ラブライブ! コネクション!!
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
Track 2 受け取るキモチ 繋げるミライ
活動日誌6 ゆうじょう・のーちぇんじ! 1
「うーん……」
サプライズ歓迎会の次の日。
以前の活動報告に書いた例のわだかまりもなくなり、クラスメート達と友達になった予鈴前。
そのあと授業が始まり、今は1時限目の授業が終わったばかりの時間だった。
私は教室の自分の席に座り、机に頬杖をついて、目の前の黒板を眺めながら考え事をしながら唸っていた。
私と亜里沙は昨日、正式にアイドル研究部への入部を果たした。つまり、晴れてスクールアイドルの道を歩き始めたのだった。
だけど正直な話、決意と熱意だけが空回りを起こしている状態だった。
そう、私達には何をすれば良いのかが見えていなかったんだと思う。
もちろん身近にお手本となる先輩達はいる。聞けば親切丁寧に教えてくれるだろう。
でも、それって違うような気がするんだよね? 何て言うのかな?
確かに私と亜里沙はお姉ちゃん達に憧れている。お姉ちゃん達の背中を追いかけてこの学院に入学をして、スクールアイドルを目指している。
だけど――
別にお姉ちゃん達に何かを教わる気はない。
いや、教わる気がないって言うのは嘘なんだけどさ?
最初から教わってしまえば、それは私達のスクールアイドルとは言えない気がする。
だって、お姉ちゃん達は何もないところから始めたんだから。
とりあえずは、自分達で試行錯誤しながら――
私と亜里沙の2人で話し合いながら、先を進むことを望んでいたのだった。
今後の活動方針を自分なりに考えながら、黒板を眺めている私の視界の両脇から――
突然肌色の壁が映りこんだかと思うと、そのまま私の視界を遮ってしまったのだ。
そんな真っ暗な視界になった私の耳に――
「……だーれだっ?」
とても楽しそうにそんなことを言ってきた、私の良く知る――
ううん、きっとこれから1番近くで『聴き』続けていくであろう声が聞こえてきたのだった。
「……お疲れ、亜里沙」
「…………」
「……どうしたの――」
「なんで、わかったの?」
「……は?」
とりあえず、亜里沙の文字通り――
お手製の少し暖かなアイマスクに、1時限目の授業と今、黒板を見続けていた疲労気味の目を癒していたかったのだけど?
いや、たぶん亜里沙のことだから私が答えるまで手を離さないだろうし、ね?
だけど次の授業の時間が迫っている教室内。私と亜里沙の仲を知っているクラスメートでも、ずっとこのままの状態では変な勘ぐりを起こしかねない。
私は視界が真っ暗だから、周りのクラスメートの良からぬ表情を想像してしまっていた。
いや、私と亜里沙に限って変な感情なんて芽生える、わ、け、ない、じゃん?
いやいやいや、ないから!
――本当に、ないからね?
そんなこともあるから、後ろ髪を引かれる思いで亜里沙に声をかけたんだよ。
声をかけた瞬間、私の視界を遮っていたアイマスクは役目を終えると眼前から離れる。
私は明るさを取り戻して――まぁ、目の前には黒板が広がっているから黒には変わりはないんだけど?
いつもの風景が広がる――はずなのに何故か時が止まっている錯覚に陥る。いや、亜里沙が無言のまま後ろに立っていただけなんだけどね?
私は気になって振り向きざまに「どうしたのよ?」と、亜里沙に問いただそうとしたんだけど――亜里沙がアノ表情を浮かべながら私に理由を聞いてきたのだった。
だーかーらっ! その表情はやめてってばっ!!
一瞬、気を抜いていたからゴメンナサイって言いそうになったじゃん!
まぁ、踏みとどまれたのは単純に聞かれた理由が疑問に思ったからなんだけどさ?
だって、誰だ? って聞いてきたんだよ? 亜里沙が!
だから普通に亜里沙だってわかったから答えただけ。何? 私がわからないって思ったの?
そりゃあ? 誰かが目隠しをして、亜里沙が聞いたのだったらわからないけど――さすがに手の平の感触までは覚えていないもん。
でも普通に亜里沙だけで実行したのなら、声がわからないことはないんだけどね?
他のクラスメートならともかく、亜里沙の声を間違える訳ないんだから。
どれくらいの付き合いだと思ってんの? 別に時間の長さの問題じゃなくて――
一緒に過ごした時間の濃さはお姉ちゃんと同じくらいに濃いんだからね。だから亜里沙の声なら絶対にわかると思うよ。
色々な亜里沙の声を聞いてきた私。
嬉しい声、悲しい声、驚いた声、怒った声、そして――決意の声。
そんな色々な声を隣で聞き続けてきた私なんだから――
「……わからない訳ないじゃん!」
「そうなんだ……お疲れ様、雪穂」
とりあえず正直に答えるのは恥ずかしいから、最後の部分だけを少し戯けて言い放つ。
そんな私の答えを聞いて何を納得したのか知らないけれど、満面の笑みを浮かべて挨拶してきたのだった。
次の休み時間に、今度は私が目隠しをした理由を聞いてみた。
そうしたら、いつものハラショーな行動だったらしい。
何かのマンガで描いてあったんだって! それを読んで、仲の良い友達や恋人の必須条件みたいに刷り込まれていたらしい。
ちなみにもう1つ、同じマンガで仕入れたのが『トントン……ツン』だったらしい。
あっ、後ろから肩を叩いて、振り向きざまに人差し指で頬を突くってヤツね? まぁ、不意打ちでされても対応に困るから――
「やったら……食べるよ?」
って、言っておいた。
当然何を食べるのかって聞いてきたんだけど、私は平然と――
「亜里沙の指」
って、答えておいた。
あぁ、コレね? 私も昔、クラスで流行ったことがあってね?
お姉ちゃんに実行してみたの。どうなったと思う?
肩を叩いて、お姉ちゃんが振り向いたから頬を突いた――そこまでは成功したんだけど?
そうしたら、いきなり私の手を掴んで人差し指を口に入れたんだよ?
なんかお腹すいていたからとか訳のわからない理由で!
それ以来、私はやらなくなったから効果あるかな? って思って言っただけなのに――
亜里沙ったら、やってもいないのに私の前に人差し指を差し出してきた。それも顔を真っ赤にしながら。
あのね? 私は、やらないで! って意味で言ったのですが?
これもハラショーな行動なんだと感じていたのだった。
最初は、恐る恐る差し出してきていた人差し指も――
途中から目を瞑って、決死の表情をしながら私の口元に向かって侵攻してきた。このまま口を開けるだけで召し上がれそうな勢いで!
と言うか、亜里沙は目を瞑っているから距離感が掴めていない。
当然ながら暴走機関車の如く、ブレーキ機能が備わっていないのだ。
ならば、どこかで制止させるしかない!
意を決した私は――亜里沙の暴走を文字通り食い止めるべく、人差し指を口の中で包み込んだ。
目を瞑っている亜里沙も人差し指に伝わる私の体温を感じて、侵攻を止めると同時に目を見開いた。
確かに、亜里沙の人差し指による侵攻は食い止めることが出来た。
だけど、その代わり――別の勢力による侵攻が私に襲い掛かる。
そう、恥ずかしさと言う勢力の侵攻により私の心は完全制圧されてしまったのだった。
まぁ、そもそもの話――普通に手で抑えれば良い話なんだけどね?
なんとなく口に入れてみたかったのかな? よく覚えていないや。
私が口を開けると、亜里沙は私の口の中から命からがら人差し指の救出に成功する。私も敵軍撤退が目的だったから成功と言えるだろう。
だけどお互いかなりのダメージを負っていた。しばらく顔を真っ赤にしながら俯いてしまうくらいに。
こんな恥ずかしいことを、平然と臆せず実行したお姉ちゃんは何者なんだろう?
熱い顔の火照りを冷ましながら、そんなことを考えていたのだった。
だけど、それ以上に目の前で自分達ですら恥ずかしくなる行動をしていたと言うのに、周りの反応は普通通りだったことの方が考えさせられてしまう。
まぁ、冷やかされたり、距離を置かれたりするよりはマシだけど?
普通のスキンシップに思われているのかな?
私達ならこれくらいしても何も不思議ではないの? いや、あれで?
だーかーらっ! 私と亜里沙に限って変な感情なんて芽生える、わ、け、ない、じゃん?
いやいやいや、ないか、ら、ね?
――本当なんだもん。
そんな周りの普通の反応も相まって、余計に恥ずかしさを覚えていたのだった。
♪♪♪
「うーん……」
次の休み時間。
さすがに冷静さを取り戻した私は、朝と同じように今後の活動方針を考えながら黒板を眺めて唸っていた。
「どうかしたの、雪穂――」
私と同じく、冷静さを取り戻した亜里沙は私の前まで歩いてくると聞いてきた――
「前の前の休み時間から悩んでいるみたいだけど?」
って、時間差ですか?
まぁ、亜里沙らしくて良いんだけどね?
そんな風に思いながら苦笑いを浮かべると――
「あー、うん……私達のスクールアイドル活動に必要なものをね?」
「必要なもの……確かに必要だよね?」
「――えっ? 亜里沙はわかってるの?」
「――えっ? 雪穂はわからないの?」
私の悩みを亜里沙に投げかけた。だけど、亜里沙はわかっているような口ぶりで私に返答してきた。
わかっていない私は、驚きの表情を浮かべて亜里沙に聞こうとした。すると、亜里沙は私がわかっていると思っていたらしく、同じく驚きの表情を浮かべて聞き返してきたのだった。
「……ごめん、亜里沙。わかんないから考えていたんだけど?」
「そうなの? てっきり、どうやって声をかけるのか悩んでいたんだと思っていたから」
「? ……ねぇ? 声かけるって、お姉ちゃん達に?」
「――えっ? なんで?」
実際にわからないから考えていたと伝えると、こんな答えが返ってきた。
声をかける? 誰に? と言うか、必要なものって誰かに聞くことなの?
そんなことを思っていた時、私の脳裏に1時限目の休み時間に否定した考えが浮かんだ。
でも、これは私だけの考えじゃなかったはず。だって、あの時――
お姉ちゃんの目の前で宣言したんじゃなかったの? 私達のスクールアイドルを目指すって?
と言うよりも、2人で話した時に決めたよね? とりあえず、自分達だけで頑張ってみようって?
私は少しムッとした。
亜里沙にとって私は何なのだろう。確かに頼りにならないかも知れないけれど、少なくとも一緒に歩いていくのは私だ。そんな私と決めたことを無視するの?
そして――
お姉ちゃん達は亜里沙の言葉を聞いて、私達だけのスクールアイドルを了承してくれたんだよ? もちろん、お姉ちゃん達だって聞かれれば教えてくれるとは思う。
だけど、何もないところから積み上げてきたお姉ちゃん達の苦労や努力を――そんな簡単に教えてもらうのって、凄く失礼なんじゃない?
私は、そんな感情を抑えられず怒気の含んだ声色で聞き返していた。
ところが、言われた当の本人は的を得なかった答えを聞いたような――弱冠、呆けた表情をしながら聞き返してきたのだった。
「……違うの?」
「……ねぇ?」
「な、何?」
「……私達って、穂乃果さん達に聞かないとクラスメートに声もかけられないの?」
「……は? ……どう言う意味?」
私は心意が知りたくて聞いてみたんだけど、今度は亜里沙が少し怒気を含んだ声色で聞き返してきた。
そんな亜里沙の声色に私が緊張した声色で聞き返すと――
途端にアノ表情に変化して悲しそうに聞いてくるのだった。
はい、ごめんなさい――そうじゃなくて! 何? クラスメートって??
どこから出てきたのよ???
そんな表情で疑問を投げかけると――
「だって……私達のスクールアイドルの活動に必要だから、高町さんに声をかけようとしていたんだと思ったから」
そんなことを言ってきたのだった。
ページ上へ戻る