ?」
「……凄く大変だった……改めて、お姉ちゃん達の凄さがわかったよ」
「そう? まぁ、最初から思い通りに行く人間なんていないんだから諦めないで?」
「それは、もちろん! ……そうだ、今日から新しいメンバーも入ったんだよ?」
「あら? 凄いわね……」
希さんがキッチンへ向かうのを微笑みながら眺めてから、お姉ちゃんは上半身を起こし、その反動を利用して前かがみになってテーブルに両肘をついていた。そして私に向かって部活について聞いてきたのだった。
だから、私は素直に感想を伝える。
それを聞いたお姉ちゃんは少し嬉しそうに――だけど苦笑いを浮かべて言葉を繋げたのだった。
お姉ちゃんの言った「諦めないで」と言う言葉に、私は胸を張って答える。
だって雪穂と涼風ちゃんがいるんだもん。諦める訳はないんだから。
そこで、涼風ちゃんのことを思い出して、お姉ちゃんに教えてあげたのだった。
お姉ちゃんが驚きの声を上げると――
「んー? 何かあったん?」
キッチンから希さんが戻ってきながら声をかけてきた。
再びコーヒーを差し出されたので、お礼を言って飲み始める。
コーヒーを一口飲んでから――
「今日から、新しいメンバーが入ったんです!」
そう、希さんにも教えてあげた。
希さんは少し驚きつつも笑みを浮かべて――
「それは凄いなぁ……さすがに、カードにも告げられておらんかったよ?」
「…………」
そんなことを言っていた。
隣で見ていたお姉ちゃんは何とも言えない表情を浮かべている。
たぶん今の希さんは芝居をしているんだろうと思った。
特に確証はないんだけど、何となくそう思えたのだった。
その後は希さんが帰るまでの間、私達の話をしていた。
今日のこと、昨日までのこと、これからのこと。お姉ちゃんと希さんは微笑みながら聞いてくれていた。
希さんが帰ると、私も眠くなったから部屋に戻っちゃったんだけどね?
だから、実際に私が話していたのは希さんが帰るまで。特にお姉ちゃんだけに話したことはなかった。
お姉ちゃんと希さんは、とても懐かしそうに――自分達の知らない穂乃果さん達の話が聞けて嬉しそうだった。
今までは、私の方が穂乃果さん達の話を聞くだけだったのに――こうして私の方が穂乃果さん達の話をするなんて、とても不思議な感じがしていた。
でも、こうやって私もお姉ちゃんと共通の話題が出来るのは素直に嬉しいと思う。
お姉ちゃんと希さんに話をしながら――これからも色々な話が出来ると良いな? って感じていたのだった。
♪♪♪
私はお姉ちゃんの妹だ。
だけど、お姉ちゃんの在籍していたスクールアイドル μ's は私にとって憧れでしかなかった。
そう、私はお姉ちゃんの妹で、スクールアイドル μ's のファンに過ぎなかった。
だから穂乃果さん達の話はお姉ちゃんから――そして、雪穂が聞いた話を聞いているだけだった。
もちろん話を聞けるのは嬉しかったけど、私から話せることがないのは悲しかった――それは当たり前の話なんだけどね?
たぶん私はずっと――お姉ちゃんとの繋がりを探していたんだと思う。
妹として、ファンとして――そんな受身な立場じゃなくて、私からも話が出来る対等な繋がりを。
今日、私は初めてお姉ちゃんの知らない穂乃果さん達の話――新しい音ノ木坂学院のアイドル研究部の話をすることができた。
そして、お姉ちゃん達が本当に知らない『涼風ちゃん』と言う存在。
きっと彼女は、私や雪穂に素敵な風を与えてくれる存在なんだろう。
私も雪穂も、彼女との出会いの意味を見つけたいと願っていた。
今日、本当の意味で――
私達は夢の扉を開いたのかも知れない。
私の想いが雪穂と涼風ちゃんの想いに重なり大きくなって広がった。
いつか私達の瞳のレンズでみんなの笑顔を残していきたい――私達を含めて!
そんなことを思っているのだった。
希望の行方は誰にも解らないけど、私達は確かめようと、見つけようと走っていくのだろう。
その先に、きっと――新しい夢の扉が現れることを願って。
私は今日の用事を全て済ませ、自分の部屋に戻りパジャマに着替えて――ベッドに横になると音楽プレイヤーからアノ曲を選んで再生しながら目を閉じた。
私達にとって、夢の扉を開いた先にあるのが明るい未来であることを願って――夢の中へと旅立っていくのだった。
後書き
Comments 雪穂
お疲れ様、亜里沙。
入学祝いが4つもって、何か凄いね。
まぁ、私も両親から貰えたんだけどね……ちなみに、お饅頭とTシャツは別だから!
希さんの言った『勝手知ったる何とやら』なんだけど――
正確には『勝手知ったる他人の家』って言葉らしいよ?
ただ、希さん的に他人って言葉を使いたくなかったから、何とやらで誤魔化したんだろうけど?
絵里さんのバイトの話は、お姉ちゃんから聞いたんだけど驚いたよ。
でも、良かったね。
とにかく、これからもよろしくね!
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