聖闘士星矢 黄金の若き戦士達
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253部分:第三十五話 持ち越される決着その七
第三十五話 持ち越される決着その七
「一つトラキアの方から感じ取ったものがあります」
「感じ取ったものだと?」
「そうです。トラキアには今現在多くの禍々しい小宇宙が集まっていますが」
「狂闘士達のだな」
「そうです。それです」
彼が言うのはまさにこのことであった。
「それが四つ増えたようであります」
「四つか」
「そしてその四つが何やら不穏な動きも見せています」
こう話すのである。
「どうやら」
「妙だな」
シオンはシャカの話をここまで聞いたうえで述べたのだった。
「それはまたな」
「どう思われますか、これは」
「まずその小宇宙はただの小宇宙ではない」
これは言うまでもないことであった。すぐに見抜けるものであった。
「魔神を司る者達のものか」
「その通りかと」
やはりそれしかなかった。考えられることは。
「それが四つ生じております」
「そうか。四つか」
「まず八大公のものと思われる強大な禍々しい小宇宙が感じ取られ」
シャカの言葉は続く。
「そして数は減りましたがそれに続く小宇宙が感じられ」
「その他にその四つか」
「そうです。その四つの小宇宙です」
付け加えてであった。
「四つの小宇宙が感じ取られているのです」
「魔神がここであらたに四柱か」
「何かがあるのは間違いないな」
「ですが問題はです」
シャカの言葉はさらに続けられた。
「この魔神達はどうやら出陣はしないようです」
「出陣はしないというのか」
「まだトラキアに留まっています」
今も彼等の小宇宙を探り続けている。そのうえでの言葉だ。
「そうしてあのエリスの周りに主に集っているようです」
「エリスか」
「そうです。小宇宙がそこに集まっています」
シャカだからこそ感じ取れることであった。
「間違いなく」
「エリスの指示の下で動くか」
「それでは一体何を」
「出陣はさせている」
これは聖域の方も同じである。
「しかしそれとは別にか」
「老師を狙っているでは?」
シャカは不意にこうしたことも言うのだった。
「まさかとは思いますが」
「狙っているのならそれはそれで結構なことだ」
だがシオンはそれを聞いても動じたところはなかった。
「あの男はそう簡単にはやられはしない」
「だからですか」
「そうだ。だからあの男に関しては何の問題もない」
だからこそよいということであった。
「気にすることもない」
「では。教皇を」
「私をか」
「はい。御言葉ですがその御命を狙っているのではないでしょうか」
シャカはここでも言葉の調子を変えない。あくまで淡々としている。それが実にシャカらしい、そうしたことを思わせる口調であった。
「聖域に潜入したうえで」
「その為に御前がいる」
しかしシオンはここでまたこのことをシャカに告げた。
「御前がな」
「だからこその護りですか」
「そして常に数人の黄金聖闘士達がいる。皆に全てを任せる」
実に思い切った言葉であった。彼は聖域も己もその護りを全て彼等に任せているからである。
「全てをな」
「では教皇、私が」
「頼むぞ。それにだ」
「それに?」
「アーレス、そして狂闘士は多くの戦力で攻めることを好む」
彼が次に言うのはこのことだった。
「多くのな。暗殺も考えられるがそれよりも正面からだ」
「そのうえで戦いを挑むというのですね」
「私はそう見る」
これがシオンの読みであった。
「そうな」
「左様ですか」
「少なくとも暗殺で倒されるような者はいない」
シオンの読みにはそうした裏付けもあるのだった。
「黄金聖闘士にしろ」
「我々全員がですか」
「そうだ。そして私もだ」
シオン自身もだと言う。
「私もだ」
「そうですね。確かに」
シャカは世辞を言う男ではない。これはシオンの実力を知っての言葉である。シオンとてただ教皇になった男ではないのだ。先の聖戦で生き残ったアリエスの黄金聖闘士である。
「それは」
「だからだ。暗殺が通じる我等ではない」
シオンは確信していた。
「間違ってもな」
「だからこそ正面からですか」
「来る。そして我等はそれに備えてだ」
「正面から戦うというと」
「そういうことだ。ではそれでだ」
「はい」
「アフロディーテが戻り次第黄金聖闘士達を招集する」
再び彼等を集めるというのだった。
「すぐにな」
「それではそのように」
「そしてそのうえでまた集める」
こう話をしていくのだった。中国での戦いは終わった。しかしそれはまた新たな戦いのはじまりであった。今またそれがはじまろうともしているのだった。
第三十五話 完
2009・5・28
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