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真田十勇士

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巻ノ六十 伊達政宗その十三

「どうにもならぬ」
「ではこのままでは」
「内から崩れる」
「そうなりますか」
「そうしかならぬ」 
 最早とだ、氏直は無念の顔で答えた。
「これではな」
「では」
「若殿はやはり」
「大殿に」
「何度も申し上げよう」
 苦渋に満ちた顔で言った。
「そして家だけはな」
「守りますか」
「北条家を」
「そうしますか」
「そうしようぞ」
 こう言うのだった、そのうえで。
 氏政の下へ向かう、その夜のことだった。
 幸村は信之に呼ばれてあることを告げられた、その告げられたことはというと。
「忍城にですか」
「そうじゃ、わしと御主がな」
「軍勢を連れてですか」
「援軍に向かえとのことじゃ」
 このことを告げるのだった、弟に。
「そうなった」
「そうですか、では」
「明日の朝発つ」
 信之は弟に告げた。
「そうするぞ、わかったな」
「はい、それでは」
「日の出と共に発つが」
「飯は、ですな」
「朝は干し飯じゃ」
 これを食うというのだ。
「そのうえで進むぞ」
「一刻も早くですな」
「発つ」
 飯を炊いて食うと時間がかかる、だから干し飯を食うというのだ。
「よいな」
「わかり申した」
「そしてじゃ」
 さらに言う信之だった。
「忍城に着いたらじゃ」
「はい、石田殿そして義父上と」
「我等は浅野殿の下に入る」
 秀吉の重臣の一人である彼の下にというのだ。
「そのうえで戦う」
「浅野殿のですか」
「浅野殿からの要請じゃからな」
「我等を忍城にというのだ」
「そうじゃ、忍城は滅法手強くてな」
「まだ陥ちておらぬとは聞いています」
「そうじゃ。水攻めを防ぎ」
 そしてというのだ。
「それからもな」
「防いでおられるのですか」
「だからじゃ」
「我等もですな」
「援軍に行くことになったのじゃ」
「甲斐姫ですか」
 忍城のその猛者の名をだ、幸村は言った。
「あの姫とも会いますか」
「腕が鳴るか」
「必ず勝ちそして」
「そのうえでじゃな」
「忍城も攻め落とします」
「ではな」
「参りましょう」
 その忍城にというのだ、幸村は信之に応えて言った。そのうえで二人は今は家臣達と共に寝てだった。日の出と共に干し飯を食ってすぐに忍城に向かった。


巻ノ六十   完


                     2016・6・5 
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