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IS―インフィニット・ストラトス 最強に魅せられた少女

作者:伊10
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第13話 私、玉鋼を改造します。

 
前書き
日常回…………の、ようなナニか。 

 
クラス代表対抗戦襲撃事件から数日。事件については箝口令が敷かれ、戸惑いつつも学園は、平穏を取り戻しつつあった。

今日は日曜、休日だ。日課の朝のトレーニングを終え、寮に戻ってくると、既に何人かは遊びに出ていくのを見た。部屋に戻るとセシリアが、普段着ではなく、よそ行きのちゃんとした服に着替えていた。

「あれ?セシリアもどっか行くの?」

「ええ、少々買いたいものがありまして。楓さんも行きますか?」

「あーー、ゴメン。今日ちょっと用事があってね。」

「……ああ、そういえば今日でしたか。」

そう、今日は玉鋼の強化パーツが届くのだ。受け取りは午前中で済むが、調整に丸一日かかる。

「只でさえ万能型の玉鋼をどう強化するのか……楽しみですわ。」

「フフッ、それなら次の模擬戦でとくと味あわせてあげる。」

そう言いつつもざっと身支度を整える。制服でも普段着でもなく、迷彩柄の作業服だ。私は形式として自衛隊所属になってるから、こういった正規の物資受け取りにはそれらしい格好をする必要がある。



それから三十分後、学園の正門前で待っていると、一台のトラックが、前後に護衛の車を連れて入ってきた。

「神宮寺一尉ですね?貴官の専用IS用の強化パーツの搬入に来ました。」

「ご苦労様です。案内板に従って、第二整備棟の搬入口までお願いします。後はこちらで対応します。」

「了解、0730現着。これより受け渡しに移ります。」

トラックに同乗し、運転手と会話を交わす。五分程で、お目当ての第二整備棟に到着した。荷物を中に運んでもらい、そこで別れる。ここからは私の仕事だ。まずはパーツを確認しようと、厳重にロックがかかったケースに、パスワードを打ち込んだ。










「あれぇ?またエラーだ。何処がおかしいんだろ?」

時は昼過ぎ。特に問題なく量子変換(インストール)を終え、昼食をとった後に稼働シミュレートしながら調整しているのだが………。

「んー、エネルギーはしっかり伝達されてるし、システムとのリンクも問題無いんだけどな。」

どういう訳か何度試してもエラーが表示されるのみで、原因も分からない。

「おかしいな……制御系になにかトラブルかな?それだったら私じゃ手がつけられないな……。」

「………右端の、PICの補助。……想定値の半分もない。」

「へ?………あ、そしたらここの数値を弄って……うーん、出力が足らないな……。」

「……そこ、装甲のPIC値、過剰。」

「いや、これには訳があってね………なら、稼働範囲を絞るかな……そだね、行動半径を機体から50m以内に固定っと……よし、計算上はオッケーだね。………ん?」

そこで違和感に気付く。あれれ?私、一体誰と喋ってるんだ?

慌てて振り向くと、後ろから画面を覗き込む、水色の髪をして、眼鏡をかけた少女がいた。私はこの子を知っている。直接会うのは初めてだけど、データでは何度か見た。

「………更識…簪さん、だよね?」

「………うん。」

目の前にいるのは、もう一人の日本代表候補生、更識簪だった。

「何時から?」

「ここには……朝から。気付いたのは……さっき。」

全然分からなかった。見ると彼女も制服ではなく作業着だ。……流石に迷彩ではないが。当たり前か。

少し視線を外すと、やや離れたISハンガーに、組み立て途中のISが鎮座している。と、いうことはあの話は本当だったというわけだ。

倉持技研が彼女の機体開発を放り出し、彼女一人で組み立てているというのは。

「……アレが?」

「……そう、……打鉄弐式。」

「………完成率は?」

「……………40%。」

やはり状況は深刻な様だ。彼女も機械弄りは得意らしいが、規模が規模だ。専門家ですら数人、数十人のチームを作って開発を行うのだ。組み立てだけとは言っても一人で行えるものではない。

「ままならないものねぇ。なんなら技本(ウチ)で組み立てようか?」

それなら倉持にも一泡吹かせられるし。そんな思いでいった一言だった。けれど………

「………いい。」

「……大丈夫?」

「………あの人は、一人でやった。」

「へ?」

「……それじゃあ。」

そういって彼女は自分の機体に戻っていった。その背に一言お礼を投げ掛け、最終調整に戻る。

「気にはなるけど………あの子と戦ってもみたいしね。」

その後、アリーナで実機テストしたけれど、中々に満足のいく代物に仕上がった。










「ふふぁあ~~~。」

ここはIS学園の一年生寮。その、大浴場。

ここだけの話、私はお風呂が大好きだ。それこそバトルの次くらいに。既に30分くらいは浸かりっぱなしだ。

「楓……あんたよく逆上せないわね?」

隣に誰か入ってきた。鈴だ。トレードマークのツインテールを降ろしていて、イメージが微妙に違う。

「大好きだからねー。一時間はへーき。」

「へぇ。……アンタ、今日何してたの?」

「ん~~?玉鋼の調整。新しいパーツが届いてね。」

大浴場には余り人影がない。さすがに九時を回っていればこんなものだろう。

と、もう一人誰か近付いてくる。あれは……篠ノ之さん?

「む、神宮寺に鈴か?」

腰まで届く長い黒髪に、いかにも大和撫子といった顔立ちと姿勢、間違いないね。

ん?なんか鈴が微妙な顔で篠ノ之さんを見てる。どうしたんだろ?

「……ほんっと、少しは分けてもらいたいわ。」

「何が?」

「アンタ本気で………いや、アンタはそーゆー奴だったわね………。」

…………?ホントにどうしたんだろ。

「すまんな、鈴。………私も好きでこうなった訳ではないのだが………。」

「………それはアレか?自慢か?自慢なんだなー!!」

「うわ!?お、落ち着け!神宮寺、手伝ってくれ!!」

「だから何が………まあいいや。」

暴れる鈴を後ろからそっと湯船に沈める。篠ノ之さんに注意を奪われてた鈴はあっさり頭まで湯船に浸った。ジタバタもがく鈴をゆっくり十秒押さえ込んでから手を放す。

「ぷはぁ!?………死ぬかと思った………。………………楓ェ、この恨み、晴らさずおくべきかァ………。」

なにやら黒いオーラを揺らめかせる鈴が襲いかかってくる前に、急いで逃げることにした。 
 

 
後書き
………最後のシーン、要るかな?

楓はいわゆるツルペタですが全く気にしてません。 
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