聖闘士星矢 黄金の若き戦士達
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262部分:第三十七話 砂漠においてその二
第三十七話 砂漠においてその二
「だからだ。私もまたそれに従っているだけだ」
「それはもう一人の叔父上も同じか?」
ふと問うてきたのだった。
「それは」
「おそらくな」
声の返答は断言こそはしていなかった。だがわかってはいるようだった。
「我が兄とはいえ。あの男の野心は始末に終えぬものがある」
「そして我が父上もだな」
男はまた楽しそうに笑ってきたのだった。
「父上も。地上を欲している」
「我等が兄弟はそれぞれの世界を持っている」
声はそれも言った。
「しかしだ。それだけでは足らないのだ」
「地上もということだ」
「その通りだ。貴殿が地上を望むのはよい」
「しかし私に隙があればということか」
「それもまた貴殿にとって悪いことではあるまい」86
声はまた楽しそうに男に語っていた。
「違うか」
「私のこの世で愛するものは」
男の声もまた楽しそうに笑っていた。その声で語る言葉だった。
「私に仕える者達と」
「そして何だ」
「戦い」
「ほう」
「そして血だ」
この三つだというのであった。
「戦いと血をもたらせてくれるのならばそれでよいのだな」
「それが叔父上であろうともな」
「よい。それでこそ貴殿だ」
声は男のその言葉をここまで聞いて納得したようだ。そうしてそれでこそなのだった。
「私が好む貴殿だ」
「その時になれば好きなだけ戦おうぞ」
声に対しても臆するところはなかった。そこに有り得ないまでの小宇宙を感じてはいてもだ。彼自身も星を包み込まんばかりの小宇宙を放っていた。
「それでよいな」
「望むところだ。それではだ」
「うむ、では間も無くだな」
「私は地上に戻る」
男の声は確信であった。
「そして私が地上をこの手に収めたそのうえはだ」
「私もまた向かうとする」
「その時を楽しみにしているとだけ言っておこう」
「既に私のこの度の身体は用意しておいた」
「ふむ」
男は声の今の言葉に応えてまた頷く声を出すのだった。
「そうなのか」
「本来の身体は相変わらずこの世界にあるが」
「叔父上も変わっているな」
男は声の言葉をここまで聞いてまた述べた。
「本来の身体を使わず常に仮の身体を使うとは。何故だ」
「私の身体は私が最も愛しているものだ」
超えは語るのだった。
「それが傷付くことはだ。何としてもあってはならない」
「だからこそか」
「神話の時代より護ってきたあの身体はな」
「だが叔父上」
男は声に対してまた問うた。
「それでは叔父上の本来の力を出し切れないのではないのか」
「私のか」
「そうだ。力は本来の身体にあってこそ完全な力を発揮する」
男が言うのはこのことだった。
「それであえてか。叔父上は仮の身体を使うのだな」
「何があろうともな」
声の決意は絶対のものだった。そこから感じられるものは。
「それは変わらない」
「考えてみれば本来の身体であったならばだ」
男の言葉は考える色も入ってきた。
「アテナに傷付けられる恐れもあるな」
「その心配はない」
声はその件については頭から否定するのだった。有り得ないといったように。
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