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HUNTER×HUNTER 六つの食作法

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003話

ハンター試験第1次試験、薄暗い暗闇のトンネルを抜けた先に広がるは霧に包まれている湿原。

「ヌメーレ湿原。詐欺師の塒とも呼ばれています。2次試験会場へはここを通らなければなりません。ここのいる動物達は人間を欺いてエサにしようとする狡猾で貪欲な生き物です。うっかりしていると死にますよ。十分に注意してください」
「けっ騙されると解って騙されるような玉じゃねえぜ俺は」

自信満々に言い切るレオリオに同調するように多くの受験者は大丈夫だろうと思っているが、その自身は命取りにもなりえる。だが一部の受験者は息を呑んだ。

「騙されるなぁ!!!」

その声と共に受験者達は動物の浅知恵程度に掛かる物かと思っていた自分を後悔するのであった。

―――声と共にここへと出口の傍から這い出した来た男は酷くボロボロになりながら、サトツは偽者の試験官だと言い切った。瞬間的に広まるのは疑念の思いが駆け巡った、まさか既にっと。

「こいつを見ろ、この湿原に生息する人面猿だ!!」
「うわぁサトツさんそっくりだ!?」

男が見せたのは同じようにボロボロとなって朽ちかけているサトツの同じ顔をしている猿、この湿原に生息し人を騙して住処に誘い込んで捕食する猿だ、自分こそ本当の試験官だ!!と主張している。受験者の間にも疑問の念が入り、如何した物かと言いあっている。

「嘘、付かない方が良いぜエテ公」
「っ!?」

ボロボロになった男と死んだと思われる猿の頭部が背後から掴まれ持ち上げられた、大人一人を容易く持ち上げ嘘と言い放ったのはシャネルだった。

「な、何をする貴様!?し、失格になりたいのかぁ!?」
「嘘はいけねぇな、お前からは獣臭がプンプンする。死んだフリは止めとけよ、下手くそ過ぎる。それにお前がホンモノならハンターライセンスを見せてみろ」

シャネルの言葉に一同は一気に納得した、自分達が目指すハンターならばその証であるライセンスを持っていて当然。ライセンスはある意味では命よりも大切な物だ、それを持っていた物こそ本物になるが男は奪われて持っていないと言った。

「お前なぁ……んな簡単に奪われるんだったらハンター辞め、っ!!」

丸出しの嘘に呆れた時、突然感じた殺気。その直後掴まれていた男の顔と胸にはトランプが突き刺さり自称本物の試験官は命が終わった。

「―――これで決定♦ そっちが本物♥」

その言葉の先には指で軽くトランプをキャッチし傷ひとつないサトツが居た、ハンターの端くれであろう者がこの程度の事でやられる訳がない。それを証明する為の攻撃、それを行った男は不気味に笑いつつピエロのような顔を歪めていた。言い訳染みている訳でもなく挑発のように言った彼、ヒソカの言葉にサトツは唯淡々と答える。

「褒め言葉と受け取っておきましょう。ですが次からはどんな理由があろうとも私への攻撃は試験官への反逆とみなして、即失格とします。よろしいですね?」
「はいはい♣」
「おいピエロ野郎、俺を攻撃した理由はなんだ」

シャネルの手に握られているのは4枚のカード、偽者を攻撃する際にヒソカは同じようにシャネルにも攻撃を行っていた。カードをその場で捨てつつ睨み付ける、同時にオーラを発し威嚇も行うがヒソカはそのまま歪んだまま。

「なんとなく面白そうだったから♠」
「……なに言っても無駄だな」

肩を思わず竦めつつゴン達の元へと戻ると、サトツがこれから沼を越えていくと宣言した。騙し愛が日常として行われる湿原、気を抜けば惑わせられて命を落とす危険な道。一同は足を踏み出した、ぬかるんだ湿原を踏みしめて進む。霧は、奥へ奥へと行くほどに濃くなっていく、サトツを見失ったら最後追いつくことが出来ないだろう。

「ちくしょう何も見えねえぜ!!」
「五里霧中とはこの事か……」
「レオリオ~クラピカ~シャネル~!」

霧の奥から聞こえてくる陽気なゴンの声、この状況でも声は明るかった。緊張感という物がないというのだろうか。

「キルアが前に来た方が良いってさ!」
「ドアホ~!行けるもんなら行ってるわい!!!」
「私達に構わず先に行ってくれ!!」
「えっ~!?何とかならない!?」
「ゴン安心しろ、俺がついてる!お前たちの後をしっかりと行くさ!!」

力強く返事を返す、ゴンは一瞬考えたように間を空けると

「うん、シャネルも気をつけてね!!二人をよろしく~!!いこっキルア」
「ああ」

と遠ざかっていく声、更に霧は濃くなっていきゴン達の姿は完全に見えなくなった。辛うじて見えるのは前を走っている人間の影のみ。

「これでは何処を走っているのさえ解らないな」
「大丈夫だ、前の影さえ見失なければ……」
「無駄だな、あれは偽者だ。ほら影無くなったぞ?」
「なぁにぃ!?」

眼を凝らしてみれば先程まで会った筈の影が消えている、前を走っていた筈の物は何かによって生み出された偽物、そして目の前に出現したのは人一人はあるかという巨大なイチゴ。

「なんだなんだ!?」
「これは……」
「俺の傍から離れない方が良いぜ、来るぞ」

「うわああああああああ!!?」

周囲から響いてくる悲鳴は霧の中にまぎれている何かの存在を示唆している。クラピカとレオリオは言うとおりにシャネルに更に近づいた。そして霧の奥から顔を覗かせているそれは口に試験者を咥えながらこちらに向かっていた。

「で、デカァ!?」
「こいつらの罠だったと言うわけか!」

その正体はこの湿原に生息するキリヒトノセガメ。背中に生えたヒトニイチゴを使い、騙された人間を捕食する待ち伏せ型の猛獣である。

「落ち着け」

動揺する二人が掛けられた声、シャネルの落ち着き払っている声。

「動揺は危険を誘発する。―――おい亀公、俺と……じゃれ合うかぁ!!」

覇気が込められた一喝、同時に空気が変わりシャネルを中心とした周囲の霧が吹き飛ばされていく。霧が晴れるとたった一言、相手を威嚇するシャネルの感情が込められていた。霧の中に居た亀達は次々と咥えていた人間を捨てその場から次々と逃げ出していく。

「な、なんだ亀達が……?」
「逃げていく……?」

圧倒的捕食者に相対したかのような命の危険を感じさせれた亀達は一目散に逃げていく、一瞬にして恐怖が本能を支配し生きる為にその場から逃がした。

「うし威嚇、利いたな」
「お、おい今のお前がやったのかシャネル!?」
「ああ。威嚇した」
「い、威嚇と言うが周囲の霧さえ吹き飛ばしているぞ!?」
「まあその辺は気にしないでくれよ、さて時間食っちまったな。急ぐぜ」

そう言うと二人をひょいっと脇に担ぐとそのまま勢い良く再び包み込んできた霧の中に突撃して行った。

「お、おいシャネル!?降ろせってか道解るのかよ!?」
「解るぞ、あの試験官の臭いは覚えてる」
「に、臭いって……は、恥ずかしいから降ろしてくれ!!」
「おいおい今降ろしてダッシュすると間に合うか解らんぜ?」

顔を赤くしているクラピカはそう言われると黙った、恥ずかしいがこのまま失格になるよりはマシだと思ったのだろう。

「(は、恥ずかしいぞこれは……)」
「おっと目の前に崖があるな、飛ぶぞ」
「おいおい今何つった!?崖がある飛ぶ!?否止まれよ!!?とまれぇえええ!!!?」

レオリオの叫びはシャネルには届かずシャネルはそのまま地面を大きく蹴った。レオリオはそのまま止まれと叫び続けるがふとした時足音が全くしなくなっている事に気づく。

「お、おいクラピカ……あ、足音、してないよな………?」
「い、言われてみれば……」

先程まで聞こえていた筈の地面を蹴る音が全くしていない、代わりに響いているのはまるで風が炸裂しているかのような耳心地が良い音のみ。つまりこの状況は自分達が飛んでいるということになり得る。

「あとちょいで着地するからな」
「ええええええっっマジで飛んでるのか!!?どうやってんだお前!!?」
「んっ体術?」
「んな体術があってたまるかぁ!?」
「ハイ着陸するのでシートベルトは無いですけどショックに備えてくださーい」
「「ええええっ!?」」

霧が晴れてきたと思えたその直後、二人が感じたは落下する感覚だった。風が勢い良く肌を通り過ぎていく、間違いなく自分達は落ちている!!出来る事と言えば手でシャネルの身体にガッチリと掴む事だった。そして約3秒後、ドシィィン!!!という音と共に3人は着地した。

「とぉ~ちゃ~く、シャネル航空のご利用有難う御座いました」
「マ、マジで着いてやがる……」
「シャネル、お前は何でもありか……?」

着地した辺りは受験者が腰を下ろしたりして休憩していた、試験官のサトツが時計を見つつ待機している姿もあり間違いなく目的地であると納得せざるおえなかった。クラピカとレオリオがどっと疲れたように腰を降ろすとそこへゴンとキルアが走ってくる。

「シャネル、クラピカ、レオリオ!!やっぱりだ、空にいたのって3人だったんだ!」
「如何言う事だよどうやって空飛んでたんだよ!?」

少年というべき二人は眼を輝かせながらシャネルを凝視する。

「おうそうだぞ説明しろよシャネル!!」
「ああ、説明を求める!」
「あ~解った解った!そう詰め寄るな!!」

迫ってくる4人を退けつつ適当にそこらへんの木に背中を預けつつ休憩する、それに合わせるように4人もその周りに座り聞きの体勢に入っている。

「サトツさん、まだ時間あるよな?」
「ええ、後15分ほどで締め切るつもりです」
「ありがとう、んじゃ話すか。まず俺が空を飛んでたのは間違いない」
「あれは体術だって言ってたけどあれってマジなのかよ?」

先程聞かされた飛んだ手段、それが体術だと言われた二人は俄かに信じられなかった。人間の身体能力と技術を組み合わせた結果空を飛んだという事が納得できない。

「マジだ。俺はいくつ硬い術を使えるんだがその一つ、さっきのは月歩っていう体術だ」
「月歩?」
「そっ。簡単に言えば空気を蹴る技だ、所謂ゲームの2段ジャンプをする体術だ」
「マジかよすっげえ!!なぁそれって俺にも出来るのか!!?」
「俺もやってみたい!!」

興味津々に聞いて来たのはキルアとゴン、正確には空を飛んだのではなく空気を蹴り続けて移動しているという事だが擬似的に空を飛んでいるに等しいからか少年二人は自分もやってみたいという思いに駆られていた。

「キック力を高め続けりゃ出来ると思うぞ?俺にだって出来た位だから」
「凄いや俺にも出来るかもしれないだ!!よぉし絶対にやってやるぞ!!」
「なあなあもっと聞かせてくれよ、他にはどんなのが使えるんだ!?」
「私も興味があるな、私にも習得出来る物ならな習得してみたい」
「俺もだな。習得したいかって言うと微妙だけど興味はあるな」

この後質問攻めにあうシャネルを救うのは大きく声を張り上げ此処が第2次試験会場だと宣言したサトツであった。 
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