人の為に
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第八章
「政治家になられますか?」
「選挙に立候補されてはどうでしょうか」
「市会議員なりに」
「そして将来は」
国会にというのだ、だが。
彼は微笑んでだ、そう言う人達にこう返した。
「いえ、私はです」
「いいのですか」
「政治家にはですか」
「興味がないですか」
「政治家になることも人を助ける道になるでしょうが」
しかしというのだ。
「私はそれよりもです」
「むしろですか」
「今のNGOの団体で、ですか」
「働きたい」
「人の為に」
「それがいいと考えていますので」
だからこそというのだ。
「いいです」
「そうですか」
「それではですか」
「政治家にはならない」
「そうなのですね」
「政治家になれば今みたいに働くことは出来ないので」
そう考えているからだった。
「ですから」
「それで、ですか」
「このままですか」
「働かれますか」
「この団体で」
「そうしていきます」
こう言って実際にだ、彼は団体で汗を流しつつボランティアや他の慈善活動に勤しんだ。自分の仕事もしながら。
金銭にも興味はなく慎ましやかな生活だった、だが。
彼の周りには人がいつもいてだ、彼を助けてくれた。その中で赤髪の女性と結婚し子供も生まれ幸福な家庭も持った。
彼は多くの人に尊敬されたがそのことを誇らなかった、ただ人の為に働くだけだった。
その彼と違いライスは弁護士として利益を追求してだった、その中で犯罪組織とも癒着し裏金も集めていった。
そしてだ、よからぬ者達にこう言われた。
「選挙に出るかい?」
「裏から票は押さえられるぜ」
「あんた金もあるしな」
「絶対に勝てるぜ」
「そうだね」
ライス自身もこう応える。
「じゃあ選挙に出ようか」
「よし、それじゃあな」
「俺達が支援するからな」
「政治家になった時は宜しくな」
「便宜計ってくれよ」
「わかってるよ」
ライスはドス黒い笑みで応えた、そして。
実際に選挙に出て市会議員となった、政治資金はありしかも裏社会が確保している票で見事に当選した。
そしてだ、政治家になってもだった。
彼は暴利を貪り女遊びも派手にした、政治家になっても自分のことだけを考えて動いていた。その彼を見てだ。
マスコミも市民達もだ、眉を顰めさせて言った。
「怪しい奴だ」
「絶対に悪いことをしてるぞ」
「実際に悪い噂ばかりだしな」
「碌でもない連中と付き合ってるみたいだな」
「あいつは自分のことしか考えていない奴だぞ」
ここでもこうした言葉が出た。
「だからな」
「それでか」
「政治家になってもか」
「汚職とかしてるか」
「派手な女性関係もあるらしいしな」
「誰の女でも手を出すらしいな」
「あのままいけばな」
市会議員からだ、さらに地位を得ればというのだ。
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