FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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信頼
前書き
最近文章の構成が出来なくなってきた。え?元々だろって?それは言っちゃいけませんよ~(笑)
なんか構想は練ってあるのに言葉に出来ないですね、徐々に進まなくなっていくのを感じている今日この頃。
「あぁ~」
ゲーム開始と同時に変声されたという声を確認するために声を出してみる。確かに、普段の自分の声とは大きく違って聞こえる。これならプレイヤーが耳で聞いて仲間を探し当てるのは難しそうだな。
「よし」
開幕早々に声の確認をし終えた俺は誘導するべき人物の方に視線を向ける。中央の最も大きなステージにいる少女の耳につけられていたヘッドフォンはゲーム開始と同時に消えたようで、すでにそこにはなくなっていた。
「ウェンディ!!」
アイマスクで視界を遮られている彼女には声しか届けることが出来ない。他の三人はいまだに自分たちの声の確認を行っている最中だったため、先手を取ろうと大声で名前を呼ぶ。
「え?だ・・・誰ですか?」
ただし、声は変声の魔法で変えられているため、ウェンディにはこの声の主が俺だと言うことが伝えられない。だから、ここからは俺がシリルだということを伝えていかなければならない。
「オレオレ!!シリルだよ!!」
まずは自分で名乗りを上げてみる。これだけで信用するのは無理な話だけど、自分が誰なのか言わないと信用なんか得ることは出来ないんだからこの選択で間違いない・・・はず。
「え?シリル!?」
だが、俺の名前を聞いた瞬間ウェンディの表情がパッと明るくなったように見えた。それを見た時、わずかながらに不安な気持ちになってきた。
(この子は人を疑うということをしないのだろうか?)
声が変声されているのだから、誰でもどんな人物にでもなりきることができる。本来なら誰が名乗りをあげようとも疑ってかかるものだが、ウェンディはよほどテンパっているのか、シリルと名前を聞いてそれが俺だと思い込んでいるらしい。
(最初に名乗っておいてよかった・・・)
だけど、今回だけはこれでよかったかもしれない。もしリオンさんたちが俺になりきって声をかけ、それを彼女が信じてしまったら問題だけど、今回は俺本人なのだから大丈夫なはず。後でもっと指導するとして、今はこのまま彼女をこっちに引っ張る!!
「うん!!そうだよ!!だからこっち――――」
一気に勝負を決めようと少女を呼ぼうとした。だが・・・
「待て」
その声を遮るように違う場所から声が入ってくる。
「ウェンディ、そっちは違うぞ」
その声の主はリオンさんだった。例によって声は変声の魔法で違うものになっているから、ウェンディはそれが誰のものなのかわからずそちらに顔を向ける。
「えっと・・・あなたは誰ですか?」
首を傾げながら俺の時と同じような質問をぶつける天竜。でも、今の口調は明らかに俺のものじゃなかった。それならすぐに別のチームだとバレる気がするんだけど・・・
「レオンだよ、わかんない?」
なんとリオンさんはレオンになりきってウェンディを騙そうとしているらしい。そこで気付いたけど、ウェンディは誰が正解なのかわかんないようになっているんだ。だからリオンさんは自分が口調とかを詳しくわかっているレオンに成り済まそうと考えたってことか。
「違うよウェンディ!!それはリオンさんだ!!」
咄嗟に出た言葉がそれだった。正解を言っているのだけど、ウェンディには見えてないんだからこんなやり取りはただの時間の無駄だったのではないだろうかと思ってしまう。
「何を言うんだカグラさん、変なことを言ってウェンディを惑わせないでくれ」
だが、なぜかリオンさんは俺が無意味だと考えたことを続けてくる。なんでだ?ウェンディを自分の元に呼んでミスジャンプをさせないといけないんだから、こんなことをしている必要はないんじゃ・・・
「あ!!」
彼の狙いがわからなかったが、少し考えると何となくではあるが推測することができた。
彼の狙いはたぶん・・・ウェンディが飛ぶまでの時間をできるだけかけさせることだ。ミスジャンプをさせられればそれが一番だけど、こうやって無駄に時間を消費させて、相手側のプレイヤーが飛ぶまで時間を稼ぐだけでも十分に仕事を果たしたと言えるだろう。
(そうはさせるか!!)
相手が時間をかけてくるのはなんとしても阻止しなければならない。運良く彼はまだウェンディに自分がレオンである証明をしていないのだから、先にこっちがウェンディの信用を確実に得られることを言えばこの勝負・・・勝てる!!
「とは言ったものの・・・」
一体何を話せば良いのだろうか?皆が知っていることだと言っても意味ないし、かといって二人だけの秘密を暴露するのは気が引ける。俺とウェンディしか知らなくて、周りに知られてもいいことというと・・・
「あの~・・・」
「待ってね、今考えてるから待ってね」
なかなか俺もリオンさんも話を始めないので、ウェンディが恐る恐る声をかけてくるが、今は思考させてほしいと少しばかり時間をもらう。
でも・・・何を話せばいいのかさっぱりわからない。俺とウェンディが化猫の宿にいた頃の話とか?でも小さい頃の話だと記憶があやふやだし、もし間違えようものなら今後の俺とウェンディとの関係にヒビが入りかねないぞ?
「オオーン!!」
切り込んでいく話が決まらずにいると、突然俺の左側にいるトビーさんが遠吠えをあげる。
「俺がシリルだよ!!」
「キレんなよ・・・あ!!」
その瞬間、この対決を見ている全ての人が唖然としているのが感じ取れた。声は元々ゲームの進行の邪魔にならないように遮られているが、たぶん皆さんこの間抜けな二人には言葉を失っているだろう。
俺とリオンさんがウェンディに信じてもらうために記憶を掘り起こしている間が嫌だったトビーさんが、いつものようにキレながら俺のフリをしたんだけど、ユウカさんがそれに癖で突っ込んでしまい、彼らの正体がウェンディに判明してしまったのだ。
これには味方のリオンさんはもちろん、敵である俺も頭を抱えるしかない。しかもトビーさんはいまだにウェンディを騙せると思っているのか、なんか色々と言ってるし。
「なんかダサいな・・・」
バレるにしてももう少し何かなかったのであろうか?さすがに無様過ぎて、開いた口が塞がらない。
(いや、待てよ?)
だが、これは俺たちに取って大チャンス到来だ。1/4で正解だったはずの確率が、二人のミスによって1/2にまで上がったんだ。単純に考えれば半分の確率でウェンディは正解である俺の方に飛ぶことができる。それもこれだけ早い段階で選べたのだから、かなり優勢にことは進んでいるはずだ。
(つまりこれは・・・)
残る最後の障害へと視線を向ける。相手も同様にこちらを睨み付けており、一瞬火花が散ったかのような感覚に陥った。
(俺とリオンさんとの一騎討ちか)
頭脳においていえば間違いなく相手チームでもっとも警戒が必要な人物であるリオンさん。その彼を相手に駆け引きをしなければならないとは・・・
「燃えるじゃん」
頭を使うのは決して得意とは言えない。だけど、強敵相手に気持ちが高ぶるのだけは変わらないこと。必ず彼の作戦を看破して、ウェンディを正解に導いてみせる!!
第三者side
シリルとリオンの頭脳戦が繰り広げられようとした頃、別ステージではミリアーナをプレイヤーとしたクォータージャンプが展開されていた。
「ミリアーナ、聞こえるか?」
開始早々、真っ先に口を開いたのはプレイヤーである彼女と同チームである人魚。彼女は変声された声がどのようなものなのかの確認よりもさきに、目の前の女性に声をかけることを選択した。
「ミャア?誰?」
「私だ、カグラだ」
声が聞いたことないものになっているため、誰かわからなかったミリアーナは問いかけると、カグラは間髪おかずに回答する。
「え?ホントにカグラちゃん?」
自分のよく知っている人物が名乗りを挙げたため、疑いながら正体を見極めていこうとするミリアーナ。彼女は初戦で誤回答に投票してしまったため、より慎重に進めていこうという意志が見てとれた。
「ミリアーナ、こっちだ」
そんな彼女に、背後から別の声が呼び掛ける。その呼び方に覚えのあった彼女は、驚きながらそちらに振り返った。
「え・・・カグラ・・・ちゃん?」
彼女は後ろから声をかけたのがカグラだと思い振り向いた。しかし、実際にはそれはカグラではない。なぜなら最初に呼んだのが、本物のカグラなのだから。
「そうだ、私が本物だ」
キリッとした話し方でカグラのフリをしているのは、彼女と同ギルドに所属しているセクハラ少女。少女は日頃からカグラと共にいる時間が多いため、ある程度相手のマネができる。実は普段からカグラのマネと称して遊んでいるのだが、本人に見られると痛い目を見なければならなくなるので、隠れておふざけ程度に行っていたりする。
「ミャア!?カグラちゃんが二人!?」
前後を自称カグラに挟まれてしまったミリアーナはあたふたと前後を順番に顔を動かしている。目隠しをしているので姿を確認することは出来ないが、こうなってしまうのが普通の反応なのだ。
「待て!!ミリアーナ、そいつらは違う!!」
どちらが本物のカグラなのかわからず困っていた猫耳娘の耳に、さらに別の声が聞こえてくる。
「もしかして・・・リオン?」
しゃべり方の雰囲気であるが、彼女はその人物を予測して尋ねてみることにした。
「そうだ。カグラは別フィールドで陽動役をやっている」
この嘘八百でリオンに成りきっているのはもちろん彼の従弟。元々二人は話し方にそこまでの差があるわけではないので、相手が視界を奪われているこの状態においては、成り済ますことは容易なことだ。
「ミリアーナ、こっちだ」
新たな候補の登場でさらに困惑していると、別の方向から次の候補が声を発する。
「ミャア!?そっちは・・・誰?」
思わずズッコケそうになったカグラたちだったが、不用意に音を立てると敵だと勘違いされてしまう可能性もなくはないので、なんとか踏みとどまり最後の声の方を向く。
「何を言ってるんだ。私だ、カグラだ」
シェリアが選択したのは彼女に最も近い人物。本物が目の前にいるのに成りきるのはいささかリスクがあるが、惑わす上では一番いい人物だと思った彼女は、多少のリスクには目を瞑り、わかっていないところも多々ある女性のフリをすることに決めたのだった。
「ミャア!!カグラちゃんが三人!?」
(信じるのかぁ!?)
最初の話し方では全く気付いていなかったのに、名前を名乗られた途端に信じてしまった彼女を見て、驚きが止められないレオンは懸命に笑いを堪えていた。ここで吹き出してしまうと、自分たちの作戦がうまくいっていることを悟られ、そこから偽物と判別されるのは避けたいと考えたからだ。
「ど・・・どこに飛べばいいの!?」
完全にパニック状態のミリアーナはステージ上であたふたと動き回っており、真っ直ぐに道を進んでいくためにセッティングされた点字から外れそうになっていた。
「ミr「ミリアーナ!!点字から離れるな!!」
迂闊に動いてステージ上から落ちてしまうのは一番最悪の展開。彼女をその事態から逃れさせようとし、大声を張り上げたカグラだったが、それに被せるようにソフィアが全く同じことを叫んだ。
(やられた)
ギリッと奥歯を噛み締め、正面の離れ島にいる銀髪の少女を見る黒髪の女性。彼女の声かけのおかげでミリアーナはその場に留まることができた。しかし、敵ならば混乱している彼女を助けることは、普通に考えてありえない行動だ。そのため、もしかしたらソフィアの声を本物と判断し、ミスジャンプをしてしまう可能性があるとカグラは考えたのだ。
「えっと・・・」
だが、肝心のミリアーナには誰の声なのか正確に聞き取れていなかった。軽いパニック状態に陥っていた彼女には、どこから声が飛んできたのかを気にしている余裕などなかったからだ。
(むぅ~、おしかったなぁ)
カグラの声にうまく被せることができたソフィアは、自分の思惑通りにことが進められなかったことに悔しそうにしている。いいタイミングで声を発することができただけに、ここで自分が味方だと勘違いさせて、そのままウェンディ優勢にゲームを進めたいと思っていたのに、完全に失敗してしまったから悔しさがいつもよりも大きく膨れ上がっていた。
(でも、たいぶ困惑させることはできたかな?)
その中で、一瞬だけ少女は不敵な笑みを浮かべる。チラッと横目で隣のフィールドにいる少女と男の娘たちの方を見てみると、すでに候補が絞れているように見てとれた。
自チームのプレイヤーたちの進行度を確認した彼女は、他の二人の仲間にアイコンタクトを取る。視線を送られた二人の蛇姫は、彼女が言いたいことを感じ取ったらしく、相手にわかるようにうなずいてみせた。
(ウェンディは必ずシリルを見分けられる)
(シリルがウェンディを絶対に導いてくれる!!)
(だからソフィアたちのすることは、それまでの時間を稼ぐこと)
打ち合わせをする時間など一切なかった。だが、三人は全員揃って全く同じことを考えていた。二人だったら必ず引かれ合う、絶対に正解を選ぶことができると、信じていた。
(早く決めろよ、シリル)
(落ち着いてね、ウェンディ)
レオンとシェリアはそれぞれのもっとも親しい友に向け、心の中でエールを送る。徐々に動いていく互いの策を前に、どちらが勝利を掴むのか、それはまだ、誰にもわからない。
後書き
いかがだったでしょうか?
一話で終わらせる予定がまさかの二話目に突入です。
まぁウェンディがプレイヤーだからそれでもいいのかな?なんて思っているところです。
次で勝者が決まるはずです・・・たぶん・・・きっと・・・
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