魔法少女リリカルなのは~無限の可能性~
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第3章:再会、繋がる絆
第67話「休息の間に」
前書き
キャラ全体に見せ場をやりたい...。(ただし織崎除く)
ちなみに優輝のリンカーコアは霊力のおかげで常人の二倍以上のスピードで治ってます。
=優輝side=
「....とりあえず、できる限りの手を尽くしました。後は安静にしておけば徐々に治っていきます。見た所、安静にさえしておけば、確実に完治させる事ができるでしょう。」
「ありがとうございました。」
医務室にて、リンカーコアを診てもらい、そう判断を貰った。
...そんな状態で一度魔法を使った事はさすがに話していない。
「さて...。」
「やりたい事って、結局なんなの?」
「ん?まぁ、ついてきなって。」
疑問に思い続けるユーノと椿を連れ、アースラでの僕の部屋へと移動する。
「さて...と。椿、霊脈は?」
「...さすがに繋がってないわね。」
「そうか。...まぁ、そのための御札と魔力結晶なんだけどね。」
霊脈が繋がっているのなら、霊力の心配がほとんどないけど、これは仕方がない。
...って、あれ?
「...地球から離れる事で霊脈の恩恵が受けれないなら、神降しは?」
「あ....。」
...やばい。地球の...それも日本の神を降ろした所で、異世界にまでその力を持っていけるとは思えない。
「....偽物との決着は...まぁ、大丈夫として、司さんはきついな。」
「一応、少しの時間なら降ろしたままで行けるだろうけど...盲点だったわ...。」
これだと、偽物との戦いは地球の地前提だな。
「神降しって...?」
「他の次元世界にはないか?神様の力をその身に降ろして行使するっていうのだが...。」
「...うーん...似たようなのはあったかなぁ...?」
まぁ、探せば案外他の世界でもあったりするだろうな。
「...って、今はその事で悩んでる場合じゃなかった。リヒト、シュライン。」
〈はい。〉
〈いつでもどうぞ。〉
リヒトとシュラインに呼びかけ、リヒトから魔力結晶と御札が出される。
シュラインは机の上に佇むように舞い降りた。
「何を...。」
「ユーノ、シュラインが宿っているジュエルシードに異常が起こらないか、よく見ていてくれ。何か起これば対処を頼む。」
「優輝!?」
まるでこれからジュエルシードに何かするかのような言い方に、ユーノは驚く。
...“ような”ではなくて実際するんだけどね。
「椿はまだ魔力を扱えない。かといって、僕だと対処する暇がないからね。」
「一体何をするつもり?」
大体何をするのか察しているだろうに、ユーノはそう聞いてくる。
...察しているからこそ、聞いてるのか。
「ジュエルシードを元の状態に戻す。」
「元の...って事は、願いを歪める事のない...天巫女が所持していた時の?」
「ああ。シュラインが宿っている今、それが可能だ。」
そして、一つさえ変質していないジュエルシードがあれば、他のも直せるしな。
「でも、ロストロギアに干渉だなんて...。」
「不法所持と無断使用が禁止なんだろ?所持はリンディさんとクロノから既に許可を貰ってるし、使用してる訳じゃないからな。」
飽くまで解析と修正だ。多分法には引っかからない...はず。
「いや、もうこの際そこには目を瞑るよ。問題は...。」
「直せるかどうかなら安心してくれ。既に大体は把握してある。」
「えっ?」
僕の言葉にユーノは固まる。
...あぁ、そっか。ユーノにとっちゃ、“ロストロギアを既に解析してある”って言ったのと同義だもんな。普通は驚く。
「ジュエルシードはシステム的な構造をしていないからな。そうやって視点を変えて解析をすれば、大体は分かる。」
「そういうものではないと思うけど...。」
「生憎、解析魔法は得意でね。」
創造魔法があるからこそ、ものの構造を視る解析魔法も得意になっている。
だからジュエルシードがあんなに早く解析できたのだろう。
「とにかく、これから集中する。異常があれば対処してくれ。」
「わ、わかった。」
霊力を用いて魔力結晶の魔力を操り、魔法を行使する。
ジュエルシードに解析魔法を通して干渉し、“歪み”に手を加えていく。
「っ......!」
マルチタスクをフル活用し、周りが一切見えなくなる程に集中を高める。
普通の所には触れず、異常な所には刺激を与えずに直していく。
「(ここは後回し、こっちはこうして、これは魔力を流しながら...。)」
魔力を流し、整え、正していく。
時限爆弾のコードを切って解体するかのように、細心の注意を払いつつ順番に“歪み”を少しずつ直していく。
「(制限時間は10分余り。...このペースなら、行ける...!)」
“流れ”が掴めてきたので、さらにペースを上げる。
そうして、僕はジュエルシードの修復に没頭した。
「っ.....は、ぁっ....!」
まるで止めていた息を再開するかのように、息を吐く。
それと同時に、魔力結晶の魔力が切れ、僕の干渉は終わった。
「っ、ぁー...頭使いすぎた...。」
「...それで、結果はどうなの?」
椅子の背もたれにぐったりともたれ、反るように後ろを見る。
そこで椿が結果を聞いてくる。
「....シュライン。」
〈.....完璧です。まさか、こんな短時間で直すとは...!〉
「...って訳だ。疲れた...。」
そういう訳で、ジュエルシードⅠは無事修復が完了した。
内部構造は暗記していないが、正常に戻った今ならリヒトとシャルでも解析できる。
シュラインもいる事だし、構造は後で記録しよう。
「....え?...え...?」
...あ、ユーノが信じられないような目で見てる。
まぁ、仮にも“失われた技術”だもんなぁ...。それを完璧に直すのには驚くか。
「シュラインだけで何ができる?」
〈大した事はできませんが...。優輝様のリンカーコアの治癒を促進させる事ぐらいはできます。〉
「そう?じゃあ、頼む。」
〈では...。〉
一度シュラインが淡く光、僕の胸辺りが温かくなる。
...なるほど、“治す”という意志を魔力に浸透させ、それを僕に送ってるのか。
「やっぱり、“治す”事に特化させれば霊力より効果が高いな。しかも併用できる。」
「なら、次の戦いで優輝は魔法を使えるのかしら?」
「どうだろうな。いつ戦闘になるかで変わるが...。」
少なくとも無理すれば使える。...とは口に出さない。
どうせ、リヒトと椿に止められるし。
「ゆ、ゆ、優輝!?個人でロストロギアを...それも完璧にって!?」
「あー、その、なんだ。落ち着け。」
パニックになったユーノをなんとか落ち着かせる。
「確かにジュエルシードはロストロギアに分類されるけど、その実態は“失われた技術”というより、レアスキルの集合体や塊みたいなものだ。」
「レアスキル...いや、確かにそうだけど...。」
「デバイスやミッド式、ベルカ式のようにシステム的な側面はあまりないから、そこも他のロストロギアと違う。...そこは分かるな?」
「う、うん。...だからって干渉できる気がしないけど。」
まぁ、僕も前世がなければこんな事はできなかっただろう。
ムートとしてなら、ベルカ式を主軸に考えてどうしてもシステム的な見方をしてしまう。
前世を経たからこそ、違った見方ができたのだろう。
「じゃあ、一つ聞くけど...レアスキルはシステム的な側面はあるか?」
「え...あ!?レアスキルによるけど、解明されてない...!」
炎熱変換のように魔力を何かに変換するレアスキルは解明されているが、それこそ司さんのレアスキルや、僕の創造魔法も解明されてない。
「だからこそ、レアスキルを以って干渉すれば...。」
「な、なるほど...って言えないよ!?」
さすがに納得できないとユーノは言う。
いや、説明はここで終わりではないんだけどね?
「まぁ、つまりだ。さっき言ったように、解明されていないレアスキルなら、同じ概念的な側面を持っている場合があるんだ。」
「...同じ概念的側面を持っていれば、干渉も容易い?」
「ジュエルシードと僕限定でな。“創造”を活用すれば、“祈り”が変質したジュエルシードを正しい状態にできる。」
僕とジュエルシードの性質の相性が良かったからこそ、できた事なんだよね。これ。
「ジュエルシードの歪んだ部分を、“正しくあれ”とレアスキルを使って魔力を通せばジュエルシードの性質も相まって自然と直せるんだよ。だから直せたって訳。」
「...うーん...上手く理解でいないんだけど...。」
「言葉では説明しづらいからね。...ただ、相性が良すぎたから直せたって思っていればいいよ。どんな変質をしたにせよ、ジュエルシードには“元の状態”があったんだ。その名残から“創造”しただけだよ。」
口では言えるが、実際やるとなると途轍もない集中力がいるけどね。
「こればっかりは理論よりも感覚で理解してもらうしかないかな。」
「...とにかく、優輝がとんでもない人物だって事は理解したよ。」
「....そりゃどーも。」
...自覚してるけどさ。自分が普通じゃないって事ぐらい。
でも、面と向かって言われるとちょっと胸に来るなぁ...。
「...で、この事はクロノに知らせるの?」
「一応な。切り札にもなるし。」
ジュエルシードにある膨大な魔力を撃ちだすだけでも相当な威力になるしな。
「何よりもリンカーコアを早く治せるのが大きいわね。」
「そっか。一応便宜上はロストロギアだから、許可を貰わないと使えないもんね。」
「そういうことだ。」
さっき少し使ってしまったことは気にしてはいけない。
「じゃ、早速行ってくるか。」
「あ、私もついていくわ。」
「僕も行くよ。」
そういう訳で、三人でクロノの元へ向かう事となった。
「では、もうすぐなんだな。できるだけ急いでくれ。」
クロノのいる部屋の前に行くと、誰かと通信していた。
とりあえずノックしてみる。
「入っていいぞ。...って優輝達か。」
「誰と通信してたんだ?」
「はやて達とだ。明日の朝には来れるそうだ。...君の両親も、な。」
「母さんと父さんも?」
戦力が多いに越したことはないが...。
...まぁ、久しぶりに会えるからいいか。
それに、母さんと父さんはデバイスなしでも連携でクロノ以上の強さを発揮するからな。
二人曰く、プリエールでの生活で鍛えられたそうだ。
「それで、君達はなんの用だ?」
「クロノにシュラインの...ジュエルシードの使用許可を貰いに来たんだ。」
「...内包されてる魔力を使う気か?」
「いや、ちょっと違う。」
クロノに対し、どういう事か説明する。
...あ、頭抱えた。
「どうして君はそう...規格外な事ばかり...。」
「相性がいいとしか言えないな...。」
大きなため息を吐くクロノに、そっとユーノが肩に手を置く。
「...諦めも、時に重要だよ。」
「お前な...。」
なんでそんな二人共疲れ切った顔をしているんですかね?
...いや、自覚あるけどさ。
「それで...どうなんだ?」
「はぁ...。まぁ、いいだろう。暴走の心配もないし、何より優輝が使うなら危険性はないだろう。それに、リンカーコアを早く治せるなら便利だしな。僕から申請を出しておく。」
「助かる。」
さて、許可も貰えたし、後はどうするかな...っと。
「...素直に休むつもりはないのか?」
「それもいいけどな...。」
やれる事はやっておきたい。備えがしっかりしておいた方がいいしな。
確かに、休む事も必要だけど、それは霊術とかで誤魔化せるし。
「とりあえず、適当に歩きながら考えてみるよ。」
「無理だけはするなよ。」
「分かってるって。」
とりあえずクロノの部屋を出る。
...って、椿ずっと黙ってると思ったら霊力で色んな術式組んでたんだな...。
次の戦闘のため、御札を作っていたのか。
「...あ、思い出した!」
「えっ?こ、今度は何を...?」
ふと椿が作業しているのを見て、つい声を出してしまう。
...ユーノ?驚くのは分かるが、どうしてそんな“何やらかす?”って顔してるんだ?
「一つ例えを出そう。普段はハサミで紙を切っていたけど、ある時ハサミがない。代わりにあったのはカッターだ。どうする?」
「そりゃあ、カッターで紙を...。」
「当然代用するよな?それと同じように、魔力を霊力で代用して、リヒトに通せないかなって考えてさ、前から試してたんだよ。」
試し始めたのは司さんの事を思い出す数日前。
さすがに簡単に成功する訳ではないので、今まで失敗してきたが...。
「どうだ?リヒト。」
〈一応、あれから少しずつ適応させてきました。そして、マスターが連戦で霊力のみ使用していたので、おそらく...。〉
「よし!なら早速トレーニングルームで試そう!」
思い立ったが吉日。早速僕はトレーニングルームへ向かった。
「あ、ちょっと優輝!?」
「きゃっ!?あ、術式が!?」
...試行錯誤を繰り返してたのが成功するからか、テンション上げすぎた...。
ごめん。椿...。
「それじゃあ、試すぞ。」
〈はい。....ヌメロフォルム。〉
リヒトの形そのものは変わらず、剣のままだ。
しかし、霊力を扱っている今の僕の手に、よく馴染むような...。
「ユーノ!的、出せるか?」
「防御魔法でなら...。」
「威力も試せるからちょうどいい。」
そういうと、ユーノが上手く術式を組み立て、空中に防御魔法がいくつか現れる。
「まずは...“霊弾”!」
リヒトに霊力を通し、魔力弾の要領で撃ちだす。
「え、あれっ!?」
「...おお、成功した...。」
霊力版の魔力弾はそのままユーノが用意した的を貫通する。
「う、嘘...?術式がごっそりと削られた...。」
「...しかも霊力の効果はそのまま...と。」
魔力を打ち消す効果を持つ霊力による攻撃だからか、ユーノの防御魔法も的代わりだとしても貫通してしまうほどだった。
〈っ....、しかし、今はまだ安定しないようです...。〉
「そうか...。まぁ、不意打ちには役に立つ...か。」
偽物に対してはあまり期待できないが、暴走体相手には有効だろう。
「...で、創造魔法は....。」
魔法と同じように、ただし使うのは霊力で創造魔法を発動させる。
すると、大した違和感もなく、剣を創造する事ができた。
「...これで手数は増えたな。」
〈ただし、やりすぎは禁物ですよ?〉
「分かってるって。リヒトにも負担がかかるしな。」
それでも霊力が魔力の代わりに使えるのは大きい。
...さて、やりたい事は終わらせたし...。
「....よし、折角トレーニングルームに来たんだし、体動かしておくか。」
ここの所、連戦続きで適度な運動ができなかったからな。
「付き合うわ。」
「ユーノは見ていてくれ。」
「うん。...さすがに混ざろうとは思えないよ。」
...まぁ、今僕と椿が持っているのは剣と短刀...どう見ても近接戦だ。
ただでさえユーノは攻撃手段に乏しいのだから、参加する訳ないよな。
「じゃ、いつも通りで行くか。」
「ええ。いつでもいいわよ。」
いつも通り...つまり霊力などの強化なしで、降参するまでという感じだ。
「....シッ!」
「っ!」
ギィイン!
踏み込み、一気に間合いを詰めた突きは、短刀で少し逸らされただけで回避される。
そこへ反撃である短刀の一閃が迫るが...。
「...まぁ、ここはいつも通り...ね。」
「何番煎じって感じ...だなっ!」
それを空いてた片手で持ち手を防ぐ事で攻撃を止める。
そのまま弾かれるように、一度間合いを取る。
「はぁっ!」
「シッ!」
突きを受け流すような相手に、先程と同じ攻撃はNG。
元々、僕の戦い方にはあまり向いていない。
よって、今度は斬るように振るう。
ギギギギギィイン!
「はっ!」
「甘いわ!」
「なんの!」
剣を振るう勢いで足払いも仕掛けるが、それは躱され、逆に上からの強力な一撃が来る。
それを剣で逸らし、殺しきれない勢いを利用して横に避ける。
「はっ!」
「ふっ!」
そこへ振るわれる短刀を、持ち手を止める事で防ぐ。
そして、剣を逆手に持ち、柄の部分で突こうとする。
「っ!」
「くっ...!」
しかし、それは椿の空いていた手で防がれる。
いや、それだけじゃない、これは...!?
「(しまっ...!)」
「はぁっ!」
突く際の勢いを利用し、椿はそのまま片手で僕を投げ飛ばす。
体勢を崩され、そこへ短刀が投げつけられてきたので、ギリギリ防ぐ。
「これで...終わり!」
「ぐっ...!?」
だが、防いだのは悪手で、その瞬間に椿は僕の懐い接近。
剣を持つ手首を取られ、腕に掌底が当てられ、僕は剣を取り落としてしまう。
そのまま、掌底の状態から腕を掴まれ、それを基点に椿は一回転、その勢いで僕を体重を乗せて思いっきり背中から押し倒してくる。
「導王流でも...これは防げないわよね?」
「うぐ....参った...。」
背中が叩きつけられ、追撃で固め技をかけてくる椿に、僕は降参する。
「...あー、導王流にももう慣れられたか...。」
「残念ながら賭けに勝っただけよ。どうせ、二度目は通用しないでしょう?」
確かに、椿の言う通りだ。
二度目なら、短刀を弾いた後の接近を許さないだろう。
「...軽い...運動?」
「うん。組手みたいなものだな。僕らにはこれがちょうどいい。」
「準備運動は連戦があったから必要ないしね。」
確かにユーノから見れば軽くないが、僕らにとっては軽い。
...この場に葵がいないのが違和感あるが...。だからこそ、早く助けないとな。
「二人とも...魔力使ってなくて今のなんだよね?」
「そうね。霊力も使ってないわ。」
「純粋に身体能力と技術だけだな。」
人間と式姫とじゃ、スペックが違うけどね。
「優輝は前々から接近戦が異様に強いと思ってたけど、椿はそれを上回るなんて...。」
「あ、その事だけど、それは導王流の弱点...というか、隙を突いただけよ。」
実際の所、近接戦で僕が椿に負ける事はない。
...と言っても、それは普段の時だ。時と場合によってはどんな相性も覆る。
「僕が扱う導王流の弱点は、多対一の他にもあるんだ。」
「それが日本にある合気などの“柔”の技ね。」
合気だと、既に相手...つまり僕の力を利用された状態だ。
そんな状態で相手の力を誘導させれる訳がない。...よって、導王流が使えないのだ。
他の“柔”の技も似たようなもので、導王流が使える状態に持っていけない。
「投げ飛ばしとかは導王流で防ぎようがないからね。」
「そこから導王流を封じて行けば、技術で負けていても勝てるわ。」
近接戦の技術はなくてもいいが、結局はそこまで持っていく戦闘技術は必要だけどね。
「地球って...凄いね...。魔力がないからか、色んな工夫が...。」
「ユーノもやってみるか?簡単な事なら教えられるし、自衛もできるぞ?」
ユーノは攻撃魔法に適正がないからちょうどいいしな。
「...機会があったらかな?今は今の事件に集中しなきゃ、だしね。」
「そうだな。...あ、理論だけでも教えておくよ。ユーノなら多分使える。」
教えるのは魔力を衝撃として打ち込み、相手にダメージor気絶させる技。
デバイスなしで魔法を行使するユーノなら使えるはずだ。
「今回の事件...特に僕の偽物相手には使えないけど、バインドとかで拘束した後にこれを打ち込めば、大ダメージを与えられるよ。...ただ、強すぎると危険だけど。」
「加減を考えろって訳だね。...って、これってもしかして...。」
魔力を衝撃として打ち込む所に、ユーノが気づく。
「防御魔法にも、通用する?」
「そりゃあ、通用する。効果抜群だ。」
「...なるほど...。」
...お、これはいい影響になったか?
ユーノの事だ。無駄な結果にはならないだろう。
「ちょっとこれに叩き込んでみろ。...刃には打ち込むなよ?」
「そ、それはしないよ!」
「はは、冗談だ。さ、やってみろ。」
先ほど創造魔法で創造し、椿との斬り合いにも使った剣を床に突き刺しておく。
それに、ユーノは魔力を込めた手で掌底を放つ。
「っ...やぁっ!!」
―――“徹衝”
バキィイイン!!
初めてやったとは思えない程に、あっさりと剣は折れる。
「す、凄い威力だね...。クロノのブレイクインパルスみたい...。」
「さすがにあれより威力は劣るけどな。使い勝手はいいだろ?」
例え攻撃魔法に適正がなくとも、デバイスなしで魔法がしっかり扱えるなら使えるしな。
今度母さんと父さんにも教えておこう。
「...さて、さすがにやる事はなくなったかな。」
「そうね。霊力も回復させておきたいし、休むとしましょうか。」
普段なら余っている霊力や魔力を御札に込めたり結晶にするが、今はそれをする余裕もないからね。大人しく休むとしよう。
「...ようやく休むんだね...。じゃ、僕はもう行くよ。」
「ああ。ありがとう、付き合ってくれて。」
「面白い魔法を教えてもらえたことだし、別にいいよ。...ただ、いきなりロストロギアを直すなんて真似はもうしないでくれ...。心臓に悪い。」
「...なんか、ごめん。」
普段の魔法に慣れている人ほど僕のやってる事って信じられないんだろうな...。
やっぱり、少しは自重するべきか?
「じゃあ、休みに行こうか。」
「ええ。」
とりあえずという事で、僕らは部屋に戻ってゆっくり休む事にする。
葵の事が心配だけど、それはアースラクルーの人に任せよう。
僕らだけで無茶する必要はないのだから。
=out side=
街の一番高いビルの屋上。給水タンクの上に、一つの人影があった。
傍らには、人影がもう一つあり、タンクに腰かけている。
「.....役者は明日揃う。準備も完了した。」
街を見通すように、人影...優輝の偽物は言う。
「決着は明日。ジュエルシードの位置は全て把握した。...その気になれば、今からでも動かせるな。」
「でも、それはしないんでしょー?」
偽物の言葉に、もう一人...葵が言う。
「まぁね。....だが、オリジナルが乗り越えなければ結末は同じだ。」
「絶対向こうも気づいているよ。...詰めが甘すぎるって。」
「...結局、“負の感情”を集めたとて、それだけ僕は甘いって事さ。」
「...そうだね。」
物思いに耽るように、偽物は夜空を見上げる。
「...良い月だ。この景色も、今宵で見納めか。」
「そうだろうね。」
悲しそうに...だが達観した面持ちで偽物は言う。
まるで、自分がどうなるのか承知しているかのように。
「結局、雪ちゃんを生き返らせたいのは嘘なの?」
「いや、本心さ。...誰だって、大事な人が死んだら、生き返って欲しいって思うだろう?」
「...なるほどね...。」
葵の問いに答える偽物。
その答えに、葵は何かに合点が行ったようだ。
「...あたしは優ちゃんと違って、“負の感情”が蓄積されて生まれた訳じゃない。だから、優ちゃんとは考えが違うと思ったけど...。」
「その実、変わりないって事さ。」
「結局、優ちゃんは人間らしい...けど、負の感情は持たないってね。」
そういって二人は軽く笑い合う。
...優輝達と戦った雰囲気が、まるで嘘かのように。
「.....さぁ、オリジナル。僕らが行う事、止めたければ...。」
「あたし達を乗り越えてね。」
「乗り越える事ができれば、おそらくは....。」
気持ちを切り替え、二人は言葉を紡ぐ。
優輝に挑戦状を差し向けるように、挑発染みた物言いで。
―――...全ては、我らが主を救うため...。
後書き
ヌメロフォルム…リヒトに霊力を通し、魔法のように扱うための形態。ヌメロは霊術のドイツ語(Numero)から。
霊弾…魔力弾の霊力バージョン。ただそれだけ。ただし汎用性は高い。
徹衝…魔力及び霊力を打ち込み、ダメージを与えたり昏倒させる技。使い勝手はいい。
決戦の時は近い...ように思えて、密度の高い一日になるのでまだまだ話数は増えます。
最後のは暗躍っぽい文章にしてみたかった...ただそれだけです。(できてないけど)
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