DQ5~友と絆と男と女 (リュカ伝その1)
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47.愛する者を守る為ならば鬼にでも悪魔にでもなれる。きっと…
<グランバニア城>
オジロンSIDE
祝賀会の夜、我々はリュカの叫び声で目を覚ました。
ビアンカ殿が攫われたと言う!
驚いた事に、その間城内の者は皆眠りこけていた!
調査の結果、祝賀会の飲み物に睡眠薬が混入されていた事が分かり、犯人は国務大臣のエクリーであると言う見解になった。
ワシは信じられないでいた。
あのエクリーが…
ワシにとっては頼りになる家臣が…
「叔父上は利用されていたんですよ!」
リュカの不機嫌な口調がワシを一層落ち込ませる…
そのリュカは今、エクリーの屋敷を家捜ししている。
よほど腹に据えているのだろう…普段綺麗好きなリュカが散らかる事を気にもせず荒らし回っている。
程なく1冊の計画書と、奇妙な靴を1足見つけ出した。
リュカは計画書を読み終わると、冷たい表情で一笑して計画書をワシに渡してきた。
その計画書にはこう書かれてある。
祝賀会の飲み物に睡眠薬を混ぜ全員を眠らせる。そして王妃ビアンカを誘拐して国王リュカの人望を失墜させる。次にエクリーがワシ(オジロン)を利用して王妃ビアンカを救出する。その功績によりワシは次の国王に正式に即位し、リュカを退かせる。そしてワシを操りエクリーが国を牛耳る。
要約するとこんなとこだ。
更に、あの奇妙な靴の事も書いてある。
この計画の打ち合わせをする際は、空飛ぶ靴(あの靴の事だ)を使い打ち合わせ場所兼人質監禁場所へ移動する事。
つまりあの靴を使えばビアンカ殿の所へ行けると言う。
「リュカ…いえ、陛下。これは罠です!」
「だろうね!だが…それが何か?」
冷たく感情のない口調で言い放つと、サンチョの側へ近づき誰にも聞こえない様に耳打ちをする。
「………しかし………はい……分かりました……」
サンチョにだけ…サンチョだけを信頼し、特別に何かを告げている。
「サンチョ!絶対他の人には告げない事。信用しているからサンチョにだけ話したんだ。お願いするよ」
「分かりました。命に代えましても…」
いったい何を…
「そんな大袈裟に考えなくていいよ」
そう言い、リュカは空飛ぶ靴を手にベランダへ出て行く。
まさか!
「リュカ!まさか一人で乗り込むつもりか!?」
「靴は1足しか無いからねぇ」
「罠なのは分かっているだろう!まず、準備を「ビアンカを失うつもりは無い!」
静かに冷たくワシの言葉を遮るリュカ…
「時間をかけて準備をして敵地に乗り込んでビアンカの死体を回収する…(クスッ)絶対ごめんだね!」
リュカはこちらを振り向くことなく空飛ぶ靴を使い、北の方角へ飛んでいった。
ワシがエクリーを信用した為に、この様な事態になったのだ…
リュカに謝罪する為にも、リュカの手助けをせねば…ワシに出来る事をせねば…
オジロンSIDE END
<デモンズタワー>
エクリーSIDE
私は光の教団に裏切られた。
地位を使い、懸命に布教活動を行ったきたと言うのに…
此度の件で、私の地位を強固なものにしてグランバニアを牛耳り、国民全てを信者にする計画だったのに…
しかし、光の教団の計画は違った…
リュカを誘き寄せ殺害し、魔族がリュカに化けグランバニアを支配するのが目的だった。
そんな事をさせる訳にはいかぬ!
早くリュカに…いや、リュカ様にお知らせせねば…
だが私は魔族共に足を折られ、塔の中で置き去りにされている。
野垂れ死にさせるつもりだろうか?
耳を澄ますと、こちらへ近づく足音が聞こえる。
私を殺す為に来たモンスターかと思い息を殺して身構えた。
「………国務大臣……」
現れたのはリュカ様だった!
なんと、たった一人でこの塔を登って来たのだ!
「リュカ様。これ以上先に進んではなりませぬ。これは罠です。リュカ様を殺して魔族が成り代わる罠です」
リュカ様は冷たい瞳で私を見下ろし、私の言葉を聞き続ける。
憎悪などと言葉では言い表せない目で見下ろされ、恐怖で喋れなくなりそうになるが、気力を振り絞って伝えねばならない事なのだ!
「お許し下さい、陛下…私は光の教団を広める為に地位を利用し固執しました。しかし魔族と手を結ぶつもりはありませんでした」
「もういい…」
い、いや…良くない!
何としてもこれ以上進ませる訳にはいかないのだ…
「しかし私「もう、喋るな!」
リュカ様の怒号が私の言葉を遮る。
「ビアンカの誘拐を手引きしたお前を俺は許さない」
その言葉を言い終わる前にリュカ様は剣を振り切っていた。
私の…意識も…遠退いて…行く…
エクリーSIDE END
<デモンズタワー>
ビアンカSIDE
私は今、塔の最上階に囚われている。
凶悪なモンスターが蔓延る禍々しい塔の最上階に…
そして私の前にリュカが居る。
私を助ける為に一人でこの塔を登ってきたのだ。
「リュカ!来てくれたのね!?……でも…来てはいけなかった…アナタを殺してすり替わる為の罠なの!お願い、逃げて!」
そこまで言い終わると、私は見えない力で弾き飛ばされた。
壁に身体を打ち付け、苦しくて声も出ないでいる。
「グランバニアの王よ!お前は王としてあるまじき過ちを犯した。王とは国民を守る為に存在する。にも関わらず、お前はここに来た。たかが一人の女の為に…その行為、万死にあたいする!」
言葉とは裏腹に、ニヤケた表情で語る化け物馬のジャミ…
「黙れ馬!家畜如きが王について語るな!」
その刹那!
リュカが馬の化け物、ジャミに斬りかかる!
が、リュカの剣はジャミの身体まで届かない。
ジャミの身体を特殊な結界が覆っている。
「ふはははは!無駄だ、無駄無駄!俺はゲマ様の力で強化されたのだ!お前もあの時の父親と同じように、じわじわとなぶり殺しにしてやる!」
あの時!?父親と同じ!?
コイツが…この化け物がパパスお義父さんを…
「黙れと言っただろ!お前は口が臭い!」
リュカは怯むことなく攻撃し続ける。
斬りつけ、呪文を唱え、諦めない…
しかし一切の攻撃は効かず、逆にリュカの剣が弾き飛ばされた。
リュカの剣は、遙か後方の壁に深く突き刺さり取りに向かえば隙だらけになる。
ジャミは右前足の蹄でリュカの頭を握ると、力任せに振り回し始めた。
壁や床に身体を打ち付け反撃する事も出来ないでいる。
「ふはははは!己の無力を痛感しろ!貴様は国も、女も、何一つ守れんのだ!ふははははは!」
くっ…私の所為で…
「そ、そんなに…」
「ん?何だぁ?」
「そんなに可笑しいか?」
リュカはジャミに頭を握られたまま、ジャミの目の前に力無く垂れ下がっている。
もう戦う気力も無いかの様に…
「あぁ!可笑しいね!無力なヤツをいたぶるのは!」
リュカはジャミの目をジッと睨み付けている。
「じゃぁ…笑えよ…可笑しいんだろ?笑えよ!」
まだ目は死んでいない。
「ふはははは!お望み通り笑ってやるよ!お前の情けなさを!ふはははぐがっ!」
リュカの目の前で大笑いするジャミの口の中に両腕を深くねじ込む。
「バギクロス!」
リュカのバギクロスがジャミの体内で荒れ狂う!
表面を何かしらの結界で守られていても、体内は無防備なはず!
それを見越してリュカはバギクロスを連発する。
「バギクロス!バギクロス!バギクロス!」
ジャミの体が胸から裂け二つに分かれて崩れ落ちる。
リュカの全魔力を注いだバギクロスを至近距離で喰らっては、流石に耐える事の出来なかった様だ。
リュカは腕に残ったジャミの上半身を壁に投げ捨てると、私の元へ駆け寄り抱き寄せた。
「ビアンカ!大丈夫?」
「リュカ…ありがとう…私…」
「いいんだ、何も言わなくて。さぁ、帰ろう。みんなが…ティミーとポピーが待っているよ」
私とリュカは寄り添い、この部屋を出て行こうとした…その時!
「お~っほっほっほ。いけませんねぇ~。逃げようなどとしては」
とても耳障りなイヤな笑い声がこだまする。
「ゲマ!!」
リュカはこの声の主を知っている!
リュカが怒りの形相に代わり室内を見渡しだす。
すると死んだはずのジャミの上半身が起きあがりこちらを見つめている。
焦点の合わぬ目で…
「あの時の子供が、ここまで成長するとは思いませんでしたよ。お~っほっほっほ。でもここまでですよ。貴方達は世界の終わりを石になって眺めるのです。」
言い終わるとジャミの身体が四散し、どす黒い霧が私達を包んでいく。
「きゃ!何、この霧?……え!?」
気が付くと私とリュカの身体が石に変わっていく。
もう既に首まで石化してきた。
私にもリュカにもどうする事も出来ない…
「ビアンカ!」
リュカが話しかけてきたが、私は口までもが石になってしまい、答える事が出来ない…
「ビアンカ…必ず助ける…僕が助ける…ま、待って…い…て………………」
そしてリュカの声も聞こえなくなってしまった…
私とリュカは石になってしまったのだ。
でも…私は…怖くない…だって…リュカが…助けてくれる……大好きなリュカが………………
ビアンカSIDE END
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