提督がワンピースの世界に着任しました
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第24話 反世界政府同盟
ある島の一室で、世間を騒がせている革命軍のトップであるドラゴンと名乗る男、最近海軍から指名手配を受けて噂されるようになった俺、それとクローバー博士の三人が向かい合って座っていた。
さらに部屋の中には三人の他に、向こうはドラゴンの護衛と思われる男が一人、部屋の中で唯一の女性で俺の護衛を引き受けてもらっている艦娘である加賀が一人。総計五人だけが部屋の中に居て、ごくごく少人数での話し合いが行われていた。
この話し合いの目的は、革命軍と大日本帝国海軍を名乗る2つの組織がが手を組むのかどうか。
向こう側は、話し合いを行いたいと要請してくるぐらいには積極的な様子。こちらまだ、革命軍については伝え聞く噂ぐらいしか知らないので、判断するには情報が足りなくて、どうするべきか悩んでいる状況だった。
革命軍のドラゴンは俺達に色々と語った。その話の内容は、天竜人と呼ばれる特権階級による暴虐的行為、そしてその傘下に居る世界政府の横暴ぶり、世界政府の思惑で動かされている海軍の行動、海軍の各地での腐敗ぶり等など、現体制に対する批判的な事実を的確に言い連ねていった。
彼は無表情なのに、その獣を思わせるような鋭い目つきに顔半分を覆う大きなダイヤ型の入れ墨によって、見た人に暴力的な性格なのだろうという印象を与えていた。
だが実際は暴力的とは違うようで、巧みに言葉を操る名演説ぶりから知性を感じていた。そのギャップによって、話を聞きながら内心では驚いていた。流石に組織のトップを担っている人物だ、と思わずにいられない。
また、ドラゴンの語る世界の現状について驚いていた。原作知識で知っているシリアスシーンも有るけれど、基本的にはコメディ色の強いワンピースの世界とは大きく違うのだと、彼の語る話によって俺は思い知らされていた。
海軍の腐敗ぶりの一端は、斧手のモーガンや、アーロンと手を組んでいたネズミ大佐の行い等を漫画を読んで知っていたつもりだったが、それは世界でもほんの一部の事らしく、俺の知らない場所ではより大きな悪が蠢いているらしい。
特に、ドラゴンの語る天竜人の振る舞いは、話を聞いただけで反吐が出る思いだった。
「今語った理由によって、我々革命軍は政府打倒を目標としている。その目標達成のために、あなた達には是非とも協力していただきたい」
ドラゴンの熱弁は、その言葉によって締めくくられた。そして、俺たちに協力の要請を飾っけもなくストレートに出してきて、こちらに判断を委ねられた。
俺は今聞いた情報を吟味しながらも、ドラゴンから出された同盟の提案には即答はせず、質問を始めた。
「なぜ、俺たちに協力の要請を?」
「今やあなた達は、オハラ島の出来事によって世界政府の敵として認識された。しかし、それは世界政府の奴らの都合の良いように捏造された嘘の事実だ。世界政府に陥れられたあなた達は、彼らに対して歯向かうべき資格がある。そして、革命軍には世界政府を打倒するという目的がある。我々は、協力し合える存在だ」
俺の質問にドラゴンは間を開ける事もなく、即答した。言っていることに嘘はないだろうと、彼が答える様子からそう感じていた。続けて質問する。
「協力とは、具体的には何を?」
「革命軍は、未だ小さな集まりでしか無く、力も弱い。だから世界各地で協力者を集めようと我々は動いている。ソレに協力して頂きたい。あなた達は、オハラ島のバスターコールから数百人の学者を引き連れて一人残らず助け出し生き残った。その事実があれば、革命軍により多くの協力者が集まるだろう」
ドラゴンは、オハラ島の出来事、そして生き残った俺達を革命軍による仲間集めの広告塔として利用したいらしい。その事を包み隠さず語ったのは、彼なりに誠実さを示す為だろうか。
「それと革命軍に寄せられる、色々な問題の解決も手伝って欲しい。依頼を受けてくれれば、あなた達の望む報酬は出来得る限り支払おう。もちろん、そちらの判断で依頼を受ける、受けないという事も決めてもらっていい。あくまで、世界政府打倒という目標を達成するための、仲間同士だという認識が欲しい」
「同盟を望む内容は分かりました。しかし、私たちは世界政府とは今のところ極力争わないようにしよう、という考えがあります。世界政府と敵対する、世界政府をこの世から無くす、という事までは求めていません。だから、我々が革命軍に協力するメリットは少ないと思うんですが、どうですか?」
暗に争いごとは勘弁してくれ、という事を言う。すると、しばらく無表情で考える素振りを見せるドラゴンだったが、次のように答えた。
「先程も言ったが世界政府は、既に貴方を敵とみなして世界中に指名手配書を配布しただろう。争いを望まなくても、世界政府側は既に大日本帝国海軍に対して臨戦態勢だ」
ドラゴンの考えは、いちいち尤もだと思う。こちらが争い事を避けようとしても、向こうが戦う姿勢であれば、いずれぶつかる可能性はあるだろう。
「あなた達には、革命軍が集めた世界中の情報を逐次共有させましょう。そうすれば、世界政府に先んじて行動することも出来るはず」
革命軍の持つ諜報能力が、どれくらいなのか分からない。だが、情報元が今のところ新聞ぐらいしか伝手がない俺たちにとって、世界中から集められるというのは非常に魅力的だった。
話を聞いた瞬間に、これは彼らと手を結ぶべき理由の一つだと感じていた。
横に座るクローバー博士の方に目を向けると、彼は一度頷いて黙ったままだった。事前に打ち合わせていた通り、どうするかは俺の判断に任せる、ということだろう。もう一度、正面を向いてドラゴンと顔を合わせる。
「分かりました、同盟関係を結びましょう」
「我が仲間よ」
ニヤリと笑ったドラゴンと俺とが手を取り合って、話し合いは終わった。
この瞬間に、世界政府を打倒を目的とした革命軍と、大日本帝国海軍を名乗る俺たちとの同盟関係が結ばれることになり、世界政府と海軍本部との敵対関係であると明確になった。
そして、革命軍は早速俺たちに向けて一つの情報を持ってきてくれた。それは、ニコ・ロビンの現在の居場所という、クローバー博士やロビンと交友のあった学者達、そして何よりも母親であるニコ・オルビアにとって何事にも代えがたい、心から求めていた情報だった。
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