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Blue Rose

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第二十五話 外の世界へその四

「今も時々子供と一緒に福岡に戻るし」
「お子さんと」
「そう、主人ともね。主人はこっちの人だけれど」
「長崎の」
「そうよ、貴女も機会があったらね」
 その時はとだ、副所長は優花に穏やかな笑顔で話した。
「福岡にも行ってね」
「あそこにもですか」
「いい場所だから。後ね」
「後?」
「熊本もいいし」
 そちらもというのだ。
「鹿児島もいい場所よ」
「薩摩ですね」
「そう、あそこもいい場所よ」
「鹿児島県ですか」
「鹿屋には本当に機会があったら」
 地元の福岡に対するよりも強い言葉でだ、優花に語った。
「行ってね」
「特攻隊の資料館がありますね」
「あそこではこの世で最も奇麗な絵があるから」
 だからだというのだ。
「行ってね」
「特攻隊の絵ですね」
「特攻隊の人達をもてなして暖かく見守って送ってくれたお婆さんがいるの」
 玉丼もご馳走したうえでだ、その人はこれから死地に向かう特攻隊の若きパイロット達をこれ以上はないまでに優しく暖かく見送ったのだ。
「そのお婆さんの絵よ、天国に行ったお婆さんを英霊達が迎えている絵よ」
「特攻隊の人達が」
「そうよ、英霊を天女達が引き上げている絵もあって」
 もう一つの絵の話もするのだった。
「その絵も同じよ」
「この世で、ですね」
「最も奇麗な絵よ」
「その二つの絵がですね」
「鹿屋にはあるの」
 特攻隊の資料館にというのだ。
「それも見てね」
「わかりました」
「出来るだけ九州には行ってね」
 見て回ってくれというのだ。
「そうしてね」
「福岡にも熊本にも鹿児島にも」
「足を運んでね。幸い八条鉄道があるから」
 九州にも路面があるのだ、それも九州の全ての県にだ。
「それを使って行ってね」
「時間がある時にですね」
「そうしてね」
「わかりました、それじゃあ」
「九州もいいところだから」
 それ故にというのだ。
「見て回ってね」
「長崎も佐世保も福岡も」
「他の場所もね」
 こう笑顔でだ、優花に話した、普通の他の学校とおおよそ同じ構造である標準的な敷地でグラウンドもプールもある学校の中を進みつつ。
 校舎もだった、コンクリート造りで床は光沢がある。優花も見慣れているその校舎の中を二人で進んでだった。
 校長室にまで来た、ノックと諾の返事の後その中に入ると校長の立派な机に白い髪をオールバックにした穏やかな顔立ちの初老の男がいた。
 痩せていて背は高い、面長で顔の皺が目立つ。スーツは清潔に着ている。
 その紳士というよりかは町の世話役といった感じの男にだ、副所長は一礼してから話した。勿論優花も頭を下げた。
「お久し振りです、校長」
「はい、お元気そうですね」
 校長の返事は皺がれているが表情と同じく穏やかなものだった。
「副所長も」
「この通りです、それで」
「そちらの娘がですね」
「はい、お話していた娘です」
「わかりました、では」
 校長は優花に顔を向けてだ、彼女にも穏やかな声をかけた。
「はじめまして、蓮見優花さんだね」
「はい」
「この学校、君が通う高校の校長である久保田美樹だよ」
「これから宜しくお願いします」
「うん、大変だったね」
 優花を気遣う言葉もかけてきた。 
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