ラブライブ! コネクション!!
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Track 1 両手を広げて
活動日誌2 あいしてる・ばんざーい! 2
「ところで……」
「「はい」」
またクールさを取り戻した真姫さんが、今度は何かを思い出したかのように普通に話を切り出した。
「貴方達って、アイドル研究部に入部するのよね?」
「はい。今日の放課後に入部届を出すつもりです」
「そうなの? なら、当然スクールアイドルを目指しているのよ……まぁ、愚問よね?」
真姫さんは私達がアイドル研究部に入部するのかを訊ねてきた。だから私は素直に答える。
その返答を聞いた真姫さんは、私達にスクールアイドルになるのか聞いてきたのだけど、自分の質問が的を得ていないことだと悟り、苦笑いを浮かべて自己完結したのだった。
確かに、私達2人の姉達は真姫さんと同じスクールアイドル μ's のメンバーだ。
だけど別に――姉達がスクールアイドルだからと言って私達がなる必要性も義務もない。
そして、アイドル研究部は別にスクールアイドル育成部ではないはずだ。だって研究部なんだから。
だから、スクールアイドルを目指さなくても――影ながら彼女達を応援するために入部したとしても、それを拒む権利はないのだと思う。それは間違っているとは思わない。
だけど――
私達にとっては、その答えは間違っていると断言できる。だって、私達はスクールアイドルになるために音ノ木坂に入学したのだから。
私はともかく、亜里沙にとって――スクールアイドル μ's の存在は姉の所属していたグループと言うだけの存在なんかじゃない。
そもそも亜里沙はまだ絵里さんの所属していない頃の――ううん、違うね?
お姉ちゃんと、海未さんと、ことりさん――まだ、3人だった頃の μ's のファーストライブの動画を見た時から今まで、ずっと憧れ続けている存在なのだ。
正直なところ、あの頃の私にはお姉ちゃんの所属するグループと言う存在にしか思えていなかった。 もちろん、応援はしていたよ? それは、本当。
でも、亜里沙ほどの愛情は注いでこれなかった気がするな?
亜里沙のお姉さんの絵里さんは、とてもバレエが上手だと言う。
当時の踊りを見たことのある海未さんは――その踊りの、人を惹きつけて魅了するパフォーマンスに魅せられて、彼女にダンスを習うことをメンバーに提案したらしい。そして当時のメンバー7人で話し合った結果、彼女にお願いをしたのだと言う。
そして、そのことがキッカケになって7人だった μ's に、絵里さんも加わり――
9人になった――希さんも入れて!
♪♪♪♪♪
番外報告。
あれ? あれあれ? 少し休憩。
これは活動日誌を書いている現在の話なんだけど。
なんかね? 日誌に『絵里さんも加わり』って書いた途端にね? いや、8人になったって書こうと思っていたんだよ?
そうしたら突然、突風が吹いてきたの!
まぁ、窓開けっ放しだから風は入るんだけど。
すごく暖かな風に気持ちよくて目を瞑っていたんだけど――風がやんだから目を開けて日誌の続きを書こうとしたら?
こんなのになってた!?
なに、それ? 意味わかんない!
一先ず、深く考えると怖いから修正しよう思って修正テープを取り出したんだけど? その途端、急に胸の辺りに悪寒が!
な、なんなの? 本当に怖いんですけどぉ?
いや、ほら、誰もいない部室で書いているから余計に、ね。
その時! 突然、生ぬるい風が私の首筋と胸の辺りに触れる。
だ、だ――誰か助けてーーーーーーーーーーー!
と、叫んだところで誰もいないんだけど、ね?
それこそ――ちょっと待っててー! なんて返ってきたら余計に怖いし。
ま、まぁ? 深く考えずに――最後の部分は見なかったことにして、続きを書いてサッサと終わらしちゃお!
♪♪♪♪♪
絵里さんの加入に関する経緯などはお姉ちゃんと――亜里沙が絵里さんから聞いた話しか知らないから、これは私の推測に過ぎないんだけど?
たぶん、絵里さんが見ていたお姉ちゃん達と亜里沙の見ていたお姉ちゃん達。きっと見方が違っていたんだと思う。
絵里さんはバレエがすごく上手――つまりは、踊りのレベルが高いってこと。
だからバレエをしていた絵里さんが見てきた周りの人達も、とてもレベルの高い人達だったんだろう。
そして絵里さん自身――自分がそのレベルに達した時点で周りを見ることが出来たんじゃないか? 余裕が出来たんじゃないかって思う。
絵里さんって、真面目で格好いい――すごく真っ直ぐな人って感じているから。
だから、そのレベルに達するまでは周りじゃなく――自分を高めることしか頭になかったんだと思う。
たぶん、絵里さんって誰よりも自分に厳しい人なんじゃないかな? まぁ、そう言う人だから生徒会長として人望があったんだとも思うし。
現生徒会長が生徒会長らしくなったのも絵里さんのおかげかな? なんてね。
だけど元々の才能があったにせよ、初めから上手な人なんていない。
でも、周りを見ずに1人で頑張ってしまうと自分の成長過程と言うか――目的だったり望むものが見えなくなるんだと思う。
ほら? 自分って1番見えないものだから――周りを見て初めて自分のことが見えるものなんだと思う。
更に、絵里さんは常にバレエと言う枠の中にいた。だから自分を含めてレベルの高い人達の表面に囚われすぎていたんじゃないかとも思う。
そう、技術とか見せ方とか――つまり、スポットライトに照らされている、その瞬間に輝くものを見ていたんだと思う。
だけど亜里沙は違う。
彼女は、そんな絵里さんを1番近くで見てきたんだ――そう、最初から。
それも純粋に、踊りの素晴らしさに魅せられていたんだと思う――常に、バレエと言う枠の外から。
だから亜里沙は純粋に――バレエが好きで、何かを伝えたくて。
想いを表現する為に踊り続ける絵里さんの内面を、スポットライトが消えたあとも見続けてきたんだと思う。
そして、そんな亜里沙だから――お姉ちゃん達の歌にとても感動を覚えたんだとも思う。お姉ちゃん達の歌に内面から溢れる想いを感じ取れたんだと思う。
そう、純粋に真っ直ぐに。お姉ちゃんの歌に込められた想いと言う名の可能性の欠片を。なんてね。
でも、それは亜里沙が凄いって話じゃなくて――そんな背中を見せてきた絵里さんの努力が凄いんだとも思える。
なんて、亜里沙に話したら怒るかな? それとも、悲しい顔をするのかな?
ううん、亜里沙だったら――とても嬉しそうに微笑むんだろうね?
そんな亜里沙が感じていたものを、私も近くで見続けてきたのに感じてこれなかった。
だけど、仕方ないじゃん? 亜里沙は絵里さんを見続けていたのだけれど、私が見続けてきたのはお姉ちゃんなんだもん!
見続けてきた対象がお姉ちゃんじゃ、亜里沙みたいな考え方なんて土台無理だもん! だって、お姉ちゃんだから。
でもね? その代わりに――私はお姉ちゃんを見続けてきたんだよ?
だから、その場で立ち尽くして踏み出せない誰かに気づいて――その人が見たことのない様な場所へ連れ出してあげる! そんな風に思える様になったんだよ?
絵里さん達の卒業間近。お姉ちゃん達は悩んで苦しんでいたんだと思う。
そして、希望と憧れを抱いていた亜里沙――私はそんな2人を見ていた。
とは言え、お姉ちゃん達の悩みはお姉ちゃん達で解決するものだ。それは、私が口出しすることでも、結果を急かせるものでもない――お姉ちゃん達が自分達のペースで納得のいく答えを出すものだから。
だけど、それでは亜里沙は先に進めない――仮に加入が出来たとしても、そこに彼女の居場所はないんだと思った。
そんな亜里沙を私は――その場で立ち尽くして踏み出せないように感じていた。
だから私は亜里沙を呼び出して、1つの提案を申し出たんだ。
「2人で私達のスクールアイドルを目指そう!」
って。
亜里沙は内面に溢れる想いを感じ取れる子だ。だから、私の想いを感じ取って了承してくれたんだろう。
そんな風に私の想いを感じ取ってくれたから――お姉ちゃんと向き合い自分達の進む道を話した時、とても前向きで希望に満ち溢れた表情でいられたんだと思う。
お姉ちゃん達を見続けてきた私達――だけど、私達はお姉ちゃん達だけを見続けてきた訳じゃなかったんだ。
亜里沙は私を見続けてくれた。だから、私が引っ張った手を振り払わずに――自分の足で、一緒に前へ進んでいくことを決めた。
そして、私は亜里沙を見続けてきた。だから――
私もお姉ちゃん達や亜里沙の内面の想いや伝えたいことに惹かれて――私自身がスクールアイドルに憧れて、自分の足で前へ進み出せた。
亜里沙と一緒にスクールアイドルを目指そうと思えたんだって考えている。
私と亜里沙は同じような環境だった。
姉がスクールアイドルのメンバーなこと。姉の背中を見続けてきたこと。同じ中学だったこと。スクールアイドル μ's を応援していたこと。
共通点は多かったと思う。
だけど、決して――2人が今、こうして互いの隣にいられる理由にはならない。
私達が一緒にいられる理由。
それは、お互いを見続けていたから――お互いに惹かれあっていたから。
そう、親友だったから――それだけなんだろう。
そんな2人だから――
一緒に前へ進む為、私達のスクールアイドルを始める為。
スクールアイドルになる為に音ノ木坂に入学したのだった。
♪♪♪
私達の心境と言うか意気込みのようなものは、お姉ちゃんや絵里さんには話をしている。別に周りに隠すような話でもないから、特に口止めもしていなかった。
だから、お姉ちゃん達の口から他のメンバーに伝わっていてもおかしくはない。当然真姫さんも知っていたんだろう。
それが真姫さんが的を得ていないと悟り、自己完結した理由だと思う。
「……貴方達、腕立て伏せって出来る?」
「「えっ?」」
真姫さんは唐突に、そんなことを聞いてきた。私達は驚きつつもその場で腕立て伏せを始める。
「……あら? けっこう出来るのね?」
真姫さんは少し驚いて、そんな風に言った。
だけど、すぐさま含み笑いを浮かべると――
「それなら、その状態で笑顔が作れるかしら?」
そんなことを言ってくる。
「「…………」」
私達は驚いて顔を見合わせる。そして、同時に微笑みながら――
「「~♪」」
「……えっ!?」
笑顔で μ's の――さっき真姫さんが幸せそうに弾き語りをしていた曲のリズムに合わせて、腕立て伏せをしながら歌い始めたのだった。
当然そんなことをするとは思っていない真姫さんは驚きの声をあげる。
私達はそんな真姫さんを笑顔で見上げながら、1曲歌いながら腕立て伏せを続けるのだった。
「……本当に驚いたわ。突然言っただけなのに……いきなり、そんなことが出来るなんて、ね?」
1曲歌い切って、腕立て伏せをやめて立ち上がった私達に心底呆れた様な表情で声をかける真姫さん。
「あはは……実を言うとですね?」
私は苦笑いを浮かべながら、事の真相を伝えるのだった。
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