Three Roses
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第十六話 姉妹が会いその十一
「殺す、愚かなことだ」
「とかく兄弟同士は争わず」
「殺さずですね」
「そうしてですね」
「共に国を守るべきですね」
「そうなのだ」
まさにというのだ。
「だからこの国もそうあるべきなのだからな」
「それでは」
「お二方には頑張ってもらいましょう」
「融和を」
「そして王国に対してもらいましょう」
「やがてはです」
「ロートリンゲン家のものにしましょう」
国自体をとだ、側近達も言うのだった。
そしてだ、太子はまた言った。
「家族が争うことはな」
「何といってもですね」
「避けるべきことですね」
「この国は王国に対する欠かせない存在ですし」
「是非共ですね」
「まとまってもらいましょう」
「そう願っている、しかし」
ここでまた言った太子だった。
「高貴なるが故の苦しみもあるな」
「王家には王家に生まれた者の」
「そうしたものがありますね」
「お二方もそれに苦しんでおられる」
「そういうことですね」
「そうだ、兄弟姉妹でいがみ合ったり疎遠になったりする」
二人の場合は疎遠だ、衝突とまではいかない。太子もそのことをわかってそのうえで側近達に話すのだった。
「そしてだ」
「殺し合いになり」
「多くの血が流れる」
「そうしたこともありますね」
「どうしても」
「二人はその中にある」
まさにというのだ。
「そしてそれが我々の不利益になるのならな」
「止める」
「そういうことですね」
「それだけだ、さて今宵はだ」
太子は夜のことも話した。
「また妃と床を共にしよう」
「では今から滋養によいものを出します」
「それを召し上がって下さい」
「そうさせてもらう」
太子は笑みを浮かべて葡萄酒も飲んだ、赤いそれの濃厚な味も楽しんでだった。王宮の方を見続けていた、彼が今は融和を願っている姉妹の方を。
第十六話 完
2016・7・9
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