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真田十勇士

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巻ノ五十八 付け城その四

「そして思う存分楽しんで騒げとな」
「そうせよというのですか」
「囲みは解かぬが」
 しかしというのだ。
「昼から多いにじゃ」
「暇なら遊べ」
「楽器も賑やかに鳴らしてな」
 そうもしてというのだ。
「楽しめとな」
「酒に女」
「そして舞楽」
「歌って踊れ」
「そうせよというのですか」
「思う存分な、しかもじゃ」
 さらに言う秀吉だった。
「相手に見せるのじゃ」
「北条家の者達にもですか」
「その遊ぶ様をよく見せる」
「そうするのですか」
「そうじゃ、存分に見せてやるのじゃ」
 まさにという言葉だった、笑いながら。
「勿論我等もじゃ」
「暇なら酒を飲みですか」
「女と遊ぶ」
「そして舞楽も聴く」
「そうしてよいのですか」
「うむ、舞楽は思いきり大きく鳴らすのじゃ」
 それも言うのだった。
「よいな」
「そしてその舞楽の音もですか」
「北条の者に聴かせる」
「そうするのですな」
「昼も夜もじゃ」
 常にというのだ。
「とかくな、そして城の中にはな」
「はい、外で騒ぎ」
「そしてですか」
「それだけでなく」
「さらに仕掛けられますか」
「色々と流言飛語を流すのじゃ」
 小田原城の中にはというのだ。
「外で見せて聞かせてな」
「そして中ではですか」
「様々に謀略を仕掛け」
「乱していく」
「そうしますか」
「そうする、流す言葉はわしが考える」
 秀吉は笑みを浮かべたまま話す。
「常にな、ではよいな」
「わかりました、では」
「兵達を楽しませてです」
「我等もそうする」
「そして、ですな」
「城の中に流言飛語を巻く」
「様々なものを」
 諸将も言う、そして実際にだった。
 秀吉は実際に兵を遊ばせ自身も酒を飲み大坂からわざわざ側室を呼んでそのうえで茶や舞楽も楽しんだ、それをだ。
 小田原の兵達に見せる、それを見てだった。
 北条の兵達は実際にだ、歯噛みして言うのだった。
「何と楽しそうなのじゃ」
「皆遊んで美味そうなものを食っておるわ」
「酒を飲み女と遊び」
「歌って踊ってな」
「関白殿もそうしてな」
「楽しいものじゃ」
 こう忌々しげに言う、そして。
 彼等は自分達のことを振り返る、翻って彼等はというと。
「遊ぶなぞとてもじゃ」
「酒は夜に飲むが」
「昼におおっぴらに飲めるか」
「女もあそこまではな」
「とても無理じゃ」
 守る方は常に緊張しているというのだ。 
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