MS Operative Theory
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内部図解
コックピット
——新兵器MSのために作られたマン=マシン・インターフェイス———MS用コックピット——
それまでのものとはまったく異なる新カテゴリーの乗り物を発明すると言うことは、その操縦システムを構築すると言うことを意味する。「統合整備計画」の項でも触れたが、航空機開発の先駆者ライト兄弟が偉大であったのは、初歩的な物ながらも飛行機の操縦システムを作り上げたことで、「人類初の動力飛行機の発明」と言う栄誉を与えられているといってもいい。どういうことかというと、離陸できても自発的な方向/高度変更が出来なかった“飛行機モドキ”に過ぎなかったそれまでの「ヒコーキ」と異なり、ライト兄弟の“フライヤー”は操縦者の意志で「操縦可能」な初めての飛行機だったと言うことで、これこそがそれまでの“飛行機モドキ”と“フライヤー”を隔てている壁なのだ。これが意味するところは、動力飛行機の本体だけでなく、人と飛行機をつなぐマン=マシン・インターフェイス、つまり(洗練されていたとは言い難いが)飛行機用の操縦システムが盛り込まれたコックピットを作り上げ、相対としての飛行機を完成に導いたことが重要だということだ。
我々は、乗り物や機械の外見や性能、内部機構には目を奪われても、意外とその操縦システムやそれを司るコックピットを気にすることは少ない。これは、コックピットは一旦完成してしまうと目新しい進化を見せなくなる傾向があることも一因である。だが、“フライヤー”の操縦機構やPCのキーボードに見られるように、人と機械を繋ぐマン=マシン・インターフェイスは、マシン本体と互角かそれ以上に重要な部位なのである(ハンドルとアクセルがないエレカや、入力端末がないコンピュータが想像できるだろうか?)。
このように人間が使うと言う大前提がある以上、人と機械を結ぶインターフェイスは絶対に必須である。新世代のヴィークルが誕生すれば、それに対応した操縦システムが開発されるのは当たり前で、宇宙世紀が生み出した最先端科学の結晶であるMSも、新規のインターフェイス=MS専用コックピットの開発は不可避の条件であった。当然、MS用コックピットのスタイルを作り出したのは、MSそのものを開発したジオン公国である(残念ながらMS用コックピットの方向性を決定付けた、偉大な技術者の名前は知られていないが)。
MSを開発した公国の先駆性と技術力は高く評価されているが、前述のようにコックピットが地味な存在であるためか、はたまたMSそのものが人類に与えた衝撃が大きすぎた為か、たった一人のパイロットで20m級の鋼鉄の巨人を自在に操る画期的なシステム(100m級の機体も存在するMAも、基本的には同じコックピット)でありながらも、MSのコックピットが注目されることはまれであり、その歴史を知るのも一部のマニアに過ぎないのは残念とした言いようがない。そこで今回は、最初期のMSであるザク・シリーズから最新鋭機に至るまでの様々なMS用コックピットとその変遷を紹介したいと思う。
——一年戦争~コスモ・バビロニア建国戦争までのMS用コックピットの変遷——
古くはザクⅠ、後にF型に代表されるザクⅡなどに採用されたのが、最初期の実践型MS用コックピットとして知られるモデルである。MSは基本的に一人乗りであるが、不要なパネル類が徹底的に廃止・統合が図られたほか、左右の操縦桿とフットペダルだけで殆どの動作を行えるようになっており(基本動作はコンピュータに一任される)、比較的簡素な動作で多様なアクションに対応できる。
——各戦乱期の代表的コックピットとモニターの進化——
初期のMS用コックピットの問題点は、視界にあったといっていい。MSのコックピットは基本的に胸部や腹部(まれに頭部)内に設置されているため防弾性こそ高いものの、内装型ゆえの視界の悪さと言う欠点があった。外部カメラによる視界は得られていたし、ディスプレイもパイロットの前でなく左右や上部に配置されていたが、ディスプレイ間の溝が死角になっている(ように思えた)など、隔靴掻痒の感は否めなかった。そこで、一年戦争末期からコックピットの内壁を360度スクリーンにする全天周囲モニターの開発が開始され、U.C.0080年代中盤には実用化されている。
■一年戦争期(第2期生産型)
一年戦争後期に公国軍で採用された共用コックピット(「統合整備計画」規格)で、一年戦争型としては最も完成度が高いと言われるモデル。前だけでなく左右と天井にワイド・ディスプレイを配し、広い視界を獲得した。また、直線的なデザインのため生産性も高い。
■グリプス戦役期
U.C.0080年代広範に勢力を問わず広範に使用されたコックピット(U.C.0084にアナハイム・エレクトロニクス社で開発されたJTS-17Fと呼ばれる仕様であろう)。理論上死角が存在しない全天周囲モニターと耐G機能を強化されたリニアシートが取り入れられた。
■シャアの反乱期
シャア・アズナブル指揮下のネオ・ジオンで使用された一般用コックピット。基本的な構成はグリプス期のものと同じだが、衝撃を受けたときにパイロットを保護するショックバルーンや頭部を固定する変形ヘッドレストなど、より高い安全性が確保されている。
補足事項
——脱出装置もかねるコックピット——
信じがたいことだが最初期型のMS-05やMS-06には脱出装置は装備されていなかった。開発段階では脱出装置の搭載は考えられていたが、重量やスペースの問題から見送られ、その怠慢は貴重なMSパイロットの生命によって埋め合わされることとなったのである。そこで、公国軍は当時開発中だったMS-06Rに脱出機構を兼ねた射出式コックピットを採用。以後、MS用の脱出機能付きコックピットは一般的なものとなり、広く普及していくことになる。
後書き
次回 MSドック
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