歌集「春雪花」
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待ちにしも
契りなかりき
君なれば
忘らるることの
身をば虚しき
どれだけ待とうとも、何の約束もない…。
彼はきっと…私のことなぞ心の片隅にも置くまい。私は所詮、過ぎ去る時へと埋もれ行くもの…。
忘れ去られるだけならば…今すぐにでも消えてしまえたら楽と言うもの…。
虚しいだけのこの身を…どうしたら良いのだろう…。
日溜まりの
落ちにし影も
寂しける
秋に染まりし
里眺むれば
日溜まりに落ちた自分の影…それは何故だか、とても寂しく見えて…。
山々は少しずつ色付き始め、空はただ高く…稲刈りの終えた田には、気儘に蜻蛉が飛んでいる…。
当たり前の風景…その当たり前さが、私の心を尚も寂しくさせる…。
そう…ここにある影は、たった一つなのだから…。
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