| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

IS―インフィニット・ストラトス 最強に魅せられた少女

作者:伊10
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第11話 私、謎の敵と交戦します。

 
前書き
ゴーレム戦にどう絡ませるか悩んだ結果、二機出すことにしました。 

 
熱戦に沸くアリーナに、唐突に鳴り響く警報。それとほぼ同時に、私は玉鋼を緊急展開した。周囲の驚きと疑問の目は、直後パニックを起こしたそれに変わる。

上空から接近して来たISは、客席を保護するための遮断フィールドを熱線で貫通。そのまま戦闘中だった織斑と鈴の真ん中に突っ込んだ。さらにもう一機、天から舞い降りてくる。

が、ただ黙って見てるつもりはない。弓張月を展開し、射撃。当然の如くかわされたが、こっちを向けばそれで十分だ。

その機体を、一言で表すならば“異形”だろうか。2m半にもなる巨大なそのISは、珍しい全身装甲(フルスキン)タイプで、漆黒の巨躯の至るところにスラスターが装備されている。なお目を引くのはその腕で、明らかに爪先までより長い。先程の熱線は、掌にある砲口から放ったようだ。

そして………一切の人間味がない。いかにISと言えども、それを動かすのは人間だ。どうしたって動作の一つ一つには人間らしさが出るものだけど………。

ま、戦ってみれば分かるかな?

『神宮寺さん!聞こえますか!?』

「山田先生?はい、聞こえてます。」

『すぐにそこから退避してください!良いですか?間違っても戦っちゃ駄目ですよ!』

「…………ゴメン先生。もう遅い。」

『へ?あ、ちょっ!?』

回線を切る。どのみち今からでは逃げられないし、逃げたらまだ避難中の他の生徒がどうなるか分からない。……うん、誤魔化すのは止めよう。だって戦ってみたいんだもん!

弓張月を左の脇に挟むように保持して、右手には血染紅葉を展開する。向こうもヤル気満々のようだ。両の掌をこちらに向け、エネルギーをチャージしている。

避けるのは簡単だが、そうもいかない。ここで避けると退避中の他の生徒が巻き添えを食らう。代わりに水鏡の斥力バリアを正面に最大出力で展開する。放たれた熱線を阻み、明後日の方向に弾き飛ばす。射線上に人がいないのを確認して弓張月を発射。難なくかわされるが想定内。距離を詰めて血染紅葉を振るう。が、敵はスラスターを全開にして一気に離脱。弓張月に増設した同軸機銃で追撃するが人間離れした機動でそれをかわしていく。そして、その場で回転したかと思うと、回りながらビームを乱射してきた。

「っ……生意気なぁ!」

当たりそうな物をバリアを纏わせた血染紅葉で切り捨てつつ、瞬時加速で一気に距離を零にする。離脱できないと悟った敵は両手のビーム砲口からエネルギーブレードを形成し迎撃してきた。

機体そのものの馬力では敵わないので、格闘も交えた手数重視の連撃で勝負を掛ける。斬る、蹴る、殴る、蹴る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬る…………。

………何となく、確証も何も無いけれど、変な違和感がある。まず動きに一切のクセがない。画一的で、規格的で、教科書みたいな動きだ。それに、こちらの動きに対して対応に、全く変化が見られない。こちらがAという行動をしたらB、CをしたらDと、予め決められていた様な動きだ。

そんな相手の先を読むのは簡単だ、少しフェイントを交えれば、面白いぐらいあっさり引っ掛かる。まるで、人ではなくロボット、AIか何かを相手にしているみたいだ。…………いや、まさかね。

そんな事をうすらぼんやり考えながらチラとアリーナの戦闘に意識を向ける。織斑が前衛、鈴が後衛で戦っている様だ。けれど、あの無数のスラスターによる瞬時の離脱と、回転しながらの熱線乱射に手こずっている。まあ、私も玉鋼じゃなかったらあの中に突っ込むのは御免だしね。

と、敵が動きを変えた。このままじゃじり貧だと分かったのだろう。ダメージ覚悟で血染紅葉を掌で受け止める。刀身が装甲に食い込み、左の砲口はもう使い物にならなくなった。けど、血染紅葉を掴まれた。馬力差は明確なのでこのまま手離すしかない。

私が一人ならね?

突然、後ろから飛来する蒼い閃光。意思を持って突き進むそれは、寸分狂わず敵の肘を捉えた。緩んだ一瞬の隙を逃さず血染紅葉を引き戻し、バリアを纏わせて全力の斬り上げ。狙いは損傷した肘。そして、敵の左腕が宙を舞った。

その光景を見て、予想とも言えない当て推量が、実は的中だったことを理解する。切断面に見えるのは機械パーツのみで、そこに人体の要素の欠片も見られない。

そう、こいつは『無人機』だ。

展開しっぱなしだった弓張月の砲口に、バリアを槍状に纏わせて突き刺す、胸の中央を貫いた所で散弾を発砲。敵は一瞬ビクンッと震えたあと、力無く崩れ落ちた。

コアは避けたので無傷だ。念のため抜き取ってから後ろを振り返る。

「ナイス、セシリア。」

そこには、やはりと言うべきか、長大な高性能レーザーライフル、スターライトmk―Ⅲを構えたIS、ブルーティアーズ。それを纏うイギリス代表候補生、セシリア・オルコットの姿があった。

「当然ですわ。友の危機に駆けつけずして、何が貴族、何が代表候補生でしょうか?」

ニッ、と笑うセシリア。一月前、入学初日の私が今の光景を見たらどう思うだろう。

と、そんな暢気にしてる場合じゃなかった。

織斑と鈴に再び注意を注ぐ。既に二人ともエネルギーが底を尽きかけている様だ。何やら織斑が鈴に話している。そこに割り込む様に通信を入れた。

「こっちは片付いたわ。何とかなりそう?」

『………難しいわね。あんたと違って直撃を弾けないからね。』

『多分肉薄することは出来るんだけどな。一回だけだ。』

「そう……因みにソイツ、無人機って気付いてる?」

『そうなの!?てっきり一夏の考え過ぎかと……。』

『やっぱりか………。』

「何の話?」

『いや、そんな予感がしてたんだ。なんか……白式が教えてくれたような………。』

「…………まあ良いわ。織斑、鈴。二秒止めて。こっちで止め差すわ。」

『……出来るのね?』

「こう見えても正直者なのよ。」

話は纏まった。織斑にも何か策があるようだ。さて、こっちも準備しよう。

「セシリア、タイミング合わせて。」

「分かりました。しかし、遮断フィールドは?レベル4になっていると聞きましたが………。」

「へ?そうなの?」

「………通信聞いてないんですの?」

そう言われて思い出す。山田先生に止められて通信を切っていたのだった。まあでも、

「関係ないわ。ぶち抜けば。」

「………全く貴女という人は。」

セシリアは呆れたように呟くと、ライフルを構える。ビットも展開し、斉射の構えだ。よし、こっちも。

「玉鋼、バスターモード移行。射撃シーケンス開始。」

音声入力。ウイングスラスターが機体にドッキングし、PICを全て姿勢制御と機体固定に回す。両足から安定用の支持脚が滑り出し、両肩の秋雨の砲身が延長され、前にせせりだす。

「水鏡展開。仮想砲身形成……完了。」

水色の膜が秋雨の砲口に絡み付き、砲身を更に引き延ばす。これは斥力バリアのエネルギーを利用して、更に荷電粒子を加速させる為だ。

全エネルギーを秋雨に回す。射撃モードは収束、径を絞り、貫通力に特化させる。ハイパーセンサーを狙撃モードに切り換え、視界を狭め、一点をズーム。

砲口から翡翠の燐光が漏れ出る。エネルギーが出口を求め、キイイィィという高周波の共鳴音を響かせる。

「カウント5秒で仕掛けて。いくわよ……5……4……3……2……1……………GO!!」

合図と共に鈴が最大出力で衝撃砲を放つ。その射線上に何故かしゃしゃり出てくる織斑。コイツ本気でバカなのか?

当然の如く背中に直撃して、叩き落とされ…………て、ない!?いや、そうか!衝撃砲を取り込んだのか!!

ISのスラスターが垂れ流す余剰エネルギーを再度取り込み、自身の推進力に転換する。瞬時加速の大雑把な理屈だ。その取り込むエネルギーは、別に自分のモノである必要はない。そして、瞬時加速の速度は『取り込んだエネルギー量に比例する。』

砲弾の様なスピードで突っ込んだ織斑は、相手に離脱させる隙も与えず、零落白夜で右腕を斬り飛ばした。その織斑を、左の砲口が捉える。

「……セシリア!?」

「いつでもどうぞ!」

頼もしい返事を背に受け、臨界寸前の秋雨を解き放った。 
 

 
後書き
…………ゴーレムⅠってこんな弱かったっけ?なんか噛ませ犬感が凄い。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧