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カラカ

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第二章

「その人にとっては日本で言う十円だよ」
「十円なんだ」
「そうだよ」
「いや、そうだとしても」
 邦臣はマサムにこう返した。
「いいよ」
「そう言うんだ」
「旅行なら自分のお金で行くよ」
 だからだというのだ。
「いいよ」
「プライド?」
「そう、他の人に出してもらうのはね」
「君としてはなんだ」
「気が引けるから」
「僕は出世払いだけれどね」
 それでその親戚に学費等を出してもらっているというのだ。
「その叔父さんの会社で働くって約束でね」
「大学を出たら」
「その約束で出してもらってるけれど」
「僕は違うから」
 邦臣は右手を横に振って答えた。
「そうした親戚の人もいないし」
「だからなんだ」
「別にいいよ」
「じゃあヨルダンにはだね」
「機会があればね」
 あくまでその場合にというのだ。
「行かせてもらうよ、そしてね」
「そして?」
「さらに機会があれば」
 その時にというのだ。
「ヨルダンで会おうね」
「その時は」
「そしてその時にカラカもね」
 その民族衣装もというのだ。
「見させてもらうよ」
「それじゃあそういうことでね」 
 マサムも納得した、そしてだった。
 邦臣にこの話はこれ以上しなかった、二人は共に大学を卒業し就職した。邦臣は全国でコンビニを展開している企業に就職したが。
 ある店の支店長の後本社に戻ったがそこで上司にこう言われた。
「中近東でもですか」
「何でも日本のコンビニのノウハウを知りたいらしい」
 上司は背広姿の邦臣に話した、当然上司も背広である。
「それでだ」
「私が、ですか」
「そっちに出張してな」
「コンビニのノウハウを伝える」
「そうして欲しいとのことだ」
「ではあっちに転勤ですか」
「いや、出張だ」
 それで中近東に行くというのだ。
「そこまではいかない」
「そうですか」
「ただ、出張だが期日は長くてな」
「どれ位ですか?」
「二ヶ月だ」
 それ位だというのだ。
「その間あっちに行ってくれるか。その分ボーナスが出る」
「ボーナスが」
「そうだ」
 それは弾むというのだ。
「あっちに行く分な」
「わかりました」
 話を聞いてだ、邦臣はすぐに答えた。
「行ってきます」
「即答してくれたな」
「まあ何といいますか」
「ボーナスにつられたか」
「実は最近友人達のお祝いが続いていて」
 結婚のそれがだ。
「何かとですし」
「ははは、それじゃあな」
「お金も必要なので」
「そうだな、じゃあ二ヶ月程な」
「あちらに行ってきます」
「そうしてくれ、まあ日本と色々違って大変だが」
 それでもというのだ。
「頑張ってきてくれ」
「わかりました」
 邦臣は上司に答えた、こうして彼は中近東に出張することになった。 
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