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平成ライダーの世界

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第二十二章

 その作品世界の中でもやはりスサノオはいます。この作品でのスサノオは誰かといいますとずばりカイです。彼は間違いなく首領の分身の一つです。
 何故そう断定するかといいますと彼の性格からです。カイは退屈を嫌い遊びを好んでいます。遊び半分で人の存在を消してこうしたことは簡単にできるんだが、と笑いながら言っている場面がありましたが僕はその場面を見てカイはスサノオの分身だと確信しました。
 スサノオの性格及び行動は常に楽しみを求めていてライダー達、即ち人間達との戦いを楽しんでいます。それこそがまさにライフワークであるというようにです。彼は仮面ライダーの当初は世界征服を本気で考えていたようですが仮面ライダー二号登場の頃からどうやら考えが変わったようです。ライダー達との戦いから世界征服よりもライダー、即ち人間がどういったものか見てそのうえで彼等との戦いを楽しもうという考えに至ったと思われます。その証拠にスサノオは常にライダーが乗り越えられる作戦や罠、敵しか用意しません。その時のライダーのレベルに合わせたかのようにです。ライダーがそういったものをどうやって乗り越えるのか、人間はどうするのかを見ているとしか思えません。スサノオはそうしてライダーと闘っている存在なのでしょう。
 そういったことを考慮しますとカイはスサノオにしか見えません。スサノオの快楽追求主義的な面がかなり強く出た存在と思われます。彼は一見すると何がしたいのかわからないところがありましたがこうして考えますと目的は実にはっきりとしていました。スサノオとして動いていたのですから。
 時空に介入して何をしたかったかもです。スサノオは牢獄に囚われたままです。仮面ライダーSPIRITSにおいて描かれていますがスサノオはそこから出ようとしています。SPIRITSではまだどうなるかわかりませんが電王では時空という部分から牢獄を壊そうとしているのではないでしょうか。カイはそれを行う彼の分身だったのです。
 そして盗賊だったと思われる仮面ライダー邪王を使って時を破壊させたりして暴れさせていました。これもまた牢獄を破ろうとさせていたのかも知れません。スサノオは電王ではかなり積極的に動いているのではないかと思われます。少なくともカイという存在は非常に目立っていて印象的でした。
 電王は時間という機軸を取り入れています。時を移動して戦うライダー達というのはこれまでなかったことであり非常に斬新でした。そしてそれと共にスサノオもまた時間というものを頭の中に入れてライダー達との戦いを楽しむことを覚えたのでしょう。電王はそうした意味でも新機軸の作品です。
 その電王の主人公は野上良太郎です。バイクに乗らず非常に細く頼りない外見の青年です。これまでの背が高く引き締まったヒーローが多かった中で彼は最初見て大丈夫なのかとさえ思わせるものがありました。ですがこれもまた製作側の視聴者へのトラップでした。
 外見はそうですし戦闘力も低いです。良太郎はおそらく生身では歴代ライダーの中でも最も弱いライダーでしょう。これまでのライダーが生身であってもある程度の戦闘力や体力を持っていたのとは本当に逆です。喧嘩はできないし体力もないです。しかし問題はその心でした。
 良太郎は芯の強い青年でありそれが彼の元来持っている心優しさともあいまって彼を見事な戦士にしました。その為イマジン達も彼を認め進んで共に戦うようになりました。最終回でのモモタロスの言葉にそれが集約されています。彼のそのひたむきさと真剣さ、温かさは戦士として最高の素養でした。その素養があるからこそです。彼は最後まで戦いましたし平成ライダー、ひいては石ノ森章太郎の世界においては珍しい正統派のヒーローでありました。
 ヒーローとは何によってなるものなのか、それは心がまずあってこそなのでしょう。例えば仮面ライダー王蛇こと浅倉威は戦闘力は圧倒的ですが心は野獣です。よって彼はヒーローではないのです。心が人間であるならばそれは人間であるという平成ライダーの定理に添って考えますと彼は野獣であり人間でなくなります。逆に良太郎は頼りなくともその心故に人間でありヒーローなのです。彼は一見するとヒーローなのかとさえ思わせるものがありますがその心からヒーローになりました。そしてそれはもう一人の仮面ライダーであるか面ライダーセロノスこと桜井侑斗にも言えます。
 彼の立場は非常に複雑でして良太郎の姉である野上愛理の恋人でありますがその若い頃にあたります。桜井は失踪しており時の番人になっていますが彼はその桜井であって桜井でないのです。電王の設定はここが難しいのですが彼はそのうえ限られた回数しかライダーになれなかったりそれが克服されてからも変身する度に自分のことが人の記憶から忘れられていく。力を手に入れた際の代償を背負うことになっているのです。
 しかし彼はそれでも変身し続けました。親しい、愛している人から忘れられていこうともそれでもその人の為に、そして世界の人達の時間を守る為に戦うことを選んでいたのです。最初は良太郎に対してもかなり素直でなかったですがやがてお互いを知り認め合う関係になりました。そのうえで二人並んで同時に変身をするのですが平成ライダーにおいて数多い同時変身の場面でも非常に印象的な場面でした。
 桜井は良太郎だけでなくデネブというパートナーがいました。僕は実は電王ではデネブが一番好きだったりします。何かお母さんの様な世話焼きであり桜井のことを本当にいつも気にかけています。そのうえで彼を励まし助けています。彼を大事に思っています。その為に身体を張ったり小言を言ったりもします。桜井も一見するとそんなデネブを疎ましく扱っていますが実は非常に強い絆で結ばれていました。デネブは桜井にとって親友でありパートナーです。何かと笑える場面も多いキャラですが実に温かいキャラです。あの温かさが忘れられません。
 デネブのことを話させてもらいましたがそのままイマジン達の話をさせてもらいたいと思います。良太郎と行動を共にするそのイマジン達についてです。 
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