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グランバニアは概ね平和……(リュカ伝その3.5えくすとらバージョン)

作者:あちゃ
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第65話:男女の仲と政治の理

(グランバニア城・国王応接室)
ウルフSIDE

(コンコン)「ウルフです。失礼します」
リュカさんに執務室へ来るよう呼ばれ、直ぐさま訪れたのだが、先客が居り部屋の雰囲気も良くない。紅茶が3つ(俺の分も含め)用意されてるが、口を付けた様子は無い。
因みに先客はオジロン閣下だ。

隠してた(つもりの)愛人が泥棒で、情報取得の為に利用されてたと判明してから、常に顔色が悪かったオジロン閣下。
嫌な予感はしてたんだけど、もしかして悪い報告なのかな?
マオさんの腸壁の感触が忘れられなくて、仕事が手に付かない……なんてな(笑)

「どうしたんッスか……急に俺を呼び出して? 愛人が居なくなって寂しいってんなら、俺が何人か紹介しましょうかぁ(ニヤニヤ)」
「ウルフ!」
あれ? 軽口叩いたらリュカさんが厳しい表情で首を振ったぞ……

「実はな……オジロンが辞めたいと言ってきた」
「は……辞めたい? それは何を……?」
「国務大臣を辞めて、隠居したいと言っている!」
「はぁ!? 何言ってんだオッサン!?」

「リュカの差し金だったとは言え、ワシは国家機密を愛人に喋ってしまったのだ。そんな口の軽い男に、国家の重鎮は務まらん! 何よりもう歳だし、大人しく隠居させてもらいたいのだ」
「いや……隠居自体は構わないけど、後任は誰が大臣の仕事を引き継ぐの?」

「その事なんだがお前が宰相に就任すれば、オジロンの仕事を丸々担える訳だし、この際お前の昇進を前倒しして宰相兼国務大臣にしようと思ってる」
「思うのは勝手だが、引き受けるか否かは俺の意思だ……そして断る!」

「断られると困る。国政を担う大事な役職に穴が開く事になる」
「ではオジロン閣下を隠居させなきゃ良いでしょ! 何で隠居在りきで話が進むんだ!? まだまだ現役続行は可能なんだから、寝たきりになる直前まで働いてもらうべきだ!」
俺は自分の負担を重くさせない為に、少し厳しい意見を年上二人にぶつける。

「政務に乗り気じゃない者に無理強いをする訳には行かない。やる気がなければその分ミスも続発するからね」
「俺だってやる気は無いぞ!」

「お前の場合は国家を動かす政務に対してのやる気はある……ただ負担を増やしたくないって意味だけのやる気の無さがあるだけだ」
た、確かに……今は国王主席秘書官だけど、色々とリュカさんの手伝いをする事に楽しさを見出してた。

しかも宰相となって、俺の権限でグランバニアを発展させる事が出来るってのにも、今から楽しみを感じていたのも事実だ。
だけどなぁ……
チラリとオジロン閣下に視線を向けると、申し訳なさそうに俯き目を瞑っている。

マジかよぉ~……
これ断れそうにないじゃ~ん!
如何する? 如何すれば良い?

「まだ若造な俺に、権力を集中するのは良くないと思うんですよネ! テロの対象は拡散させるのが筋だとも思うんですよネ!」
「お前は強い。テロの対象になってもルーラで逃げる事が出来る」

「い、いや……ほら……俺が邪な考えを持って、この国を我が物とする日が来るかもしれないじゃん!?」
「何だ、王位が欲しいのか? なら今すぐやるぞ。そして僕も隠居するぞ! ティミーだってウルフになら、喜んで王位継承権を譲るぞ」

「要らねーよ! 俺は過労死したくないんだよ」
「残念だが不可能だね。今現在お前は家老の一人だ。家老(かろう)が死ねば過労(かろう)死だ……な~んつってね(笑)」

「ふざけんな馬鹿ぁ!」
思わず目の前に置かれてた紅茶をリュカさんにぶっ掛けてやった。
「あぶね!」
だがヒラリと躱され、応接室の絨毯をビッチャり汚しただけだった。

「あーウルフが絨毯汚したぁ! ジョディーに言い付けてやろう。たっぷり怒られるが良い(笑)」
「え、マジ!? 秘密にしてくんない? あの女、怖ーんだよ! マオさんが辞めた原因が俺にあるって噂が広まってて、何か(すげ)ー敵視してくんだよ」

「大丈夫だよ。宰相と国務大臣を兼ねたお前なら、誰も恐れる必要無いよ」
「そうかな? 前任同様、新任国務大臣も上級メイドを愛人にしちゃって大丈夫かな?」
「大丈夫、大丈夫。OKOK!」
「OKかぁ……ってバカぁ! オジロン閣下の前で、そんな冗談言っちゃダメでしょ! 余計落ち込んじゃうでしょ!」

「落ち込む冗談を言ってるのは、ウルフ……お前だ」
今にも泣きそうな声で突っ込んでくるオジロン閣下……
ちょっと虐めすぎたかな? 無責任に引退しようとしてるんだし、虐めても大丈夫だよね?

「……はぁ。国務大臣付のスタッフは全員俺の下に来させるぞ。閣下が連中を説得してくれよな! 一番年下で、生意気な男の部下になれって」
「解った」

「事が事だしリュカさんが直接ティミーさんに伝えてくださいよ。そして愚図ったらビシッと厳しく説得してよ」
「アイツは愚図らないよ。リュリュは知らないけど」
あ~……そうだったぁ……あの女が居た~!

「それよりオジロン。ドリス達には何て言うつもり? 辞める理由を詰問されたときのために、口裏を合わせる必要があるけど?」
何で“詰問”される事が前提なんだよ!

「本当の事を言います。勿論、金庫の事やスパイ活動の事は伏せますが、ワシが機密情報を愛人のメイドに流してしまい、そのメイドも国外追放になったと話します」
「お、何だそれ? 俺がマオさんを国外追放にしたって噂を利用するつもりかコラ? 益々あの噂話に、真実味が帯びてくるだろ」

「本当の事は言わない方が良いと思うよ。ドリスの事だから愛人が居たって言えば、オジロンの事をゴ○ブリを見るような目で蔑んでくるよ……経験あるし」
俺に対する悪い噂話の事は無視かい!

「それも覚悟の上です……自業自得ですから」
「潔いねぇ……でも隠れてエロい事してっから、露見した時に多くを失うんだよ。僕みたいに堂々としてれば良いのに……なぁウルフ?」

……嫌味かコラ!?
俺も隠れて浮気してるから、嫌味言ってきてんのかこら!?
上等だ……ぜってー隠し通してやる! この天才を舐めるなよ。

ウルフSIDE END



(グランバニア城・国王応接室)
リュカSIDE

「……ってな訳でぇ、オジロンが辞めるってよ。後任はウルフ宰相が兼任する事になるってよ。面白そうだよね(笑)」
「笑い事じゃねぇよコノヤロー」

『父さん、ウルフ君の言う通り笑い事ではありませんよ。一体何故オジロンは辞任するのですか?』
「うん……まぁ色々込み入った事情があるんだわ。ちょっとMH(マジックフォン)じゃ言えないなぁ……早く帰ってこいよ。パパ寂しい♥」

『気色悪い事言うな!』
「違う違う。僕が言ったんじゃ無くて、アミーが『パパが居なくて寂しい』って言ってたの」
『え、本当ですか!? 今すぐ帰らねば!!』
「嘘に決まってんだろバカ王子! アンタの娘は未だ喋れないんだよ」

俺のMH(マジックフォン)を使い、ホザックのティミーにオジロン退任の事を知らせる。
先程までは重苦しい会話をしてたので、反動からか軽口が横行している。
特に吹っ切れたウルフは、いつも以上に口が悪い。

「ところで……そちらの状況は如何なんですか?」
『う、うん……ホザック王家がグランバニアと国交を再開したいと考えてるのは本当なんだ。だけど……国王と王子との間には意見の相違がみられる』

「如何いう事だ?」
『はい。正確には国王と第一王子が我が国の技術力を欲していて、第二王子と少数の取り巻き達が平和と国内改革を求めて……と言う感じです』

「ホザックは二派に別れてるんですか?」
『う~ん……二派と言えば二派かなぁ? 国王のブラス陛下と第一王子のラッセル殿下、それと大多数の家臣の一派と、第二王子のギルバート殿下と2.3人の取り巻きによる一派の二派閥です』
和平派が少ないなぁ……まぁ居ないよりマシだけど。

『ですが有難い情報もあります』
「……それは?」
『はい。何と第二王子のギルバート殿下は、リュリュと幼い頃に面識があったそうなんです!』
「マジっすかティミーさん!?」

『マジっすよウルポン! 会って挨拶を交わした途端『君はリュリュちゃんじゃないのかい? 俺だよ! 昔、オラクルベリーで出会った“ギル”だよ!』って!』
「本当にリュリュはギルバート殿下と面識があったのかい?」

『え~っと……ぶっちゃけ忘れてました。6歳の頃の事ですし……でもね、ルーラで家に帰って昔の日記を見返したら、確かに“ギル君”の事が書いてありました。だから私が忘れてただけだと思います』
「リュリュさんの事だから幼い頃も可愛かったんでしょう……だから先方も忘れずに居たんだ。……ギルバート殿下は独身ですか?」

『兄のラッセル殿下はご結婚なさってるけど、ギルバート殿下は独身のようだね。彼女とかが居るか如何かは不明だけど……』
「ふ~ん……そちらでの予定を全て終わらせたら、ギルバート殿下をグランバニアに誘ってみては如何でしょうか? 和平派と言う事ですし、我が国を視察してもらうってのは?」

「悪くはないと思うけど、向こうさんにも都合があるだろう」
『そうですよウルフ君』
「いや……リュリュさんに惚れてそうだし、和平派は少数だし、誘えばホイホイ付いてくると思うね……グランバニアが誇る蒸気船にも乗ってみたいだろうし」

『反対、はんた~い! あんないけ好かない野郎をこれ以上リュリュさんに近づけたくないです!』
「ちょっと黙れラングストン! 今俺達は外交問題を話し合ってるんだ! 邪魔するようなら宰相兼国務大臣の権限を使って、お前を国外追放にするぞ」

『ウルフ君の考えは流石の僕でも解るけど、リュリュとギルバート殿下を政略結婚させてホザックを取り込もうとするのは如何な物かと思うよ』
「そうだよウルフ。僕は娘の結婚に口出しする気は無い。“誰それと結婚しろ!”とか命じたくない。リュリュが決めた相手であれば、血縁者以外であれば極悪人でも結婚を反対する気は無い」

『そうだそうだぁー! 私の結婚を政治利用するなぁ! 私はお父さんの愛人になるのだぁ!』
「“なるのだぁ”じゃねぇ! 「血縁者以外なら結婚を反対しない」と言ったんだ。それにホザックが奴隷制度を止めなければ、嫁いだ娘に会う事は無いだろう。何せ結婚を認めただけで、相手の為人を認めた訳じゃないからな」

「勿論、俺もリュリュさんに政略結婚しろなんて言いません。誰とでも良いから結婚しろとは言いますが……ですが今回は、それ(政略結婚)を臭わせてアドバンテージを取りたいと考えてます。女の色香……特にリュリュさんの色香は特別ですからねぇ」

「なるほど……リュリュは天然の女郎蜘蛛だからなぁ」
『はぅ……褒められてる気がしない(泣)』
「褒めてはいないな。アンタは厄介な女だから」
『感心しないなぁ……兄の目の前で妹を侮辱するのは』

父親の目の前でもあるんだが……

リュカSIDE END



 
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